第221話 司会者!?

隣にいる東雲さんを見ると、凄く険しい表情でステージを見ていた


俺「東雲さん?」

どうしたんだろ


東雲「何かしら?」


俺「そんな表情かおしてどうしたの?」


東雲「え?」

もしかして、気付いてなかったの?

自分が今どんな顔してるのか


俺「凄く怖い顔してたよ?」

まるで憎い相手がステージの上にいるみたいな……


東雲「あら、そうだったかしら?そんな事ないわよ?」

誤魔化すってことは聞かれたくないこと、なのかな?


俺「そう?なら俺の気のせいかな」

無理に聞く必要もないか


東雲「そんな事より、彼女達見てないでいいの?」

ん?

ステージの上にはいつの間にか参加者が全員並んでいた


俺「出てきてたんだ」


東雲「それと、私に話しかけないで」

そんな気に障ることだったのか


東雲「彼女達が私のこと睨むのよ……怖いわ」

俺が南城さん達を見ると、いつも通り笑顔を浮かべていた


東雲さん……嘘吐いてでも、俺とは二度と話したくないのか


俺「ごめん。もう話しかけない」


東雲「え⁉いえ、二度とじゃなくて、今はステージの上に注目してってだけ」

今更そんなフォローされても……


俺「その、東雲さんを不快にさせるつもりはなかったんだ。でも、その……ゴメン」


東雲「え?え??」


さて、次はどんな事やるんだろうな

「お待たせしました。セッティングが完了しました」


おお、やっと終わったか

さて、次は何するんだ?


「本コンテストの最後を飾るのは、参加者の方々の愛です!お一人づつ前に出てきていただいて、叫ぶ対象への想いを語っていただき、最後に愛を叫んでいただきます。では、1番の方からお願いします」


呼ばれた1番目の人はステージの中央に立ち、セットされたマイクへ向かって語り出す


「今、私の好きな人は病院にいます……彼はとても重い病気で、多分残りの一生を病院の中で過ごします。でも、私は……諦めたく、ないです……もし、彼自身が諦めてしまっても…それでも、私はずっと一緒に居られる未来を諦めたくないです。だから……私の想いを、届けます。絶対に元気になってほしいから……」

お、重い……!!!!

そんな覚悟で参加してたの!?


「大好きだよーーーーーー!!早く元気になってーーーーーーーーーーーーー!!」

会場が静寂に包まれる

夏のイベント会場で聞くような内容ではない……よな?


「はい。ありがとーございましたぁ。では、次の方お願いしま~す」

司会者ーーー!!

今の聞いておいて、何で投げ遣りな進行できるんだよ!!!


はぁ、最初が一番重いとは思わなかった……

次の人はやりづらいだろうけど、頑張ってほしいな


1番の人と入れ替わり2番の人がマイクの前に立つ


「えっと……私の恋人は、もう……この世にはいません。去年、交通事故で他界しました……。彼が残してくれたのは、楽しい、とっても、楽しい想い出です……。そんな彼へ、今やっと感謝の言葉を送れます」

重いって!!

それ、こんな変なイベントで言うような事じゃないよね!?


「ありがとーーーーーーーーーーーーーーーーーー!!!」

本人はやり切った感あるだろうけどさ!!

会場がお通夜みたいな空気になってるよ!?


「はーい。ではお次の方どうぞー」

司会者ァーーーーーーー!!!!

流れ作業にするなぁーーーーーーーーー!!!!!





ステージ上の参加者

ちょっと軽いノリで来た観客

そして、司会者


全員の温度差がどんどん開いていく


このイベント、今回で終わりで大正解だよ!


何で単純に夏を楽しむ目的で来て、こんな壮絶な話し聞かなきゃならないんだよ……

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