第83話 三角のアレ

風呂から出てリビングへ入ると

堀北さんが隅っこで蹲っていた


妹「おにー……」


俺「な、何があった?」

あんなに暗い顔した堀北さんなんて見たことないぞ


妹「えっと、え~っと、説明は出来ないんだけど……すっごくすーーーーーっごく落ち込んでるから声かけないでそっとしておいてあげて」

そんなに落ち込むことがあったのか……

何があったのかすら、聞けそうにないな


俺「お、おう。わかった……それはそうと、脱衣所にあったあの三角の」

アレの正体、思い出せそうで思い出せないんだよなぁ

なんか知ってると思うんだけど……


妹「おにー⁉ソレは聞かないでって言ったでしょ⁉もう!!それに、そんなくだらない質問してる場合じゃないよ?」


俺「なんだよ?」


妹「おにーがお風呂入ったら」


俺「入ったら?」


妹「お母さんが宝探しに行くって階段上がっていったよ」

母さんが、階段を上がって、行った……

そして…宝探し……?

ま、まさか……⁉


俺「母さんは?」

今どこにいる⁉


妹「まだ下りてきてない」

なら、まだ間に合うか⁉


俺「ちょっと部屋行ってくる!!」

母さん!

もし、俺の部屋漁ってたら許さないからな!!


ダッシュで階段を駆け上がり自室のドアを開ける


俺「母さん、そこまでだ!!」


母「あら、もう出てきたの?ゆっくり浸からないと疲れが取れないわよ?」

ベッドに腰かけている母さん

まだ、天井裏には気付かれていないな……


俺「十分ゆっくりしてきたよ。それで、母さんは俺の部屋で何してるのかな?」

事と次第によっては……


母「そんなの……宝探しに決まってるじゃない!」

やっぱりかぁ!!


俺「そんな楽しそうに息子の部屋を漁らないでくれるかな⁉」

プライバシーって言葉知ってるかな⁉


母「いやぁ、だって、ねぇ?ふふ」

何笑ってんだよ……⁉


俺「早く出てってよ」


母「まさか本当に持ってたなんて……あんたも男の子なのねぇ」

……⁉

どういう事だ?

まさか場所がバレて……?

いや…ちょっと待て……

母さんはそう言ったのか……?


俺「母さん……もしかして、全部デタラメ言って」

カマかけたのか……⁉


母「当たり前じゃない。母さんが息子のエロ本に興味持つわけないでしょ?」

……⁉

ということは、俺が過剰に反応したせいで

俺は墓穴を掘ってたってことか⁉


俺「でも、全部デタラメなら」

どうして俺の秘蔵本の系統を知ってるんだ?

そう、あの場で熟女モノとか外人モノとか……俺の趣味に合わないモノを言ってもおかしくはなかったはず


母「ふふ、息子の良き理解者である母は何でもお見通しなのよ?」

どこまで本気の発言なんだ……

良き理解者とか、ふざけたこと言って


俺「それにしても的確過ぎるよ……どうやってソコまで?」

怖いくらい的確に持ってる系統の本を言い当てるなんて……

何をヒントに見当をつけたのか、吐かせないと

今後、怖くて会話もできない


母「にしても、父子おやこって似るものなのね……若い頃のあの人も同じような本持ってたからね……」

親子……って父さんか⁉


俺「親父のそっちの趣味とか俺知りたくなかったんだけど!」

なんか凄く複雑な気分なんだけど⁉


母「ふふ、そう…よね」


俺「で?」


母「何?」

何じゃねーよ


俺「なんで俺の部屋に来てたの?別の目的があったんでしょ?」

息子のエロ本探しがカムフラージュなら、本命はなんだよ?


母「実はね、アンタに教えておこうと思ったことがあるの」

何だよ、改まって


母「でも、やっぱりやめとくわ」

マジで何なんだよ⁉


俺「教えてくんねーの?」


母「ええ」

ほんと何がしたいんだよ……


俺「用がないなら、そろそろ部屋から出てってくれるかな?」

母さんが俺の部屋に居るの落ち着かないんだよな


母「あ、そうだわ!代わりに一つ良い事教えてあげる」

今度はなんだよ⁉


母「アンタ、脱衣所で凄いモノ拾ったでしょ?」

脱衣所で……?


俺「凄いモノ?」


母「あらまぁ、本当に気づいてないのね」

なんか馬鹿にされた?


俺「なんだよ」


母「アンタが拾ったモノの正体、実は凄く凄いモノなのよ?」

語彙力どこ行った⁉

凄く凄いモノって金銀財宝か?

そんなの拾ってないぞ?


母「拾ったでしょ?コレくらいの」

手で三角形を作る


俺「あ、ああ。アレか。何か妹のやつが忘れモノだって取りに来た」

反った三角のクッション!


母「え?あ~……アレ、あの子のじゃないわよ?」

は?妹のじゃないの?

じゃあ何でアイツあんな事言ったんだ?


母「だってあの子には必要ないもの」

必要ない……?

何かに使うモノ、なのか?


俺「母さん、はっきり言ってくれないと分かんないんだけど?」

なんでそんな遠回しな言い方しようとするんだよ


母「口止めされてるのよね~」

もう!何なんだよ⁉

教えてくれるの⁉くれないの⁉

どっちなのかハッキリしてくれよ!


母「でも、アンタの秘密も結果的に暴露しちゃったし」

ほんと余計なことしてくれたよ……!


母「だから、コッソリ教えてあげるわ」

コッソリじゃなくてハッキリ教えてくれよ


母「ヒント1、アレは小さい子の為にあります」

小さい子?

子供ってことか?

うちにそんな小さい子供なんていないぞ?


母「ヒント2、アレをつけると大きくなります」

つけると大きくなる?

マリオのキノコ的な?


母「まだわからない?」


俺「わかんねーよ。てか何でクイズ形式なんだよ……」


母「楽しいかなって思ったのよ」

全然楽しくねーよ


俺「ぶっちゃけ、もう眠いんだけど」

ふわぁ~~~っと欠伸が出る


母「そう、なら答え言っちゃうわね。アレ、胸パットよ。それじゃ、おやすみなさい」

やっと出て行ってくれたか……

にしても、引っ張った割に答えがむねぱっと?って……

ん?

ムネパット……?

胸…パット……?

胸パット⁉⁉

妹が⁉

……いや、母さんは妹のじゃないって言ってたよな⁉

って事は……持ち主は……まさか……




堀北さん……⁉




俺……俺は……


堀北さんのむ、胸パット握ってたのか……

あの感触を無意識に思い出す


アレが堀北さんの胸の所に……

やべぇ……何かやべぇ……興奮する

ダメだ!こんな邪な感情は……

でも、忘れられそうにないっ……!


てか、そもそも堀北さんってパット入れてたのか……⁉

知らなかった……いや知ってたらそれはそれでヤバイけど……!


てことは俺、知っちゃいけない事知っちゃったんじゃね……?



なるほど……

妹のやつが、俺は知らなくていい事って言ってたのは

そういう事だったのか~




ははは、どうしよう……

知っちまったじゃん、俺……

俺が知ったって堀北さんにバレたら、非常にマズイ展開になる気がする


これはいつも通り……


聞かなかったことにしよう!


俺は何も知らない!


何も見なかった!


何も聞かなかった!



さ~て、寝よう!

寝て忘れてしまおう……

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る