第16話 対決⁉ 調理実習

今日の時間割は特別に変更されて、5・6限が調理実習の時間になった


急遽時間変更をさせられた先生方への同情を禁じ得ない


だが、俺にとってはもうそんな事どうでもいい!


現状、変に期待値が高い俺のクッキーだが……

そこまで美味しくないと分かれば、きっと俺への興味を失うはず……!


今は昼休み、次の授業が調理実習だ

俺はわざと負ける思惑を気づかれないようにしつつ、弁当を食べる


俺「いや~、驚いたよね。いきなり調理実習に変わるんだもんなぁ」


南城「そーだね!でもラッキーだよね!やっと君の作ったクッキー食べれるんだね!」

白々しい!

自分で仕込んでおいて……


堀北「私も驚いたわ。まさか千秋がそこまでするなんて、ね」


南城「え?なんのこと⁉」


堀北「千秋が先生のんでしょ?」


南城「違うよー!私じゃないよ!」

え?違うの?


堀北「千秋くらいしかいないでしょ?こんな事できるの」


南城「違うって!それなら春香だってできるじゃん!」


堀北「私じゃないわよ⁉」


南城「じゃあ誰?」


堀北「ほんとに千秋じゃないの?」


南城「うん。違うよ」


堀北「でも、こんな事できるの名前持ちくらいだし……」


南城「もしかして……」


堀北「まさか、ね……」


二人がなにか話し合ってるけど、今の俺には関係ない

四季島と勝負して負ける!

普通なら名前持ちに勝つことなんて出来ないし、必ず負けるはず

だから、俺は四季島がミスでもしない限り












先生「みんな、今日は先生の都合で急遽内容を変更してごめんなさいね」

あ~、先生のせいになるんだ……

先生可哀そうだなぁ


先生「えー、みんなにはクッキーを作ってもらいます。今回は材料の計量からやってもらいます。一応レシピは各テーブルに一枚用意してありますから、それを見てください。作れる人はレシピを見ないで作ってくれて構いません。それでは始めてください。あ、分からない事があったら聞きにきてください」


ざわざわと生徒たちから声が零れるけど、それは不満というより楽しみといったような雰囲気だ


因みに班分けは自由だったから、即効でBとDのやつを誘った

基本的に班員は4人づつだけど、一班だけ人数の都合上3人の班ができる

そこを利用して、俺はBとDの3人で班を組んだ


南城さんと堀北さんは女子2人と組んだみたいだ


四季島はというと女子3人と組んでいた。いつも通りだな



B「なぁ、この前食べたやつ作れよ」


俺「レシピ通りに作るか、もっとマズイやつにするか……」


D「なんでその二択なんだよ、普通に美味いの作れよ」


俺「はぁ?いやだよ」


四季島「何騒いでんだよ」


D「しき、しまくん」


B「な、ななな、なんでもないよ」


四季島「お前の全力で作れよ?じゃなきゃ意味がねーからな」

そんなすごまなくても……


俺「お、おう……」

全力で普通の味のクッキーを作るよ!


B「ど、どーすんだよ……」


俺「全力で不味いクッキーを作る」


D「なっ⁉なんでそんな無謀な事すんだよ!」


俺「いいか?これで不味いクッキーを作れば俺のmobライフが平和に近づくんだ」


B「どういうことだ?」


俺「考えてもみろ。現状南城さん達に絡まれてるが、期待を裏切れば?」


D「そうか、興味を失うかもしれないのか」


俺「そうだ。だからお前たちには悪いが、今回は赤点ギリギリレベルの出来栄えにする」


B「そうか。いいぞ、協力する」


俺「B……」


D「そうだな。まず何からすればいい?」


俺「そうだな……」

二人には材料の計量をやってもらうか


他の工程は俺が責任を持つ!


先生「どう?順調?」


俺「あ、はい」


先生「クッキー作り得意なんですって?」


俺「だ、誰がそんな事を?」


先生「四季島くんよ。凄いわね~、四季島くんが褒めるほどなんて」

先生の視線がやや冷たい気がする……気のせい、だよね?


俺「いやぁ……そんな事ないですよ……何かの勘違いですよ」

な、なんで先生はそんな事いうんだろう……


先生「クッキーの出来次第では、補習よ?」


俺「ほ、補習ですか?」


先生「もちろんよ。頑張ってね、したくないでしょ?」

りゅ、留年⁉⁉


俺「それって、どういう事ですか⁉」


先生「言葉通りの意味よ。……留年した名前無しの男子は存在していられるかしらね~?」

……それが狙いかぁーーーーーーーーーー⁉

留年が確定したmobは……確定した時点から存在が消えていくのか⁉

くっ……そんな方法で俺を消そうとするなんて……


俺「俺を消すつもりですか?」


先生「違うわ、不出来な生徒は勝手に消えるの。それが世界の理よ」


俺「そうですか……」

ま、まずいぞ……


先生「精々、頑張んなさい」






BとDが材料を持って戻ってきた


B「お、おい。どうしたんだよ」


俺「まずい事になった」


D「どうした?」


俺「クッキーの出来が悪いと、存在が消える」


B「は?何言ってんだよ」


俺「先生がさ、美味しくなければ留年にする、だとよ」


D「は?留年?」


俺「ああ、留年が確定したmobは……」


B「消える、のか……」


D「くそ……」


俺「巻き込んですまない!」


B「な、なぁ……この前作ってくれたアレ、作れないのか?」


D「そうだ、アレなら」


俺「でも、あの作り方でもダメだったら……」


B「そん時はそん時だ」


D「そうだな。アレでダメならどう足掻いてもダメだろ」


俺「いいのか?」


B「お前以上に美味いクッキーを俺は作れない」


D「俺もだ。だから頼む。今までで一番美味いクッキーを作ってくれ」


俺「B……D……分かった。今までで一番美味いやつを作るよ!」

今できる俺の全力で、今まで以上の味のクッキーを作る!

作ってみせる!


B「頼んだぜ、班長」


D「指示をくれ、班長」


俺のせいで存在の抹消の危機になってるってのに……

ほんと、お前ら……いい奴だよ!


俺「よし。すまないがさっき計ったやつじゃ、美味くできないから計り直してくれ」


B「はいよ!」


D「任せろ!」


俺「粉モノは混ぜ合わせてからふるいに2回以上掛けてくれ」


B「二回?」


俺「ああ、最低でも2回だ。ダマができにくくなる」

他にもあるが、今は時間が惜しい


B「なるほどな」


D「こっちはどうする?」


俺「そうだな……力仕事だがいいか?」


D「任せろ」


俺「なら、バターを練ってくれ」


D「バターを練る?」

あ、そうか

これって独特な言い回しか


俺「泡立て器でバターを捏ねて滑らかにするんだ」


D「なるほど」


俺「ある程度柔らかくなったら、そうだな…3回くらいに分けて、グラニュー糖を混ぜてくれ」


D「全部まとめて入れちゃダメなのか?」


俺「ああ、均一になった方が美味しくなる」


D「そうか」


俺「俺は味の種類を用意するか」


チョコチップ、胡桃、ナッツ……あ、ドライフルーツまである

組み合わせ次第で、いろんな味が出来そうだな!







BとDの協力で何とか時間内に完成させることが出来た

さて……先生を納得させる程美味くできてればいいが……

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