異世界に飛ばされたのに戦闘系スキルが無いので憧れの農業生活をしようと思う
カラメルtakumin
第1話 突然の転移
「ああ、今日も一日大変だったなあ」
学校の帰り道、堪らずに声が漏れてしまう。もう、日もすっかり暮れてしまい帰宅路の道には子供の姿はなく、スーツ姿の大人が数人しかいない。仕事帰りなのか、みんな俺のように疲れ切った顔をしている。
高校に入学してから俺の生活はがらりと変わってしまった。それもこれも受験前にどういう学校か調べないで入った俺がいけないんだけどね......。俺が通っている学校は文武どちらにも力を入れており、部活動は運動部しかなく、週1日しか休みが無い。その休みの日も学校の授業なんかでほとんど無いようなものだ。
今日も体育で20キロ走をしてくたびれている。みんなが大好きな夏休みも毎日部活に全員強制補習などで1日しか休みが無かった。もうやだ、こんなに窮屈なことなんかしたくないよ......。
バスに乗りさらに15分ほど歩いてようやく家が見えてくる。フラフラになりながらドアを開ける。ああ、眠いな。
「ただいまあ......」
大きなあくびをしながらいつも通り靴を脱ごうとして下駄箱に手を突こうとする。手が本来触れるであろう下駄箱の位置を素通りし、空を切った。え、いくら疲れてるからってそこまでフラフラではないぞ?
「あで、痛ったたたあ......。ってあれ、ここどこ」
ぶつけた尻をさすりながら目を開き辺りを見回すと自宅の玄関ではなく、あたり一面真っ白の空間だった。地面らしきところには黒い線でマス目を作っているので辛うじて地面と分かるくらいだ。これ無かったら感覚がおかしくなってしまうところだ。
え、ええ、ええっと? どこ、ここ。まったく知らない場所なので頭が混乱する。俺以外にも人がいるようで、全員がこちらを見ている。一人だけ間抜け面しながら尻もちついているのは恥ずかしいので、咳払いをしながら立ち上がる。
「あの、大丈夫ですか?」
「え? あ、ああ。大丈夫です。心配してくれてありがとう」
立ち上がってすぐに話しかけてくれる人がいた。お礼を言いながら顔を確認する。茶髪の優しそうな顔をしている。
「一つ聞いてもいいかな」
「はい、僕が知ってる範囲でなら」
数個の質問をして今の状況を何とか理解する。どうやら俺を含めてみんないきなり飛ばされたらしい。みんな数分おきに飛んで来たらしく、今はなした希崎優人は3人目だったらしい。他の子たちもいまいち状況は理解できていなかった。
これからどうなるのか心配になってきたころみんなの目の前に一人の子供の背丈位の人物がいきなり現れた。
「やあやあ! これでみんな揃ったかな?」
随分明るい声で俺たちを見てくる。顔は......なんだろ、上手く認識できないな。こういう顔って思ったとたんに別の顔に見えてきたリするので良く分からない、声も中性的で男か女かもわからない。少し警戒しながらそいつを観察していると、金髪のいかつい顔の人が声をかける。
「おい、お前は誰なんだよ」
「うん? 僕は神様だよ! 神、ゴッド、ジーザス好きに呼んでいいよ!」
あまりにも場違いなテンションで話すので、金髪の人も怒気がさがり落ち着いてしまった。
「さて、君たちにはね、地球じゃない世界に行ってもらう予定なんだ! いわゆる異世界だね、ファンタジーだよ!」
「あの、1ついいですか?」
今度は希崎が質問をする。質問の内容はみんなが一緒に別世界に行くかどうかだ。それに対して神(自称)は、みんなバラバラ世界に行ってもらうよ! とハイテンションに答える。そうか、バラバラになってしまうのか。
「でも安心してね! ちゃんと向こうの世界でも生き残れるくらいの身体に作り替えるし、魔法だって使えるようになるよ! 地球じゃあ使えないように設定されてるからワクワクする要素の1つになるんじゃないかな!」
今さらっとすごいこと言いやがったな、もしこの神様が本物なら今地球の設定の話を出したぞ。俺がそのことに感心していると、神はそのまま話を続ける。
「行く世界は一人ひとり別だけど、レベルはほとんど同じだよ。一人だけ難易度の高い場所になんて送らないからそこのところは安心していいよ!」
ほうほう、みんな同じレベルの世界に飛ぶのか。もう、かなりぶっ飛んでいる話なのですごい落ち着いて聞いている自分がいる。
「あの、俺からも質問いいですが?」
「いいよ! どんと来い!」
ああ、じゃあと伝え俺も質問する。
「さっき生き残れるだけの身体に作り替えるって言ったじゃないですか、あれって作り変えないと速攻で死ぬってことですか?」
「うーん、すぐに死ぬってことはないと思うけど、魔物に攻撃されたらかなりの確率で大怪我負っちゃうよ? 向こうに適応した身体作らないと地球に無い病原体とかあるし、そういうの怖くない?」
確かに、それは怖いな。死因は未知の病原体でしたあ、なんてまったく笑えないしな。ありがとうと伝えて質問を終える。その後に神がほかに質問はある?? と聞いて、誰も質問しなかったので話が次のステップに進む。
「質問はないね、ならどの世界に行くか決めようか!」
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