第25話 第一回 お茶会 in 家庭科室

南城「放課後、楽しみだな~!」


俺「あ、あんまり期待しないようにね?」


南城「ねぇねぇ!今日は何を作ってくれるの?」


俺「一応、チョコレート菓子の予定だよ……」


南城「うわぁー!私チョコ大好き!」


俺「そ、そっか。チョコ好きなんだ……」

失敗したな

もっと違うものにすればよかった……


南城「うん!」


堀北「千秋、午前の授業中ずっと上の空だったでしょ」


南城「えへへ」


堀北「ちゃんと授業聞いてないと、テストで痛い目見るわよ?」


南城「だいじょーぶ!いつも春香が親切に教えてくれるから!」


堀北「もう!千秋が聞いてないから私が教える羽目になるんでしょ?」


南城「だって先生の話って分かりにくいんだもん」


堀北「どの先生も割と分かりやすく教えてくれてるわよ?」


南城「春香は元々頭いいから」


堀北「千秋だってやれば出来るんだから」


南城「できないよ、私には……」


な、なんだろ……

昼休みにいつも通り俺の机に集まったはいいけど、途中から何か言い争いみたくなってきてないか?

コレ、ほっといて大丈夫なのか?


言い争いは続き


南城「春香の分からず屋!」


堀北「千秋!!」


大声で言い合うようになってきた


俺「ちょ、ちょっと落ち着こう!ね?深呼吸深呼吸!吸って~、吐いて~、もう一回吸って~、吐いて~……落ち着いた?」

慌てて声をかけ深呼吸をした二人は少しだけ落ち着いたようだ


俺「二人ともどうしたの?」


南城「なんでもないよ」


堀北「大丈夫、問題ないわ」


すごーく問題しかない気がするんだけど……



その後会話は弾むわけもなく当たり障りのない事だけ話して昼休みが終わった













放課後


俺は多少ギクシャクしてる二人と共に家庭科室へ向かった





仁科「ようこそ!我が家庭科室へ!」

テンションの高い仁科さんに迎えられ家庭科室へ入る


俺「ども……」


南城「よろしくね。仁科ちゃん」


堀北「よろしく」


仁科「ど、どうしたの?何か暗いよ?」


俺「いや……俺にも判らなくて」


南城「何でもないから、始めようよ」


仁科「そ、そう?……じゃあ、先ずは手洗いからね!よーくキレイに洗ってね!」


仁科さんは努めて明るく振る舞っている

がしかし、二人のテンションは相変わらずだ


ホントに大丈夫なのかな……

多少の不安を感じつつも、俺は調理に取り掛かる



先ずはチョコを湯銭で溶かすかな

用意されてるスイートチョコの塊を包丁で細かく刻む

そして、買っておいたビターチョコを取り出しこれも同じく刻む


刻んだチョコをボールへ入れておく

コンロで鍋にお湯を沸かす

コレは温まるまで少し時間がかかるから、火にかけてる間に他の材料の計量とかをする


薄力粉とグラニュー糖に卵、無塩バター、ココアパウダーっと基本の材料はこんな所


計量できたら粉モノはふるっておく


よし、お湯は結構湯気出てるな……少し冷ますか

沸いたお湯に水を少し入れて温度を下げる

手を翳して適温になったのを確認する

チョコを入れたボールの底面をお湯に浸しヘラでそーっとかき混ぜる

溶け合い混ざり合うチョコから甘いいい香りがする

溶けたチョコって何か美味そうだよなぁ

チョコにバターを入れて一緒に溶かし混ぜる

お湯から出して濡れ布巾にボールを乗せる


そこに卵とグラニュー糖を入れてさらによく混ぜる


混ざったら薄力粉とココアパウダーをふるいながら入れる

サクッとヘラで混ぜてダマが無いか確認する


これで生地は出来上がりだ


後は、容器に入れて焼けば完成かな


オーブンは170°に予熱して、と


俺「あの、仁科さん」


仁科「な、なにかな?」


俺「耐熱容器、どこにあるかな?」


仁科「あ、それならアッチの戸棚に入ってるから」


俺「じゃ、それ借りますね」


仁科「うん…どうぞ」


教えてもらった戸棚から耐熱性のあるカップを数個取り出す

サッと軽く洗い、水滴が残らないように丁寧に拭く


カップに生地を流し込んでトントンと均す


少しして予熱が完了したから天板にカップを並べてオーブンへ入れる


このお菓子は焼き加減がとても大事だからな

慎重に見極めないと……


とりあえず、5分くらいで様子をみるかな


タイマーを設定して待つ

待ってる間に使ったボールと小皿、ふるい何かも洗っておく


丁度洗い終わったところでタイマーが鳴る

オーブンの中を確認する


俺「ん~~……、もう少しだな」


追加で1分半くらい焼くかな


多分大丈夫だろう


俺「もう少しで焼ける、から」

って、ん?みんな、どうしたんだ?

何か俺の事見て固まってる?

なんで??


仁科「あのさ、本気で家庭科部うち入んない?」


俺「いやいや、俺は入んないですよ?」

またか

もう何度目だよ


仁科「そこをなんとか!」


俺「お断りします!」

なんか今回は随分と押しが強い気がする


仁科「君のような逸材を手放すわけにはいかない!」

逸材⁉


俺「いや、俺は普通のmobですから!」


仁科「どうしたら入ってくれる?何が望み⁉」


俺「いや、望みとかないですから!単純に部活に入るつもりがないだけですから!」


仁科「そう、そこまで強情なら仕方ない……最後の切り札を切るしかないみたいね」

な、なんだ……?

最後の切り札っていったい……?


仁科「この私を好きにしていいから、入部して!」


俺「何言ってんですか⁉ダメですよ!そんなの!」

頭おかしくなったんじゃないの⁉


仁科「私の身体じゃ不十分とでも言うつもり?」


俺「いや、そんな事じゃなくて!自分が何言ってるか分かってる⁉」


仁科「もちろん!さぁ、好きなだけ私に欲望をぶつけていいのよ!」


南城「そんな事しないよね?ね?」


堀北「ダメよ、不純異性交遊なんて」


俺「しないよ⁉するわけないでしょ⁉」


南城「本当に?」


俺「しないよ!」


仁科「私……そんなに魅力ないのかな……」


俺「いや、そういう話じゃないですから!二人とも助けて!仁科さんの暴走を止めて!」


南城「う、うん!でもどうやったらいいのかな」


堀北「まずは、落ち着かせないと」


南城「どうすれば落ち着くかな?」


堀北「気絶でもさせれば、あるいは」


南城「わかった!……ごめんね、仁科ちゃん!えいっ!!!」

ゴスンと一撃を加えられた仁科さんは


仁科「ぐふっ……」

気絶した


慌てて南城さんが倒れないように抱き留める


そんなバタバタがひと段落ついた所でタイミングよく

タイマーが鳴り、お菓子が焼きあがったことを報せる


俺は仁科さんから距離をとりつつオーブンへ向かい

焼きたてのお菓子を取り出し、焼け具合を確認する




うん

ちゃんと出来たみたいだ

ホッと一息吐く



南城さんが他の家庭科部の女子に仁科さんを渡し、数人で担いで保健室へ連れていく

顧問の家庭科の先生も付き添い家庭科室から出て行く



さて、この空気……どうすんだよ⁉




まぁ、そんな事周囲の反応なんてお構いなしってのが名前持ちなんだけどさ


堀北「それ、美味しそうね」


俺「あ、食べる?」


堀北「ええ、バタバタしちゃったけど。お茶会始めましょ」


南城「あ!二人だけでズルい!私も食べたい!」


堀北「みんなで食べましょ」


南城「うん!」





食べる用のテーブルに着くと堀北さんが紅茶を用意してくれた


俺「あ、ありがと」


堀北「どういたしまして」


南城「わ、私も!」

そう言って自身のカバンから水筒を取り出す

カップは家庭科室の備品を借りて南城さんが水筒の中身をカップへ注ぐ

うん?なんだろ、凄くいい香りだな


そして、俺の前には紅茶の入ったカップが二つ……


両方飲まないとダメだよねー……




俺「さて」


堀北「それじゃ」


南城「始めよっか!」


三人「「「いただきまーす」」」



チラチラと家庭科部所属の女子から覗き見られながら、第一回のお茶会が始まった


あれ?

そういえば

二人はお菓子どうしたんだろ……?


作ってなかったみたいだけど……


この紅茶がお菓子の代わり、なのかな?

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