第377話 敵陣へ

名前無しの中でも、俺以上に気配を薄くするのが得意な奴はそうそう居ない

それくらい気配を消す事に自信はある


かなり目的地に近付いたし、そろそろ気配を消しておこう


ここに来るまで、誰ともすれ違ったりしていない

って事は、この付近は危険地域として認識されてて一般人は滅多に入ってこないんだな

助けてって叫んでも、聞こえるわけないのか……

アイツらのアジト……なんだろうな

どれだけの人数がいて、どんな凶器を持ってるのか

名前持ちである皆を捕まえる事の出来る力を持ってるから、ほぼ間違いなく相手は名前持ちだ


そして、俺を招いた所で返り討ちに出来るだけの準備がある……


かなりヤバイ奴だと、銃を持ってるかもな

そうじゃなくても、人を殺せる大きさのナイフを持ってる可能性は高い


何とか、南城さんや東雲さんを助けて数的不利を解消したいな……



周囲に人影なし


門番的な人が居るかもって思ったけど、居ないみたいだな



ココに、みんなが……


意を決して建物に入る

廃墟じみた見た目に対して、中はキレイだ

外観はカモフラージュだったのか?

カーテンもあるし、壊れた家具が散乱している事もない


手入れされてるな……




床に気を付けつつ、階段を探す


廊下を進む

左右のドアや部屋から敵が現れるかもしれないから、慎重に……


警戒心を限界まで上げて進むが、一切の奇襲はない


そのまま進み、階段を発見できた


誰も襲ってこない……油断させる罠か?


怖いけど……行くしかない!



階段を静かに1歩づつ1段づつ上り、2階に到着する


ここも人の気配はないな

どうする?

このまま3階へ行くか?

それとも2階を探すか?


今までの経験上、みんなは一番上の階にいる……と思う

だとしたら、この階はスルーして上を目指そう


緊張で高鳴る心臓に不安を感じつつ、階段を上る

3階、4階、5階……とうとう、最上階6階に到着した


ここに、皆がいる……


よし、行くぞ!!


階段から見える範囲に部屋は6つ、全部ドアが無いのは前に誰かが押し入ったからかな……

バラバラに捕まってたらヤバイけど……そーっと一番近い部屋を覗く


中は無人か

よし、次だ


いないな、次だ……


ここもいない?


もしかして、一番奥の部屋か?


各部屋を確認はしつつ、予想通り誰もいない




そして、最奥の部屋……RPGで言うなら魔王とかがいるラスボスの部屋だ

ゲームならココにセーブポイントがあるんだけどな……


そんなものあるわけないか


さて、侵入するか……


部屋の中に入ると、すぐに皆を発見できた

よかった……無事みたいだ……

妹もいるな

口と目に布巻かれて喋れないし、見えないようにされてるな


そーっと、壁際を歩いて皆の所へ回り込むか


どういう訳か、電話してきた奴が1人しかいないけど……チャンスだ


今なら南城さんを助けて

南城さんにアイツを抑えておいてもらってる間に、他の皆を助けられる!




気付かれないように進み、後5mくらいまで接近した瞬間


背後から強い衝撃が俺を襲った⁉


強い痛みを後頭部に感じ、手で押さえるとメチャっと濡れた感触がある


もしかして……掌を確認すると、真っ赤に染まっていた!!


血っ⁉

殴られた衝撃で切れたのか⁉

ドクンッドクンッと血が流れ出てる……



痛みに耐えながら後ろを確認すると、角材を持った名前無しの男が立っていた


いつから俺の後ろにいた?

どうして、こいつに気付けなかった?



??「なんだよ、名前無しmobかよ。つまんねぇな。どっから迷い込んだんだ?」

こいつ、俺がさっきの電話の相手だと分かってないな……


角材男「ボス、コイツが“彼”じゃないっすか?」

こいつ……勘づいてるのか?


ボス「あぁ?コイツが?」

ヤバイ……

バレたら、状況が更に悪くなる


角材男「うっす。試しにそこのアマで確かめてみないっすか?」

マズイな……どっちに転んでも、俺は死にそうだ


ボス「メンドーだ。もっと痛めつけろ」

なんで⁉


角材男「なるほど!さすがボスっす!瀕死のコイツを見てどんな反応するか見るんすね!」

ひ、瀕死⁉


ボス「ああ、そうだ。ヤレ」

クソッ


角材男「うっす!」

振り上げられた角材が背中に振り下ろされる

ガツン!!

痛みが強すぎて患部が焼かれるように熱くなる


俺「ぐぅあっ」

い、息が……


それから、数度角材が振り下ろされて……肩も足も腕も体中全てが痛い



う、動けない……

痛み以外の感覚がない……





意識も段々遠くなってきた……



ボス「よし、それじゃ確認するか」


多分、ボスが誰かの目隠しの布を外すんだろうな

止めてくれ……こんな姿を、皆に見られたくない……


カッコ悪過ぎだろ

単身乗り込んで、何もできずあっさりやられるなんて……





何より、皆が

俺がこんなになったなんて思われたくないのにっ……

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