第87話 第一陣の到着!?

クッキーを怒涛の勢いで作り、やっと最後の焼きの工程まできた

よしっ!これで終わりだ!!


後は焼き上がれば皿に盛って完了になるな


既に家庭科室のオーブンはフル稼働状態

これ以上焼き菓子を焼くことはできない

これで一息つける


仁科「そろそろ聞こえてくるよ」

聞こえるって何が……?


時計を見るとちょうど3限目が終わる頃だ

なるほど、チャイムか


キーンコーンカーンコーン

授業の終わりを告げるチャイムが校舎に鳴り響く


すると……

ドッドッドッドッドッと地響きが聞こえ伝わってくる

それは次第に強くなり、こちらへ近付いてきている⁉


仁科「来たよ!試食担当の子達!」

試食担当!?


俺「えっ……⁉」

いったい何人来るんだ⁉


仁科「ドア開けて!!!」

言われるがままに家庭科室のドアを開放する


真っ直ぐ続く廊下の先から群れをなした女子が大挙してくる⁉

こ、怖っ!!!!

すぐにドア付近から離れて家庭科室の奥へ避難する

あ、クッキー!そろそろ焼き上がるはず……

取り出さないといけないけど、さっきの女子が全員押し寄せてきたら……

足が竦む


でも、やるしかない……

覚悟を決めろ!勇気を出すんだ、俺!


オーブンに近付き中の様子を確認する



うん、焼けてるな


中から取り出した鉄板には色とりどりのジャムサンドクッキー

焼けた小麦の香ばしさとバターの香り、様々なジャムの甘い香りが一気に拡散する


自分で言うのも何だけど、かなり良い出来だと思う


俺「仁科さん!焼けたよ!」


仁科「オッケー!コッチももう少しで完成する!」

なんと仁科さんは一人でケーキを複数焼いては飾り付け、カット、お皿に盛ると

一人何役やってるのかわからないレベルで動いていた⁉

たった数時間で机に並びきらないくらいのケーキを仕上げていた……

さすが、お菓子作りの特待生だな

到底真似できない離れ業だ


仁科「よし、コッチも出来たよ」

完成と同時にさっきの女子の集団が家庭科室に雪崩れ込んできた


仁科「は~い!並んで!ちゃんと並んでね~!ケーキは一人1ピースまでね~!席は足んないから立ち食いか、教室に持って帰って食べてね!あ、廊下で食べちゃダメだからね!!」

最高に美味そうなケーキを前に、並べと言われて大人しく並ぶような女子は全然いなかった……

揉みくちゃにされながら集団から抜け出してコッチに来る仁科さん


仁科「もう、何でいう事聞いてくれないの!」

ご立腹のようだ


俺「そりゃ、あんな美味そうなケーキを前に悠長な事してられないんじゃないかな」


仁科「っ!う、美味そうじゃなくて美味しいの!なんせ私の作ったケーキなんだから!」

あ~、はいはい

将来一流のパティシエだもんな


俺が作ったクッキーは別の机に乗っていて、そこには誰も近寄る気配はない

ま、一流か三流以下かって言われれば

一流を選ぶよなぁ


でも、少しだけ寂しいな

折角作ったのに……な


仁科「う~ん……大体25%ってとこかな」

何が25%なんだろ……


仁科「次は何作る?」

つ、次!?


俺「まだ何か作るの⁉」

もう全力出し切ったよ⁉


仁科「まだまだ!お昼休みは今の倍は来るよ」

ば、倍!?

とてもじゃないが、俺にはそんな量作れないぞ⁉


俺「流石に、俺には無理だよ」


仁科「大丈夫!既に冷蔵庫に次弾装填製作済みだよ!」

おお……⁉

いつの間に⁉⁉

さっきまでケーキ仕上げてたのに⁉


俺「そんな時間なんて何処に」


仁科「君より先に来てたからね!ちょちょいと作り置きしておいたよ!」

なるほど

先に作っておいたのか


俺「なら安心して休憩できるな」

さすがに疲れたしな

ゆっくりしたい


仁科「何言ってんの!休んでる暇はないよ!冷蔵庫の容量的に限界あるからね!」

え……限界まで詰めたの⁉

冷蔵庫大丈夫⁉


仁科「あれだけじゃ、お昼休みの分も足りないよ!」

昼、休、み……?


俺「え?昼休みも来るの?」


仁科「寧ろお昼休みが本番ピークだよ!」

なん……だと⁉


俺「もう1時間も無いぞ⁉仁科さんが作ったケーキもう殆ど食べつくされちゃったじゃん⁉」

どうすんだよ⁉


仁科「次は、時間のかからないモノを重点的に作っていくよ!」

時間のかからないモノ!?


俺「それは……?」


仁科「超簡単レアチーズケーキ!風味違いも作っていくよ!」

レアチーズケーキ、だとぉ!?


俺「いくら簡単とは言っても、時間かかりそうなメニューだけど大丈夫なの?」


仁科「問題ないよ!今度は手伝ってね!」

手伝うのか⁉


俺「え?俺が?」

作ったこと無いのに!?


仁科「勿論、助手なんだから!大丈夫、簡単だから!」

簡単って仁科さん基準なんじゃないの⁉

一般的な簡単と離れすぎてない?


仁科「さ、やるよ!時間がもったいないからね!」

促されるままに、俺は仁科さんの手伝いを始める

多分、言われた事をやるだけなんだけど

出来れば、俺に出来るレベルのお手伝いまでにしてほしいな……

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る