第184話 夏祭りのトラブル・解決

俺たちはやっと大男達のいる部屋の前まで到着した


ドアを開け中に入る

入った瞬間襲われる、ということはなく

名前無しの大男とコンゴウという名前持ち、さっき逃げた5人の男たちが部屋の奥で待ち構えていた

RPGのボス戦かな?


近郷「よう、待ってたぜ」

トランシーバーから聞こえた時より明瞭だが、確かに同一人物だと分かる声で話しかけてくる


四季島「それは悪かったな」

全く悪いと思ってない声だな……


近郷「お前か、下っ端を倒してイキってるガキってのは?」

いや、イキっては無かったような……


四季島「下っ端が弱すぎてイキる事すらできなかったぞ?まさかお前も、下っ端程度の力しかないとか言わないよな?」

挑発するなぁ


近郷「あいつ等が弱いのは仕方ないさ。名前無しだ。俺達名前持ちネームドからしたらザコなのは当たり前の事だ」

まぁ、そうだよね


四季島「そんな事はない。名前無しだから弱いってのは違う。俺は強い名前無しがいることを知っている」

そんな奴いるのか⁉

四季島が強いって評価するような名前無しがいるのか⁉

そいつスゲーな!!


近郷「ハッ!そんな奴いるわけねーだろ?人生負け組確定の名前無しのくせに強い?何のジョークだよ」


四季島「そうか。お前も知らない側なんだな。例え名前が有ろうと無かろうと、人間としての強さは関係ないって事を」

四季島……?


近郷「その名前無しが強いって言うなら証明してみせろよ。そいつを連れてきて、俺と闘わせてくれよ。じゃなきゃ只のガキの戯言だぞ?」

煽り合い、白熱していくなぁ


四季島「連れてくる必要はない」


近郷「あ?」


四季島「ここに居るからな」

えっと……?

先生のこと、だよな?


四季島「この男子生徒Aこそ、俺が認める名前無しだ。コイツは、強いぞ」

はぁぁ~~~~⁉

何言ってんの⁉

俺が強いわけないだろ⁉

コンゴウとかいう名前持ちと闘ったりしたら、間違いなく!100%負ける!

下手したら死んじゃうんだけど⁉


近郷「……は?ハハハハハッ!!傑作のジョークだ!そこの冴えない平々凡々の何の取柄もなさそうな名前無しが強い?お前、さてはバカだろ?」

ほんと、四季島!お前バカだろ⁉


四季島「俺は本気だし、バカなのはお前の方だ」


近郷「は?そこまで言うならやってやるよ。おい、お前!かかって来いよ。俺がザコだって証明してやるからよぉ!」

いやいやいや!

闘わなくても分かる!!

俺に勝ち目なんて無い!!


どうやって逃げるか考えないと……!

四季島め……俺が死んだら化けて出てやるからな……!


逃げる方法を考えていると、四季島が俺にだけ聞こえる声で話しかけてきた

四季島「気配を消せ。あいつには絶対に見つけられない」


俺「いや、バレるって」


四季島「大丈夫だ。ああいう自意識過剰な名前持ちは、自分を中心にしか考えられない。自分の常識に縛られてるんだ。だからこそ、見えない」

それ、見えるって思えば見えるんじゃないの⁉


四季島「いいから、俺を信じろ」

信じろつったってよ……


近郷「んだよ……早く来いよ。じゃねーと遊べねぇじゃねーかよ。お前ら何かの相手してる暇ねーんだよ。可愛い子達が俺を待ってんだよ」


四季島「お前が拉致を指示してたのか?」

え?そうなの?

あの大男の指示じゃないの?


近郷「拉致じゃーよ。ナンパだ、ばーか」

否定しないって事は、この近郷ってやつが諸悪の根源なのか……

そうか

こいつのせいで妹は怖い思いをして


それなりにかなり楽しみにしてたお祭り気分を台無しにしたのか


こいつが……






妹を傷つけたのか


なら、俺が頑張らないとな


四季島は全部知ってて、俺をけしかけたのか?

知ってたなら前もって教えてくれればいいのにな


俺「さて、行くか」


先生「無理しちゃダメよ?」


俺「はい」

すーーーーーーーーーーーーーーーーーー


は~~~~~~~~~~~~~~~~


近郷「お?やる気になったか?いいぜ、来いよ!返り討ちにしてやるよ!」

テンション上がってんなぁ

気配を消す……薄く、薄く……四季島やコンゴウの存在感に隠れるように


先生「それじゃ、私はそこの大男と一戦しようかしら。個人的な怨み、晴らさせてもらうわ」


大男「ッハ、ババァ一人で何ができる」

あ、またババァって言った……


先生「そう、よっぽど死にたいみたいね……少しは手加減してあげようと思ってたけど、やめたわ。全力で行くわ。もう謝っても許してあげないから」

そういえば先生が戦うのって、初めてみるかも


大男「許しを乞うのはババァ、あんたの方だ」


こうして大男と先生の一騎打ちタイマンバトルが始まる

しかし、勝負は一瞬で決着した

大男が殴りかかると、先生は柔道の背負い投げで床に大男を叩きつける

大男が立ち上がる前に腕を掴み、プロレスか何かの技をかける

勢いよく振り解こうと動いた瞬間、パキン!!と何かが折れる音が響く


大男「がぁーーーーーーーーーー!?腕がぁ!腕がぁ⁉」

完全に技がキマッた状態で無理に動いたせいで、腕の骨が折れたんだ……


先生「さて、次は反対の腕も行っとく?バランス大事よね?」

骨折ソレってバランスとること?


大男「や、やめ、わかった、俺が悪かった!だから」

おお、たった一言で大男の戦意を喪失させた


先生「許さないって言ったわよね?」

え……?

まだやるの?


大男「んなぁ⁉」


恐怖した大男は先生から逃げて部屋を出て行く

その光景を見た残りの下っ端もクモの子を散らすように逃げ出す

残ったのは、コンゴウと俺達だけだ

これは好都合だ


倉戸「ちょーっといいかな、近郷君?」

倉戸さん?


近郷「あぁ?……なんでココに⁉」

あ、めっちゃ驚いてる


倉戸「あ~、やっぱり近郷君だ!久しぶり!元気してた?」

予想通り倉戸さんの知り合いだったんだ


近郷「文香さん、何で君がこんな所に……?」

下の名前で呼んでる……


倉戸「そんな事より、近郷君。君、面白い事してるね?この事は教授に報告させてもらうからね。いやぁ、楽しみだな~。最近の教授ってばサンプルが足りない!ってイライラしてたからね~」

なんか怖い話が始まったけど、今のうちにアイツに近付こう

限界まで気配を薄くした今なら、先生にすら見つからないだろうな


近郷「いや、コレは……そう、実験なんだよ!後で必ずレポートを提出するから、それまで教授には言わないでくれないか?」


倉戸「実験ねぇ、面白そうだから……さっきの名前無し君に勝ったら、言わないであげる」

変な条件追加された⁉


近郷「マジかよ。ラッキー!……っておい!?あいつ何処に行った⁉まさか逃げやがったのか⁉」

もう、見失って見つけられないんだな


俺は逃げてないよ

お前の後ろだ

バーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーカ!!


思いっ切り勢いを付けて~~~~



股を蹴り上げる!!!


近郷「ゔっ……⁉あ゛ぁ゛ぁ゛ーーーーーーーーーーーーーーー!?!?」

股間を押さえ、倒れてピクピク痙攣する近郷

大・成・功!!


でも、思いっきり蹴り過ぎた……俺も足超痛い……!!


四季島「うわぁ……」


ケンケンして四季島の方へ戻る


俺「ただいま。やってやったぜ」

満足のいく結果だ


四季島「男として、アレはダメじゃないか?」

確かにそうかもしれない、だが!


俺「二度と使えなくなる方が世の為と思って」

反省はしている、後悔はしていない!


四季島「いや、まぁ、そうかもしれないが」


俺「これで当分の間ナンパなんて出来ないだろうし、いいじゃん」

終わった終わった!


近郷「ま、待てぇ……まだ、俺は負けて、ない!!」

内股で震えながら立ち上がる

えっ?立てるの……⁉


くそっ、警戒されたら奇襲は出来ないのに……

もう一発蹴るには、何か注意をそらさないと


倉戸「近郷君。残念だけど、もう君の負けだよ」

いつの間にかスマホを構えてる倉戸さん


近郷「文香、さん?」


倉戸「今の一部始終、教授に見せたからね」


近郷「そんなっ、約束が違っ」


倉戸「私が約束したのは、あの大男を使って色々やらかしてた事だよ?近郷君が名前無し君に負ける所はまた、別だよ」


近郷「まだだ、そのスマホさえ奪えば」


倉戸「だから、もう手遅れなんだってば。ほらっ」

スマホを操作する


『近郷タケシ君。私だよ』

スマホから聞こえてきたのは、それなりに歳をとった感じのする男性の声だった

もしかして、ビデオ通話?


近郷「教授……?」

この声の人が?


教授『そうだとも。君は前々から何かやってくれると思っていたが、予想以上の事をしてくれたね。詳しく話しを聞きたいから研究室へ来給え。大丈夫、単位ならちゃんとあがるよ。いやぁ、明日から研究が捗るな』

教授の少し楽しそうな声を聞いて、コンゴウは今度こそ膝を着く


倉戸「教授、これから近郷君を連れて向かいますね。それじゃまた後で」


四季島「文香さん、手伝います」

倉戸「うん。ありがと」


四季島に背負われて無抵抗で連れて行かれるコンゴウ

その後を楽しそうに笑ってる付いて行く倉戸さん


先生「いい蹴りだったわ。どう?今度例会に来ない?」


俺「行きませんよ」

争いとか戦いとか勝負とか、そういうの好きじゃないんです!!


先生「そう、残念。それじゃ私たちも戻りましょうか」


俺「はい」


こうして夏祭り中に発生したトラブルは解決した


戻っても、もう殆どお祭りは終わってるだろうな……


でも、最後の花火くらいは一緒に見たいな

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る