第164話 堀北さんと対話

俺「え~っと、何から話そうかなぁ……」

真剣な表情で見つめてくる堀北さんを真横に、動揺してしまう


俺「まず……要望としては、適切な距離を保つようにしてほしいな」

名前持ちの距離感は前々から違和感が強かったんだよな


堀北「距離を保つ?」


俺「具体的に言うと……今現在隣に座ってるけど、何で正面じゃなくてわざわざ隣に座るのかなってことで」


堀北「え?ダメ、なの⁉」

そんな驚く事かな!?


俺「近いと、その、落ち着かないんだよね……」

美少女が真横に居て平然としてられるのは四季島くらいだろうよ!


堀北「そう。わかったわ」

席を隣から正面に移してくれる


俺「後は……」

近付かないで、なんて言ったらどうなるんだろうな……


堀北「何でも言って、直せる所を直すわ」

何でも言っていいものなのかな……?


俺「えーっと、質問してもいい?」


堀北「もちろん。でも、3サイズは内緒よ?」

そんな事聞かないよ!

てか、3サイズなんて聞いてもピンと来ないし


俺「俺の体質って言えばいいのかな……えっと、遺伝的にさ……名前持ちと一緒に居すぎると、大変な事になるんだよね……その事については知ってる?」

前に説明したようなしてないような……


堀北「名前持ちと一緒にいすぎるとって、どういう事?」

あ~、その辺言ってなかったかぁ


俺「えっと、俺の中にはさ。名前持ちの遺伝子が含まれてるんだって」

なんだっけエヌディエヌエーだっけ?


堀北「そうなの⁉」

あれ、これも伝わってない……?

俺が名前持ち化した時に説明聞いてないっけ……?

まぁ、いっか


俺「そうみたい。それで、名前持ち化の薬で名前持ちに変化したんだけど」


堀北「それは聞いたわ。色々な薬があるのねって驚いたわ」

そうだよね

天才ってホント頭良いのになんで、そんな下らない事すんのかね


俺「実は、あの薬が無くても名前持ちになる可能性はあったんだ」


堀北「……え?」


俺「多分前に1度は聞いてるはずなんだけど……」

覚えてないかなぁ


堀北「そう、かしら?ごめんなさい、記憶にないわ」

記憶にない……か


俺「そっか。なら改めて話すよ。南城さんや堀北さんと一緒にいる時間が長くなると、俺は名前持ちに変化するんだ」


堀北「……嘘、じゃないのね?」


俺「うん。だから、距離を取りたいって思う。一切近付かないでって訳じゃないんだけど……ごめん」

暗い表情をした堀北さん

そんな表情にしたのは、俺だ……


堀北「この話しって千秋には」


俺「話すよ。仁科さんにもね」


堀北「そうよね……あの子、大丈夫かしら」


俺「落ち着いて聞いてもらえるように頑張るよ」

話しを聞いて、どう思うかまでは分からないけど……


堀北「そう……。その、体質はどうにもならないのかしら?」

俺も、どうにかできるならしたいけど


俺「今の所、何も手立てはないみたい。四季島のお父さんが調べてくれたけど、まだ何も分かってないみたい」

世界初の症例らしいし

未検証の事が多いみたいだ


堀北「そう……」

何か堀北さんには色々大変な話しをしてるなぁ

申し訳ない……


俺「えっと、俺からの話しはそんなとこかな」

今後のことは、自重してもらえば問題ないからな


堀北「えっと、話してくれてありがとう。ちょっと受け止めきれない部分もあるけど、私にできることは協力するわ」


俺「堀北さん、ありがとう。助かるよ」

よかった……

いつかちゃんと話さないといけないから、ここで話せてよかった


堀北「それはそうと、私からも質問いいかしら?」

ん?


俺「いいけど、何?」


堀北「妹ちゃんの事なんだけど」

あ~、それね!?


俺「ごめん、俺本探さないといけないから」


堀北「ちゃんと答えてくれないと、妹ちゃんに言いつけちゃうわよ?」


俺「な、何を?」


堀北「図書館デートしちゃった……って」

……それはマズい

そんな事言ったら、この場に走って突っ込んでくるぞ⁉


俺「それは、困るな……」

追い出されたら、本借りられないじゃん


堀北「なら、教えて?」

はぁ……


俺「実はさ、妹とは血が繋がってないんだよ」


堀北「えぇっ⁉」

まぁ、驚くよね

俺も心底驚いたもん


俺「で、妹は前から俺に、その……好意を持ってた、みたいで……さ」

あ~気まずい!!

何コレ!?

妹が俺に惚れてたんだ~って何言ってんの俺!?


堀北「そうね、なるほどね……」

なんでそんな簡単に納得してんの⁉


俺「驚かないの……?」


堀北「え?ええ、そうね。血が繋がってないなんて、思わなかったわ」

そ、それはそうだけど……


俺「妹が兄に好意を持つっておかしいよね?」


堀北「そうかしら?たまに聞く話だから、割と普通の事じゃないかしら?」

いやいやいやいや!!!


俺「おかしいって!兄妹だよ?家族だよ!?」


堀北「でも、血は繋がってないんでしょ?」


俺「それは、そうだけど!でも、兄妹として一緒に育ったんだよ?」


堀北「大丈夫よ。幼馴染みだって家族同然に育って、恋してるじゃない?」


俺「いやいや、それは兄妹じゃないし!」


堀北「何か違うかしら……?」

本気で分かってない!?


俺「違うでしょ⁉」


堀北「妹ちゃんは君の事好きなんでしょ?」


俺「そう、だけど」


堀北「なら、恋するのは妹ちゃんの自由よ。それに告白されたなら、真面目に考えてあげないと可哀そうよ。告白ってとても勇気のいることだから……」

真面目にって言っても、俺からしたら妹だし……


堀北「今の君、私たちから告白された時と同じ感じがするわ。名前持ちを無条件に遠ざけようとしてた時みたい」

そ、そんなこと……


俺「そう、なのか……?」


堀北「ま、君が妹ちゃんを好きにならないなら……私としては嬉しいわ。妹ちゃんが恋敵ライバルになったら、手強そうだもの」


俺「もし……妹が妹じゃなかったらか……」


堀北「ふふ、モテモテね」

それ堀北さんが言う!?


俺「はぁ……もう、どうしろってんだよ……」

俺の中で妹は妹で、それ以上でもそれ以下でもないんだよ?


堀北「あら、ふふふ……それじゃ私は帰るわ。またね」

何笑ってんだよー!?

堀北さんを見送ろうと立ち上がると、すぐ後ろに気配が……!?

ゆっくりと振り返ると……何故か妹がいた

手には図鑑を抱えている

調べもので使ったのかなぁ


俺「よ、よう。調べものはもういいのか?」


妹「おにぃ、何で春香先輩と一緒にいたんですか?もしかして隠れてデートですか?」


俺「いや、偶然合ったんだよ……。デートなわけないじゃんか」


妹「そうですか。おにぃ、春香先輩と何してたんですか?」


俺「ちょっとした世間話を」


妹「私には宿題があるって、構ってくれないのに?春香先輩とは楽しくお喋りですか?」


俺「いや、それは」


妹「そんなに妹は邪魔ですか?」


俺「そんな事言ってないだろ?」


妹「おにぃ、私のこと嫌いなの?だから構ってくれないの?」


俺「違うって、嫌いじゃない。ただ宿題が忙しいのは本当なんだよ」


妹「嫌いじゃないなら、私のことどう思ってるの!」

どうって


俺「家族として、大事に思ってるぞ」


妹「好きって、言ってくれないんだ……」

あ~もう!

メンドクサイな!!


俺「好きだぞ、妹として」


妹「本当に?私の事嫌いになってない?」


俺「なってない、だから安心しろ」


妹「うん……。ありがと、おにぃ。良い声が録れたよ」

ん?

今なんて?


俺「とれた?」

妹は胸ポケットからペンを1本取り出してカチッとノックする


「好きだぞ、妹と」

俺の声が再生された……


俺「お前、何でそんなのも」

ペン型レコーダーとか、どこのスパイだよ……


妹「お小遣い溜めて買ったんだよ?凄いでしょ⁉」

凄いけど、ダメだろ


俺「帰ったら母さんに報告な」

流石にアウトだな


妹「ダメ!お母さんには言っちゃダメ!没収されちゃう!」

高かったのか?


俺「二度と隠し録りなんてすんなよ?そしたら、言わないでおいてやる」


妹「う~、分かったよぉ」

さて、どうやってチクろうかな

とりあえず、没収されないようにしつつ

しっかり報告はしておこう


盗撮の次は盗聴か……

妹がどんどん変態になっていくな……

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