第72話 モーガンの暴走

「グルル…」


マーガレットとジャックを睨み付けるモーガン。マーガレットが銃の引き金を引こうとした瞬間にモーガンがマーガレット達に飛びつく。マーガレットとジャックは左右に回避する事が出来た。モーガンの動きはとても速く、数秒遅れていたら腕を噛みちぎられるところだった。


「くっ…速いな…」


マーガレットはボソッと言い、モーガンに数発弾丸を撃ち込んだ。だが、傷口から血が流れるだけで動きは変わらない。


「マーガレット!モーガンは体撃っても意味ねぇ!忘れたのか!?」


ジャックはモーガンにトランプをナイフの様に投げつけながら言った。するとモーガンはジャックの方を見て飛びつく。防御のために出した腕に噛み付かれ血が大量に流れ落ちる。


「ああああ!…いてぇな…!はな…せ…ああ…!」


モーガンの噛みつく力はどんどん強くなり、ジャックの腕の肉を噛みちぎる勢いだった。

マーガレットはモーガンに銃を向け頭を狙い一発撃った。するとモーガンの頭から血が流れ、ガクンと動かなくなった。マーガレットはジャックの元へ駆け寄り、声をかける。


「大丈夫か…?」


モーガンの頭を押さえ、ジャックの腕から離そうとするが歯が食い込んでおりびくともしない。


「くそ…仕方ねぇ…ジャック…耐えてろよ…」


モーガンの顎と口を掴み無理やりこじ開けるようにしてジャックの腕を外した。ジャックの腕にはモーガンによって出来た傷が深々と出来ていた。


「ありがとう…マーガレット…いっつ…」


その後、ジャックは近くの病院へ入院する事となりモーガンは死亡した。それから数日が経ち、マーガレットはジャックの様子を見に病室を訪れた。入院している時のジャックはモーガンを失ったからかどこか悲しそうだった。


「ジャック…腕の様子はどうだ?」


「ああ…大丈夫かな…まだ多少痛むけどな…でも、こんな形でモーガンを殺るとは思わなかったよ…殺すって言ったのは私なのにな…」


ジャックは窓を眺めながら言ったがその時の声は震えていた。どんな理由とはいえずっと一緒にいたパートナーを殺す事はとても辛い。


「……。」


「マーガレット…怪我が治ったらキアラを私に殺らせてくれ…モーガンをあんな目に合わせたグレッタとキアラは許せねぇ…」


「分かった…だけど、怪我が治ってなかったら私が両方殺る。お前に無理はさせたくない」


「はは…わかったよ…お前は優しいな…」


マーガレットは病室を出て宿へ戻る事にした。

タバコを取り出し吸いながら近道の路地へと入る。ハーベルグ町に来てから何日経ったかは分からないがほとんどの道は覚えた。


「あれー?今日は一人なのー?」


前から聞き覚えのある声が聞こえ、見るとそこにはクスクスと笑いながら立っているハンリンがいた。


「そういうお前もか」


「そう!私もなんだー!だってあなた一人なら私だけでも倒せちゃうから!」


「へー…そうかい…」


マーガレットは銃に手を伸ばしいつでも撃てるような態勢に入る。ハンリンも黒い影を出し、いつでも攻撃できる態勢に入る。


キイィーン


「いっ…!」


突然ハンリンの頭の中にモスキート音のような高音の音が響き渡り、その後激しい頭痛とめまいが始まった為ハンリンは頭を押さえる。異変に気付いたマーガレットは銃を取り出したものの撃とうとしなかった。


「な…んで…い…ま…」


ふらふらとマーガレットに近づくが力尽きるようにしてハンリンは倒れた。

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