第344話 本を取って

部員さんが本棚から本を出そうとした、その時


部員「あっ!」

栞かなんかが引っかかって数冊の本が一気に落下しそうになる


俺「危なっ!」

慌てて本棚に駆け寄り本を押さえる


部員「あ、ありがと」

どういたしまして


俺「落ちなくてよかったね」

部員さんから、一旦離れる


部員「うん。あ、ついでにあの本自分で取ってくれる?」

届かないなら、最初からそう言えばいいのに……


俺「えーっと、コレかな」

本棚から1冊抜き出す


部員「ううん、それじゃなくてその隣」

隣?


俺「こっちか」

巻数が書いてないから見分けがつかないな


部員「そっちじゃなくて反対だよ」

え?こっちでもないの?

部員さんに言われるがまま、本を取る


俺「コレで合ってる?」

よね?


部員「うん、合ってるよ」

俺を見上げる部員さんと視線が合う

なんか、近いな……


俺「そ、それじゃ早速読もうかな」

いそいそとイスに戻って、着席する

部員さんもいつもの席である、俺の正面へ座る


表紙を捲って……なんか、視線を感じるな

チラっと前を確認すると、部員さんが俺をじーっと見てる?

気になるな……


俺「えっと、何?」

まだ、何かある?


部員「ううん。ただ、勝負に勝ったのに何もご褒美が無いのかなぁって」

まぁ、負けは負けだけど……

なんか不戦敗って感じがして、あんまり納得いってないんだよなぁ


俺「ご褒美って?」

無茶な要求は、当然断るけど


部員「う~ん……、私が決めていいの?」

決めてもいいけど


俺「無茶な事言わないならね」

ジュースを奢れとか、その程度なら買ってくるよ


部員「じゃあ……その……、頭撫でて、ほしいな」

ん~……?


俺「そんな事?」

それならお金もかからないし、簡単でいいけど


部員「あ、ごめん。やっぱ、気持ち悪いかな……」

いや、全然そんな事ないけど……いいの?


俺「いや、撫でるのは構わないけど」

なんで頭を撫でてほしいなんて言うんだか、全く分からないな


とりあえず、勝者が望んだご褒美だし……

立ちあがって部員さんの隣に行き、座った状態の部員さんの頭を撫でる

撫で撫で、よしよし、撫で撫で、よしよし

ってこんな事でいいのか?


部員「ん~~~……」

良いみたいだな

なんか、猫や犬でも撫でてる気分だな


てか、いつまで撫でてればいいんだ?

終わりのタイミングが分かんねぇ……


とりあえず部員さんが満足するまで、続けるか?


撫で撫で、よしよし、撫で撫で、よしよし


部員「…………っ」

段々力な抜けたように机に突っ伏していくな……

俺に撫でられて、リラックスできるのか?


撫で撫で、よしよし、撫で撫で、よしよし


部員「…………も、もう良いかな!」

限界までリラックスしたのか、ビクッと起き上がる


俺「そっか」

やっと満足してくれたみたいだな


さて、それじゃ続き読もうかな

席に戻って本を手に取る


読む前に、部員さんにこれの続きがどれか確認しておこうかな


俺「あのさ……って大丈夫?」

なんかぐったりしてるけど……


部員「う、うん……だいじょーぶ」

大丈夫そうに見えないんだけど?


俺「具合悪いの?」

保健室行く?


部員「ううん、ちょっと幸せすぎて……昇天し逝きそうになっただけ」

ちょっと幸せすぎって何?どっち?

それに、行きそうって何処に?


俺「そっか……」

部員さんって何言ってんのか、たまに分かんないんだよなぁ


部員「それで、何か用があったんでしょ?」

あ、そうそう


俺「これの次の巻はどれ?」

先に聞いておけば、その都度聞かなくてすむからね


部員「あ~、それの続きはさっき間違えて取ったやつだよ。最初の方ね」

あ~、あれか


俺「了解」

それじゃ読むかな

部員さんは、まだぐったりしたままだけど

まぁ、本格的に具合が悪くなったら保健室に運べばいいか



とりあえずは、部員さんを気にしながらも読もう!

続きが気になって気になって……待ちきれない


昼休みに読めなった分、しっかり読みたいし!

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る