第205話 50m 自由形

目的の25mプールに到着して早々に、スタート位置につく南城さんと堀北さんの二人

軽くストレッチをして、前屈みの姿勢になる


南城「準備はいい?」


堀北「ええ、いつでも」


南城「よーい、ドン!」


南城さんの掛け声と共に二人同時にプールへ飛び込む

少しの間潜水し、先の浮上したのは南城さんだ

南城さんは潜ってる間に反転、上向きになっていた!?

そのまま顔を水面から出して、背泳ぎを始めた!?


対する堀北さんは、キレイな腕の動きでクロールで水を搔く


二人とも速い!!


ぐんぐん速度を上げ、25mをあっという間に泳ぎ切る

ほぼ同時に壁をキックしてターン、折り返して戻ってくる


このまま引き分けかと思ったけど、結果は違った……


途中で堀北さんの方がさらに加速して、引き離していく

その差を南城さんは埋めることが出来ず、堀北さんが先にゴール!!!

南城さんは、ほんの少し遅れてのゴールとなった

その瞬間を目撃していたギャラリー「わぁーーー!!」が歓声を上げる

近場で見ていた俺は驚愕していた


マジかよ……

あの南城さんが負けちゃったよ……


仁科「うわぁ、はっやー……あんなん絶対勝てないよ」

同感だ

まさか、二人ともこんなに泳ぐのが速いとは思わなかったな


二人が一緒にこっちに戻ってくる


南城「あはは、また負けちゃったぁ!」

笑ってはいるけど、やっぱり悔しそうだな


堀北「まさか背泳ぎでくるとは思わなかったわ」

うんうん!

クロールの方が速いよね⁉


南城「だって、背泳ぎの方が速く泳げるんだもん!でも、負けちゃったなぁ……もっと練習すれば勝てるかな?」

確かに僅差だったしな……

南城さん程のスペックがあれば、クロールに背泳ぎで勝てるかもしれないな


堀北「そうね。でも、千秋が練習するなら私も練習するわよ」

白熱するライバル関係!?


仁科「二人とも速いね~」

さっと、熱くなり過ぎないように割って入る仁科さん

ナイス空気読み!


南城「うん!速く泳ぐのって楽しいよ!」

泳げる人間はそうなんだろうなぁ


堀北「千秋に運動で勝てるとしたら、水泳コレくらいだからね。私なりに頑張ってみたのよ」

そうだよなぁ

陸上なら間違いなく南城さんが圧勝しちゃうし、多分だけど水球とかの球技も南城さんの独壇場だろうな

残るは単純な泳ぎの速さだったわけだ


俺「堀北さん、何でそんなに泳ぐの速いの?何か秘密とかある?」

コツなんかがあるなら聞いてみたいな


堀北「そうね。まずは、勉強かしらね」


俺「勉強?」

トレーニングじゃなくて?


堀北「そう。どうすれば速く泳げるか勉強するの。指導書とか参考書的なのを読んで、頭に知識を入れるの」

それで、速く泳げるようになるのか……!?


堀北「次は、実際に体を動かしてみるの。知識通りに動けるように練習すれば、いいだけよ」

それって、かなり難しいんじゃないかな……

思ったように体を動かすなんて、プロのスポーツ選手並みだよな


南城「納得いかなーい!イメージ通りに泳いだのに負けたもん!他にも何かあるでしょ!?」

負けず嫌いだなぁ

まぁ、他の競技では圧倒する程の運動神経の持ち主だしな

水泳だけ負けるのは納得いかないよな


堀北「……ないわよ、何も」

何か今、間があったな


南城「ある!私の勘があるって言ってる!」

なんだそれ……

野生の勘とかの類か?

でも、南城さんの野生の勘って当たりそうだよな


堀北「ないわ!ないのよ……!」

コレは、何かありそうだなぁ……


妹「あっ……」

ん?


俺「どうした?」

何かに気付いたみたいな声出して


妹「ううん、何でもない。気のせいだったみたい」

そうか

びっくりするから、止めてほしいな


南城「妹ちゃん!今何か思いついたよね⁉」

また南城さんの勘野生の勘


妹「なんでもないです。思いついてません」

必死に顔を逸らす妹の両肩を掴んで顔を近づける南城さん


南城「嘘!ねぇ、教えてよ!」

妹の体をガクガクと前後に揺さぶる


妹「やめっ、止めてください!ほんとっ、何でもっ、ないですっ、から!」

必死に抵抗しようとするけど、南城さんに対しては無意味だな


南城「教えてくれるまで止めないからね!ほら!吐けー!」

流石にこのままじゃ妹が可哀そうだ


俺「なn」

妹「分かりましたぁ!言います!言うから!止めて!」

気のせいじゃなかったのか?

それとも、頭揺さぶられて今思い付いたのか?


妹「耳貸してください」

耳打ちで話すのか……


南城「うん?」

妹が口元を手で隠して、南城さんは耳を妹へ向ける


ごにょごにょと妹が少し話す

話し終えて南城さんが妹と距離を取る

そしてやや下を向いて


南城「そっか……なるほどね……」

と呟いた


どうやら妹が言った事で納得したみたいだ


堀北「ねぇ、妹ちゃん。千秋に何て言ったのかしら?」

少し引き攣った笑顔で妹に尋ねる堀北さん


妹「秘密です。春香先輩には絶対に言えません」

そんな秘密にすることなのか……

てことは俺にも教えてはくれないか

まぁ、そんなに興味ないしいいけど


堀北「そう……アナタだって大して変わらないくせに」

ん?

何の話しだ?

身長……は堀北さんの方が大きいよな?


俺「何が」

仁科「えっと!勝負は春香ちゃんの勝ちだったけど、この後どうする?もう一戦する?」

仁科さん……何言ってんだ?

それと俺の声をよく遮るけど、俺って仁科さんに何か悪い事したか?


南城「う~ん……もう一戦かぁ。今日は対策できないし……また今度でいいかな」

そうか、何か対策を取ってリベンジするのか


堀北「そう?私はもう一回くらいならイケるわよ?」

対して堀北さんはやる気満々だな

勝負事とかあんまり興味なさそうなのに


プールサイドでそんな会話してる俺達を、期待の眼差しで見つめるギャラリー

多分南城さん達は気づいてないよなぁ


みんな、もう一回見たいんだよな……南城さんと堀北さんの水泳勝負


確かに見入っちゃうくらいだったしな

でも、今日は見れないみたいだぞ?


俺は今度、また見れる機会がありそうだけどな!

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