第185話 祭りはおしまし

祭りの会場に戻ると、殆どの屋台は売り切れで店仕舞いしていた


なんか、少しお腹空いたから食べたかったのにな……


戻る時、一度連絡は入れておいたから合流は直ぐにできたが

明らかに不満そうな顔をした人が一人いた


俺「ただいま」


妹「おにぃ!」

ギューっと抱き付いてくる妹を受け止める


南城「おかえり!」

堀北「無事で何よりね」


俺「うん。途中で四季島が現れて、手伝ってくれたんだよ。あいつ、メチャクチャ強いんだよ」

マジで助かったよ


南城「へぇ、そうなんだ」

そうそう!


堀北「四季島くんは?」

あ~、えっと……


俺「犯人を連行してったよ」

倉戸さんって人と一緒に


南城「それじゃ、もう大丈夫なんだよね!?」


俺「うん」

いやぁ、よかったよかった


二科「…………」

合流した時からずっと黙りっぱなしで

なんで此処にいるのか分からないんだけど

二科さん、何でそんな不満そうな顔してるの?


俺「ええっと……、二科さん?」

どうしたの?


二科「君にも理由があるのは聞いたよ。でもね、ずっと待ってたんだよ?一人で屋台を切り盛りしながら、君が来るのずーーーっと待ってたんだよ?」

待ってたって言われても……

それに屋台の切り盛りって、出店側だよね?

何でそんな事してんの?


妹「おにぃ、言ってなかったけど……二科先輩ね、屋台で飴細工作ってたんだよ。それを皆で買いに行く約束してたの」

うん、全くの初耳だ


南城「でも、君が中々帰ってこない内に材料無くなっちゃったんだって」

それは、少しもったいないことしたかな


仁科「私だって、ほんとは君とお祭り楽しみたかったのに……」

それは、俺のせい……なのか?


俺「残念、だったね」


仁科「というわけで」

とういうわけで…?


仁科「お祭りは諦めて、プールで想い出作ることに決定しました!」

は……?


仁科「明日は片付けとかあって忙しいから、明後日ね!」

いやいや、ちょっと待って?

何でそうやって俺のいない所で決めちゃうの?

せめて俺のいる時に話し合ってくれない?


妹「おにぃ、ごめんね。……仁科先輩が可哀そうで、止められなかった」

可哀そうって……


仁科「ね⁉いいよね⁉私にも楽しい想い出のチャンスくれるよね⁉」

それが、プールなのは……ちょっと納得いかないかなぁ


俺「プール以外って選択肢はないの?」


仁科「う~ん……私の家で、お菓子作りとか?」

お菓子作りかぁ、まだその方がマシかな……


仁科「因みに、家だとお母さんがいるから色々大変だと思うよ?」

大変って……?


俺「何か大変なの?」


仁科「う~ん……質問攻めとかかな。私が君を好きなのは知ってるから、色々聞かれると思うよ。出会いとか、付き合うのかとか、結婚とか……色々ね」

そ、それはメンド……大変だ


俺「えっと、じゃあプールでいいです……プール行きます」

メンタル的に耐えられないと思う

そんなんお菓子作りどころじゃないだろ……


仁科「うん。そうしよ。私にも質問してくるから、大変なんだよね」

そうか……実の娘すら大変だって思うほどなのか


俺「それじゃ、明後日は……プールかぁ」

水着どうするかなぁ


妹「千秋先輩も春香先輩も、それでいいですか?」

え、あ、そっか……

みんなで行くのか……

まぁ、二人で行くよりはまだマシかな


俺「それはそうと、花火の時間は?」

もうそろそろじゃない?

場所移動しないと、見えないでしょ?


妹「花火?あ……」

あ、って何?


妹「今年は無いみたいよ」

無い……だと⁉


俺「なんで?」


妹「予算がないんじゃないかな……年々お祭りも縮小してるって言うし」

マジかよ……


南城「それじゃ、今日はもうおしまい?」


妹「そうですね」

そうか……祭りに来たはずなのにな……

あんまり楽しめなかったな


妹「それじゃ解散です!」

何故か妹が仕切ってるけど、南城さん達はそれでいいのか?


南城「はーい!また明後日ね!」

何にも思ってなさそう


堀北「水着……水着……」

何かそれどころじゃない人もいるな


仁科「次こそは……!!」

今からそんな気合入れてたら当日まで持たないんじゃないかな


俺「それじゃ、またね……」


各々自宅の方向へ向かって歩いて行く


俺も妹と帰路につく

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