第111話 俺の歌を聴け~

歌い終わりマイクのスイッチを切る

ふぅ……何とか歌えたな


前回のカラオケから学んだのだよ

カッコイイ系の歌も幾つか歌えないと大変だという事を!


でも、歌えそうな歌詞を探しても中々見つけられなくて

まだ1曲しかレパートリーがないけどな!


妹「おに、兄さん……」


俺「どうした妹よ」


妹「カッコ悪い」

なんでだよ!!


俺「酷くないか⁉」


南城「う~ん、前歌ってくれた歌の方が良かったかな」

え⁉


堀北「私は…いえ、私もそう思うわ」

なんですと⁉


「なんかイメージと合わなーい」

「もっと楽しそうに歌ってほしいな」

「ノーコメントで」


みんな酷くない⁉

なんでそんな低い評価なの⁉

俺なりに頑張ったんだよ?


南城「あ、そうだ!前に歌ってくれた方もう一回歌ってよ!」


俺「え⁉いやいやいや!!流石にそれはムリだよ⁉」

妹の前であんな歌い方したら……

母さんにチクられるしからかわれるじゃん!!


南城「え~?何で~?いいじゃん!歌ってよ~」


俺「イヤだよ!アレは…そう!南城さん達にしか聴かせたくないんだ!」

ナイス言い訳!


南城「えー」

「歌ってくださーい!」

「聴きたいでーす!」

やかましい!


南城「みんなも聴きたいよね~?」

「はーい!」

「ハーイ!」

「は~い」

妹「兄さん……」

テメーら……


俺「……歌わないよ?」


堀北「多数決って知ってる?」

はいっ⁉

まさか堀北さんまで……⁉


俺「絶対に歌いたくない……」


南城「なんでそんなに嫌なの?」


俺「まず第一にこの場に妹がいる」


妹「私には聴かせたくないんだ……もう、兄さん酷いです」

お前…、そんなキャラじゃねぇだろ⁉

何演じてんだよ!!


堀北「他にも理由があるのね?」


俺「あ、あの時はさ……。南城さん達に嫌われたくて、ドン引きさせようとしてたから」

失敗したけど……


南城「ドン引き?しないよ~!むしろ君の意外な一面が見れて嬉しかったよ!」

なん、だと⁉

じゃあ恥ずかしさを捨てて頑張ったのに……逆効果だったのか⁉


堀北「まぁ、あの時はお互い知らない事も多かったものね」

くっそ……


俺「あの時の羞恥心は何だったんだ……」


南城「ってわけで、歌って!ね!」

いや、何がって訳なの⁉


妹「私がいるせいなら私出て待ってるから」


俺「待てって……あ~もう!わぁったよ!歌えばいいんだろ!」


妹「でも」


俺「絶対に母さんとか父さんに言うなよ?」


妹「うん、言わない」


俺「ならしょうがないから居ていいぞ」

もうこうなったらやけくそだ!


「お兄さん優っしい~!」

「良かったね!」

「ふふ……」


俺「さて……」

まずは俺の好きな曲、心がぴょんぴょんする1曲だ!!














歌い終わり2曲を歌った俺は安心してマイクを置く

さて、次は誰が歌うのかなぁ


南城「やっぱり楽しそうに歌ってる姿、良いね!」


堀北「聴いてる私達も楽しくなってきちゃうわね」

あ~!もう!感想とかいいから!


俺「次は誰が」


「お兄さん!」

「他にも歌ってー!」

「わんもあー」

妹「頑張って兄さん!」


いやいやいや!3曲連続とか流石に嫌だよ⁉


俺「順番!次は別の人にして!」

そんなに連続で歌ったら喉がイカレるってーの!


「じゃあ、我らがホープ!」

「お兄さんに負けないように頑張って!」

「兄妹でデュエットもあり……」


妹「え⁉私!?」


南城「妹ちゃーん、頑張れー」


妹「あ、う~ん……じゃあ、歌います!」

おお、そう言えば妹がどんな歌歌うのか知らないなぁ

これは逆に弱みを握って


妹「じゃ、歌います……『翼をください』」

は?翼をください?

なんでそんな曲のチョイスなの⁉

カラオケに来てまで学校で歌うような歌選ぶの⁉

我が妹ながら謎だ……


しかし、いざ歌い始めると驚くほど音程がしっかりしている

歌い慣れてる、のか?

でも、妹って合唱部とかじゃなかったと思うんだけど……


すーっと歌いきって曲が終わる


南城さんと堀北さんはパチパチパチと拍手するし、友達もハイタッチしてるし

なんだ?どういう事?


「あれ?お兄さんしらないの?」

「え?言ってないの?」

「もしかして秘密だった?」


妹「秘密ってわけじゃないんだけど、言う機会なくて」


俺「どういうことだ?」


妹「実は私達、バンド組んでるんだよ」

バンド?初耳なんだが⁉


「私がギター!」

「ベースが私!」

「ドラムでーす」


妹「私はヴォーカルで、今日はいないけどキーボードの子もいて5人でやってるの」


俺「いつからやってたんだ?」


妹「えっと、半年前くらいから」


俺「全然知らなかった……」


妹「だって、教えてないし。知られないようにしてたから」

隠してたのか……

まぁ家族だって隠し事の1つ2つあるけどさ

これは驚いたな……


妹「本当はね、文化祭の時に言おうと思ってたんだよ」

なるほど

妹の学校の文化祭なら行くだろうし、そこでサプライズ的な演出を計画してたのか


俺「これは母さんにも父さんにも秘密にしておきたいな……文化祭が楽しみだ」

父さんは来れるかわかんないけど

母さんはきっと来るし、驚くだろうな……


妹「うん、楽しみ」


「お兄ちゃんかぁ、いいなぁ」

「私もこんなお兄ちゃんほしい」

「ライバル続出?」


妹「もう!兄さんは私のだからね!誰にもあげないから!」

いやいや

俺は俺だから、お前のじゃないからな?


南城「ふふ、いつか妹ちゃんにお義姉ちゃんって呼ばせてみせるからね!」


堀北「残念だけど、彼は私がもらうわ。例え千秋が相手でも勝ちとるわ」

なんか変にバチバチ火花散らしてるけど……

妹は家族だし

南城さんも堀北さんも選ばない可能性もあるんだからね?


って、きっとそんな可能性なんて微塵も考えてないんだろうなぁ

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