第58話 やっと終わる

生チョコにココアパウダーを振りかけてやっと完成させる事が出来たのは

15時を大幅に過ぎた時間だった


今テーブルの上には二人が作った生チョコが半分づつと、紅茶、コーヒー、果実ジュース等各々好みの飲み物が用意してある

因みに俺は砂糖を少し入れた微糖のコーヒー


俺「それじゃ、食べよっか」


南城「うん!」


堀北「いただきます」



パクっと楊枝で刺した生チョコを一つ口へ放り込む

うん、ちゃんと美味いな


南城「お、美味しい!!」


堀北「ええ、美味しいわね」

二人とも初めての作業で疲れてたのかパクパクと次々口へ入れる


俺「よかったね」

一時はどうなるかと思ったけど……

今日も色々あったなぁ


二人とも満足してくれたみたいだし、一応は成功かな?


早々に生チョコは無くなった

飲み物を飲みながら少し駄弁って、お開きになった


玄関にて

俺「今日はそのごめんね、妹のやつが」


堀北「いいえ。それよりも、妹ちゃんと仲良くね?」


南城「大事にしてあげてね?」


俺「あ~、うん。そうするよ」

今までも大事にはしてたつもりなんだけどな

子供の頃、母さんとも約束してるし

『妹を守るのはお兄ちゃんの役だからね』って


南城「それじゃ、また明日ね!」


堀北「また明日」


俺「うん。また明日」

因みに作ってもらった生チョコの半分はお土産として

箱詰めして持ち帰ってもらった

南城さんは俺にくれるって言ったけど、断ったよ

折角自分で初めて作ったんだ

最後まで味わってもらいたい


二人を見送って、キッチンでコップと皿を洗う


すると妹がリビングに入ってきた


妹「おにー……さっきはごめんなさい」


俺「いや、反省してるならいいよ。それより母さんが帰ってくる前にムース食っちゃえよ。見つかったら作れって煩いからさ」


妹「うん、食べる」

冷蔵庫からムースを出してやり、次いでに紅茶も入れてやる


俺「その、最近ちゃんと相手してやれなくてごめんな。俺も一杯一杯だったんだ……」


妹「うん……知ってる……おにーが大変なのは知ってる、けど」


俺「それとコレとは別、だよな」


妹「うん」


俺「悪かったな」


妹「ううん。私もごめんなさい……」


これで仲直りだな……


はぁ~~~~~~~……疲れたぁ……


やっと、これで終わりだな

ほんと、疲れた……


俺「食べ終わったら片付けておいてくれるか?」


妹「わかった」


俺「部屋で少し休んでくる……」


妹「うん」





自室へ行き横になる

あ~、やべ……眠い……

少しくらい、いいよな……



俺はそのまま眠りについた







目を覚ましたら

夜中だった……

え?何で?

てか、夕飯は⁉

腹減ってんだけど……なんか食うもんあるかな?


ひとまずリビングへ行ってみると

ラップのかかった夕飯とメモが置いてあった


起きたら食べなさい

      母より


母さん……ありがとう……


さっそくレンジで温めて~っと


レンジの前で温め終わりを待つ

静かな夜に一人ご飯を温めて食べるって……少し寂しい感じがするな


チン!


よし、温まったな


夕飯をテーブルへ運ぶ為に振り返ると、何故か男の人がいた……⁉

俺「おわっ⁉」

だ、誰⁉


「ただいま」

よく見ると、父さんだ⁉⁉

いつ帰ってきたんだ⁉


俺「お、お帰り……びっくりするから家にいる時は気配消さないでほしいんだけど」


父「ああ、すまない。癖でな」

どんな癖だよ⁉


俺「今日帰ってきてたんだ」


父「ああ、久しぶりにお前たちの顔を見たくてな」


俺「そっか」

父さんは何の仕事か分からないけど、よく出張で家を空ける

こうしてたまに帰ってきては、気配を消して俺たちを驚かす

普段いない事も多いから、気配を消されるとホントに気づけないんだよな


父「最近どうだ?」

どうって言われてもな

南城さんたちの事言った方がいいのか?

でも、無駄に心配かけるのもな……


俺「特になんもないよ」

いつも通り返す

帰ってくると必ずこの質問をしてくる父さん

何か意味でもあるのか、それともないのか

毎回同じ返答なんだから、質問を変えてくれればいいのにな


父「そうか……」

これも毎回同じだ

そうか、その一言で会話は終わる


さ~て飯飯


父「それはそうと」

ん?

珍しく他の話題か


俺「ん~?」

口に食べ物入ってるから、質問なら後にしてほしいんだけど


父「最近……モテてるそうだな」

!?


俺「う゛っ……!!!」

の、喉に詰まった!

慌てて胸を叩き、水を飲む


俺「ふぅ~~~~、いきなり変な事言わないでよ」

びっくりしたなぁ、もう


父「母さんから聞いてな」


俺「母さんか……」

変なこと報告しないでよ……


父「それで、お相手はどんな子なんだ?」

どんなって……


俺「母さんから聞いてないの?」


父「ああ、お前が女子から言い寄られてると聞いただけなんだが」

母さん……!


俺「えっと、どんな……どんな、ね……」

何て説明しようかな

名前持ちの美少女です!ってか?

いやいや、あり得ないな


俺「一人は、兎に角元気な子だよ」

南城さん……前向きで、真っ直ぐだよな


父「一人は、か……モテてるのは本当なんだな」

あ……しまった!

なんで一人は、なんて余計な事言ったんだろ……


俺「えっと、もう一人は……真面目な子かな」

堀北さん……成績優秀で、友達想いだよな


父「そうか。他にもいるのか?」


俺「いないよ」

これ以上いてたまるか!


父「お前はどっちの子が好みなんだ?」

好みって……


俺「どっちとも付き合うつもりはないよ」

名前持ちと付き合うなんてありえねーよ


父「他に好きな子でもいるのか?」

いないよ


俺「いないけど」

だから何?

って話じゃん?


父「そう、か……妹は?」


俺「妹?元気にしてるよ、勉強も頑張ってるし」


父「……そうか」


ったく、自分の娘なんだから

自分で確認すればいいのにな


俺「次はいつ出発なの?」


父「そうだな……明日の早朝には出掛けることになると思う」

明日って……、数時間しか居られないのか


俺「そっか。了解、俺は飯食ってから寝るから」


父「そうか。私は一杯飲むするよ」

一人晩酌を始める父さん


お互い無言で飲み食いする……

気まずくはないけど、親子でこんなに会話がないってのもなぁ……

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