第27話 幽霊でもいいですか?

お茶会から数日が経過したある日


教室へ仁科さんがやってきた


仁科「家庭科部入って!」


俺「お断りします!」


きっぱり断るのに、何で何度も何度も来るのだろうか

いい加減鬱陶しいんですけど!


仁科「そう。また、明日来るね!」


俺「来ないでください!」

あ~、聞いてねぇ……


南城「ほんとに明日も来るかな」


堀北「来るでしょうね」


俺「はぁ~~~~」

ほんと勘弁してくれ

既に二人の名前持ち南城さんと堀北さんと関わってるのに、これ以上の名前持ちと関わり合いたくない!!








そして翌日の放課後、ほんとに来やがった……

二科「家庭科部、入ってよー!」


俺「お断りします!」


二科「なんでー!楽しいよー!」


俺「結構です!」


二科「どうせ、どこの部にも入んないんでしょ!?なら、」


俺「い、今入る部活考えてるので!」

口から出任せだけど、これで諦めてくれないかな


二科「家庭科部入ってよ!」


俺「候補に入ってませんし、入れません!」


二科「えーーー」


俺「何でそんなに拘るんですか⁉」


仁科「君、すっっっごく、私好みなんだよね!」


俺「はぁあ???」

好み?え?何?どういう意味?


南城「それ、どーゆー意味⁉」


堀北「ゆっくりお話ししないといけないみたいね?」


うおぉ⁉

なんか南城さんと堀北さんが間に入ってくれた⁉


仁科「どーゆー意味も何も……ふふ、これからは恋敵ライバルだよ!」


俺「ライバル?」

名前持ちってよくそういう事いうけど……

何かしら競ってないとダメって決まりでもあるの?

もしそうなら、大変だな……

俺mobでよかった……


南城「負けないよ!」


堀北「私に勝てると思ってるの?」


仁科「最後に笑うのは私だよ!」


バチバチと火花を散らし啖呵を切って睨み合う三人の名前持ちネームドの女子たち


それを遠巻きに眺める俺を含むmobたち


もう、これ俺関係無いんじゃないかな?

そうだよね?ね?


よーし

今のうちにどっかの部活でも見学しに行くかな!


息を殺してそーっとそーっと教室から出る

三人は何やら言い合ってるみたいで、俺の動きに気付いてないみたいだ





珍しく南城さんたちから逃げる事に成功した俺は、部活棟と呼ばれる旧校舎へ向かった








久々に一人ぼっちになれた俺はリラックスして廊下を歩く


この旧校舎は木造三階建て、一応の耐震補強はされてるけど全体的な印象は……


かなりボロい


まぁ、文化室内系の部活がいくつか入ってる程度だし

本来は古い事を理由に立ち入り禁止になるような場所だからな

ボロくても問題はないんだろう


それでも学校側は、人気の無い文化部の最後の砦として使用を許可してるみたいだし

そのうち廃部になるから特に問題を起こさない限り何も言わないんだろうな


寂れた商店街ってきっとこんな感じなんだろうな


そんな失礼な感想を思いながら廊下を歩いていると

一枚の掲示物が目に留まった



校内新聞?

そんなの発行されてたのか?


スクープ!!


『名前持ちの女子(C・NとH・H)がmob男子に恋をした⁉』


mob男子は二人を侍らせて二股をかけている!!

この男子は二人の好意を利用し、バラ色の学園生活を謳歌している!


って……ふっざけんなよっ!!

何が二股だ!何がバラ色の学園生活だ!!

いつ存在が抹消されるかわからない状態が、バラ色なものかよ!!


記事を読み憤慨してると、近くのドアが開き

中から男子生徒が一人顔を出した

まじまじと俺を観察する


男子「どう?その新聞」


俺「は?これのどこが新聞ですか?」

ハッキリ言って気分が悪い!!


男子「え……いやいや!今回の記事は結構人気なんだけど」

人気だぁ?


俺「だから何です?」

人気だからってそれが新聞と言えるかどうかは別だろ⁉


男子「そ、そっか。もしかしたら入部希望者かと思ったけど……違うみたいだね」


俺「はい?入部希望者?」


男子「そう。オレ新聞部」

この記事書いたのはお前かぁーーーーー⁉⁉


俺「少なくとも俺は絶対に入りませんよ」


新聞部「そ、そっか……このままじゃ来年には廃部かなぁ……」

さっさと廃部になっちまえ!


俺「まぁ廃部でしょうね」


新聞部「な、なんだよ!さっきから!やけに突っかかってくるじゃないか!」


俺「はぁ~……なんで俺がこんな物言いか分からないの?」

俺の事記事にしといて?


新聞部「そりゃ、こんなゴシップ記事みたいなモノを新聞だなんて言ったからだろ?」


俺「半分くらい正解。でも大ハズレです」


新聞部「ハズレ?」


俺「どーも、自己紹介が遅れました。二股疑惑のmob男子です」


新聞部「……え?」


俺「まさか、記事にしといて俺の事知らないなんて言わないよな?」


新聞部「き、君が……⁉ぜ、是非取材させてくれないか⁉」


俺「断る!!」


新聞部「なんで⁉」


俺「寧ろ今の流れで『はい。よろこんで』なんて言う奴いるわけないだろ⁉」


新聞部「……そ、そうか。ならこの記事は破棄するから、話し聞かせてもらえないか?」


俺「嫌ですよ!」


新聞部「どうしたら取材を受けてくれるんだ!」


俺「少なくとも、ちゃんと自分で調べて記事にするようになってからじゃなきゃ、話にならないよ」


新聞部「そ、そう…だな……」


俺「それじゃ、頑張って真面目な記事書いてください」


もう話す事はない

俺は新聞部の部室前を通り過ぎた






さて、とりあえず三階まで上がるか……

所々軋む階段を慎重に上る




今の所合ったのは新聞部の男子一人だけ

ホントに部活してるのか?

実は新聞部以外はもう無いとか、そういうオチはないよな?






三階に上がり廊下を進む

すると、何故か暖簾?がかかっている教室があった


第一印象は居酒屋

しかし近づいてみると、暖簾?には刺繍で文字が入れられていた



占 い 部



占い部?そんな部活あったのか……

というか、部なのか?

この手の活動は同好会止まりが殆どじゃないのか?



ちょっとした興味本位で中を覗いてみることにした






女子「いらっしゃい」


俺「お、お邪魔します」

薄暗い教室の中に黒いフードを被った女子が一人座っていた

いや、ほとんど人の気配なかったんだけど……

てか、いらっしゃいって……お店か何かなのか?


女子「今日は何を占いますか?」


俺「えっと……見学に来たんだけど」


女子「なんだ、客じゃないのか。ウチは見学お断りだよ。帰んな」


俺「あ、はい」


占い部の女子、怖っ

客じゃないと分かった途端、口調がキツくなったぞ


てか、部活で客商売ってダメじゃないか?


関わるとヤバそうだし、もう近づくの止めとこう



廊下を進むが他に部活をしてそうな教室はない


とうとう突き当りまで来てしまった


俺「何もない、か」


引き返そうと振り返ると






目の前に女子が立っていた⁉






俺「うわっ⁉」


女子「きゃっ!」


俺「い、いつからそこに?」


女子「今出てきたとこです。廊下で声が聞こえたので見に出てきて・・・」


俺「そ、そっか」

俺の独り言を聞いて慌てて出てきたのか?


女子「えっと、こんな所で何してるんですか?」


俺「部活を探しにきたんだけど」


女子「こんな所に?」


俺「あ、うん。あんまり人の多くない部活がよくてね」

幽霊部員でも問題なさそうなぐらい人のいない部活がいいんだけど


女子「あ、それなら文芸部はどうですか?」


俺「文芸部?それは」


女子「はい。ここ!旧校舎3階突き当りの角部屋が文芸部です」


俺「君もしかして文芸部?」


文芸部「そうですよ」


俺「そうなんだ。他に部員は?」


文芸部「いませんよ?」

ふむ。これはアリかも


俺「実は、活動するのが目的じゃないんだけど良いかな?」


文芸部「そうなんですか?」


俺「あ、うん。幽霊部員でもよければ入部しようかなって」


文芸部「幽霊……そうですか。でも、いいですよ!ただ一つだけ条件があります」


俺「条件?」

今まで条件がある場合はまともだった試しがない

不安だな


文芸部「偶にで良いので、ここに遊びにきてください」


俺「たまにでいいの?強制参加とかじゃなくて?」


文芸部「いいですよ。でも、月に何度かは来てほしいです」


俺「あ~、それくらいでいいなら」

いいよな

月に何度か遊びに来ればいいだけなら


文芸部「やった!一人ボッチで退屈してたんですよ」


俺「そ、そうなんだ」


文芸部「まぁ、幽霊なので文句言えないんですけどね」

あ~、この子も幽霊部員なのか

だから遊びに来いってことか!

で、今日は偶然部室に来ていたと

珍しくラッキーだったな


さて、今日は帰るかな


俺「悪いけど、今日は下見のつもりだったから」


文芸部「あ、そうですか。分かりました。ではまた今度」


俺「じゃ、そういうことで」










俺は旧校舎三階の文芸部を後にした


あ、呼び名聞くの忘れたな……

あの感じはmobっぽいし、とりあえず文芸部員さんでいいかな?

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