mobと美少女(仮)

もえすとろ

第1話 告白はご遠慮頂きたい 修正

俺はmobモブ、名無しのmobだ

利便性の為の呼び名は男子生徒A

顔も描画されないレベルのmobだ

そんな俺にとってクラス内にいる名前持ちネームドは近くて遠い存在だ

彼ら彼女らは物語りの主人公や主要キャラたちだ

そんな人たちを遠巻きに見てるのが俺たちmobなんだ

mobは基本的に彼らに関わってはいけない

これは暗黙の了解ルール

しかし、無視しているわけではないし嫌いなわけでもない

ただ、破滅願望がないやつは自分から関わろうとはしない


もし仮に俺みたいなmob男子がクラス内で一二を争う名前持ちの美少女ヒロインに声をかけようものなら……

良くて転校、最悪の場合……存在の抹消居なかった事に……すらあり得る

そんな身の程知らずのやつ居るわけないだろ?


名前持ち達は名前持ち達だけで物語りを進めていく、そこにmobは不要なのだ


なのに……なのにっ!!!!!









なんだこの状況は!?


放課後、俺の眼の前にはこのクラスの名前持ちの二人の美少女がいて

二人が同時に声をかけてきている

南城なんじょう 千秋ちあきさんと堀北ほりきた 春香はるかさん

この二人は確かこのクラスの名前持ち男子四季島しきしま 太一たいちを狙っていてたハズだ

過去、この二人は俺みたいなmobに声をかけた事なんて一度も無かった


俺「…………な、なんの用でしょうか?」

南城「えっと……」

堀北「その、ね……」


なんだ?なんだ?俺は四季島について何も知らないぞ?

アイツの趣味も、性格も知らないし、一切の接点も無い

そんな俺に何の用があるっていうんだ?


俺「……………」ゴクリ……

南城「…………」チラッ

堀北「…………」チラッ

南城さんと堀北さんがお互いをチラ見している?

なんなんだよ?

俺が何したってんだよ!!

もしかして、俺って死ぬのか?

これ、死亡フラグ的なやつだろ……


放課後、名前持ちの美少女たちから声をかけられる

これは、どっかで何かしらのフラグを建てたのは確実

そして、俺みたいなmobの場合……死亡フラグは回避できないし折れない!

ああ、俺この後死ぬんだ……なんだかんだで短い人生だったな……まだ読み途中の小説とか積んだままのゲームとか色々あったのに、な

俺「はは…………」

世界はなんて理不尽なんだ



南城&堀北「……私と付き合ってください!!」


堀北「……こんなガサツ阿呆女じゃなくて私と!」


南城「こんな冷血女と付き合うよりも私と!」


俺「えぇー……」


ああ、やっぱり……この後俺は不慮の事故に遭い他界

人生 THE END

何か、ないかな……俺が生き残る方法って


パターン1 城南さんと付き合う

南城さん派の男子から袋叩きに合う

→死


パターン2 堀北さんと付き合う

堀北さん派の男子から闇討ちされる

→死


パターン3 二人とお付き合いする

四季島から攻撃される

→死


パターン4 二人ともお断りする

世界から不要な存在認定されて

→死


あ~、ダメだ。何も思いつかない……

誰か、俺を助けてくれ……


南城「いきなりごめんね」

堀北「返事はまだ大丈夫だから、ゆっくり考えて」

俺「え……?」


二人はそのままあっけなく帰っていった……

俺は一命を取り留めた!?

なんでか分からないが、コレはチャンスだ!

夜逃げでもして、遠い地へ逃げれば俺は死なずに済むかもしれない!!

そうと決まれば、早速行動開始だ!



出来るだけ早く旅用の買い物をして、帰宅

すると、玄関には見慣れぬ女性モノの靴があった

母か妹の友人だろうか……?


俺「ただいま~」

挨拶も半ばに二階の部屋へ

母「あ、帰った?あんた友達呼ぶなら先に言っておいてよね!」

俺「友達?」

誰か俺のいない間に来たんだろうか?

Bのやつかな?それともDか?

約束してたかな?

俺「ごめんごめん。気を付けるよ。じゃ!」

今はそんな事より逃げる準備だ

自分の部屋へ入る


俺「え…………」


すると、そこにはいる筈のない人物がいた


そう、城南さんと堀北さんだ

これは絶望しかない……

逃げようとしてるのがバレたのか……

もう、打つ手がない……


俺「えっと、なんでここに?」


南城「お願いがあってね!」


堀北「お邪魔してます」


南城「明日から、一緒に登校しましょ!」


堀北「もちろん私もご一緒します」


俺「いや、なんで俺の部屋に……?」


南城「住所は先生が教えてくれましたよ?」


堀北「お母様が案内してくれました」


先生!?個人情報は!?どういう管理してんのさ!! 

そして母さん!?なんでそんな余計な事を!!!!

……まさかさっき言ってた友達って、この二人か!?


南城「ね、いいでしょ?」


俺「あ、いや……その……」

どうする?

OKした場合、明日から俺はmobのくせに名前持ち二人と一緒にいるイレギュラーとして命を狙われる……

断った場合は……?

この二人が大人しく諦めてくれるかは分からない、しかし今はソレしかないか……


俺「申し訳ないけど……俺は一人で」


堀北「お嫌、でしたか?」

嫌だよ?

でもそうやって正直に言った場合、不慮の事故死が近づく気がする……


俺「嫌ってわけじゃ」


堀北「なら、いいじゃありませんか」


俺「いや、でも」


南城「なんか困ってる?私が力になるよ!なんでも相談して!」

困ってるよ!あんたら二人がいるせいでね!!

なんて言えないし


俺「えっと……」

どうする?どうやって回避する?


堀北「この作戦はちょっと強引過ぎましたかね。今日の所は帰りますよ、千秋」


南城「えーーーー……」


堀北「えー、じゃありません!」


南城「わかったよー、もー……春香は怖いなぁ」


堀北「こわっ?何を言うんですか!」


南城「わー。春香が怒ったー」


いいから早く帰ってくれ……頼むから!


南城「じゃ、また明日ね!」


堀北「また明日」


俺「あ、はい……」

二人が帰って、一息つく


逃げらんねーかなーー

あ~、明日、学校行くの嫌だなぁ!

仮病で休もうかな……



翌日、俺は一応制服に着替えてリビングへ行く


母「ね、あんた昨日の娘たちとどういう関係なの?恋人?」


俺「ぶっ、げっへっ」

味噌汁が気管に……


母「汚いわねー、何?咽るような関係なの?」


俺「ただのクラスメイトだよ」


母「へー、そう。クラスメイトね~」


俺「なんだよ」


母「別にー」


ピンポーン


俺「こんな朝早くから誰だよ?」


母「え?」


俺「はーい、どちら様で…」


南城「おっはよーーーー!」


堀北「おはようございます」


ガチャン

カチ

よし、ロック完了


俺「なんだ?なんでだ?」

落ち着け!落ち着け俺!!平静を取り戻せ!


母「どうしたの?凄い汗だけど」


俺「い、いや別に?なんでもないよ?(ちょっと怖い死の)セールスがね」


母「そう?」


俺「それより母さん、昨日の子たちに何か余計な事言ってないよね?ね?」

そうだと言ってくれ!


母「余計な事?言ってないわよ。あ~そうそう。帰る前に聞かれたのはいつも何時頃登校するのかってだけだし」


俺「答えてないよね?」


母「あら、何かマズかった?」


マズイなんてモノじゃない!!

今日お前の息子は死ぬかもしれないんだぞ?わかってんのか!?


母「そんな事より、開けてあげないの?まだ時間あるんだし、中で待っててもらって」


俺「あ゛?」

何言ってんの母さん?


母「何その反応は!遅めの反抗期かしら?受けて立つわよ!」


受けて立つってなんだよ?


ピンポンピンポンピンポーン!

ピンポンピンポンピンポンピンポンピンポンピンポンピンポンピンポンピンポンピンポンピンポーン!


あーーーーー!うるせぇ!


俺「今開けるよ!!」


南城「もー、どうして閉めるの!ヒドイよー!」

やかましい!!


堀北「改めて、おはようございます」

しれっと母さんに挨拶してんなよ!


母「ささ、中入って」

入れるな!!


堀北「ありがとうございます」


南城「おっじゃまっしまーす!」


俺「………………」


俺だけが状況に取り残されている?

何が起きたんだ?なんでクラスの美少女二人が俺の家で登校前に寛いでる?


もう……だめだな……これは……


暗黙の了解ルール違反で俺の生涯は幕を閉じる




来世があるなら……長生きしたいな……ははは


ルールを決めた神さまが居たとしても、俺にはどうすることもできない

なんたって俺はmobなんだから……


もう開き直って余生を楽しもう


そう、俺はmobの男子生徒A

例え消えたとしても世界のルールに影響を与えない存在

なら最期に楽しんでもいいよな?

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る