普通。

一賭世 彩

第1話

教室

色々な音が聞こえる。

ありがちな恋愛相談、誰かの愚痴、特に上手くもない歌。

大人数で群れてみては、知らぬ間に人数が減り、また別の生徒が舵をとる。


どれも下らない、面白くない事で笑っている事も全く理解ができない。だが、それはとても簡単なことで考えれば分かる。

というより分かっていた。学生、とくに10代のうちはそれが社会の全てで、そこで出来上がってしまったルールから外れた者に居場所がないことくらい。


だから、取り敢えず混ざることに決めたのだ。


笑顔の作り方を覚え、人気のあるドラマやバラエティー番組、可愛さが売りのあの俳優。話に上がりそうなものを片っ端から調べ検索ボタンを押した。

そのうちに、自分の好きな物を聞かれても、ウケのいい物を探して答える様になっていた。


生きた心地がしない毎日が続いた。というより、コンクリートに埋められてしまった様な感覚に陥った。ありがちな表現だが、間違ってはいない。当たり前、普通、規則、それらの言葉は足元から私の身体と思考の自由を奪っていったのだから。


それが中高含め6年続く。苦痛でしかない。それは徐々に私の生活から"自我"を抜き取っていく。いつしかそれが生きていくための"普通"になるのだ。

欲しいもの、行きたいところ、将来の夢。存在していたこと自体は記憶している、だが叶わない。


それも普通。


了解。


そんな6年が終わり、やりたい事も夢も特に無かった私は、唯一好きと言える歌を学ぶ為、音楽の専門学校に入学。


上京して初めての一人暮らし。初日の夜、もちろんワクワクはしたが、特にすることもない。


新たな学校生活は今までとは全く別のものだった。普通や、笑顔を押し付ける人は少なく、何より会話が楽しかった。人の話を最後まで聞いてくれる友人、そんなもの初めてだ。


環境良好。


勿論、普通を押し付け、自分の意見ばかり言うものも居り、環境が良かっただけに傷付くこともあった。だが助けてくれる人もいた。これもまた初めてだ。

幸せな時間は私の表情や表現に柔らかさをくれた。


そんな専門の2年も終わった現在、遊びに誘ってくれたり、相談をしてくれる友人がいる。協力を仰げば駆けつけてくれた。そんな良き友人達だ。


私は、恵まれている。


幼い普通が私から自我を奪い、優しい普通が私に新しい道を示してくれた。


夢、そんなものもあった、だが今はない。夢を聞かれても答えられず、適当に遇らう。そんな自分が嫌いだった。でも、夢ややりたい事を探していくことを私の夢とした時、そんな自分に嫌悪感を覚える必要はない事に気付けた。やりたいことはその都度叶える。その為に生活をするのだ。


下らないな。


とても支離滅裂だ。


何が言いたいかわからない。

でもそれが私である。


私を受け止め、向き合ってきてくれた友人や、理解の幅を広げてくれたその環境に少しずつ感謝の想いを形にして返していこう。


教室

色々な声が聞こえる。

どれも私を作っていくに大切な言葉ばかりだ。







あとがき


群れる事に良さは覚えない。

彼らは、自分を押し付け更に誰かの自我を抑圧していくのだ。

だが、例外もきっとあるだろう。

新しい環境は人を良くも悪くも変えてくれる、だからこそ私は恵まれていた。

無理せず、自分の時間を有意義に使っていきたい。

これもきっと私の新たな「自己表現」

その一環なのだ。


初めまして。

小説なんて初めて書きました。分かってはいる。

ハードルの高さは半端じゃない。

とても難しかった。

やりたいことはあっても、なかなか到達できない。

良い経験になりました。なんとか続けていきます。


是非よしなに

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

普通。 一賭世 彩 @hitotose___iro

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

カクヨムを、もっと楽しもう

この小説のおすすめレビューを見る

この小説のタグ