第71話 パトリシア

「はいよ!お嬢さん!」


「あっありがとうございます…」


パトリシアは雑貨屋で買い物を済ませ、紙袋の中を確認する。


(これとこれは買った…あとは…)


ポンッと肩を叩かれて、パトリシアは後ろを振り向くとパトリシアを睨みつけているマーガレットとジャックがいた。


「よお…ちょっと話があるからお茶しようぜ?」


マーガレットはキレ気味に言い、パトリシアはガクガクと震えた。

そして近くの喫茶店へ移動し、三人は窓際のテーブルに座る。テーブルに座るとマーガレットはパトリシアに質問し出した。


「さて、一応聞くが名前は?」


「パトリシアです…」


「パトリシアか…質問だがさっき私達に見せたあれはなんだ?」


マーガレットはパトリシアに商店街に来る前に見た夢のような何かを聞いた。


「あれは…皆さんの心の中での一番の思い出です…。私の能力「妄想」は人を絶対に忘れたくない思い出や私が作り出した妄想の世界に飛ばす事が出来ます…。ですが…たまに私が冷静じゃなくなると無意識に出してしまう事があるんです…」


「そうか、だから夢の中にミラが出てきたのか…ジャックは…?」


「いや…母さんが出てきたな…元気だった頃の…」


「え…?元気だった…って…どういう事ですか…?」


「パトリシア…悪いけど、察してくれ…あまり言いたくない…」


真剣な顔で言うマーガレットを見た後、パトリシアはジャックの作り笑いのような笑顔を見てどういう事かすぐに分かり無意識だとしても自分がしてしまった事と理由を聞いてしまった事に強く後悔しジャックに謝った。


「ごめんなさい…」


「いや、いいって!…ああもう!話題変えよう!そうだ!マーガレット、そろそろあれ聞いた方がいいんじゃないか?」


「ああ、そうだな。パトリシア、私らはこいつを探してるんだけど知ってたりするか…?」


マーガレットはポケットからタバコとグレッタの写真を取り出し写真をパトリシアに見せる。


「グレッタさんですか…?知ってますけど…」


パトリシアが言ったグレッタの名前を聞き、ジャックは反応した。


「…おい、なんでその名前知ってんだ…?」


「は?ジャックどういう事だよ?」


「グレッタは指名手配されてるからって理由で偽名としてグレッタって名乗ってたんだ…でも、あいつはずっと研究室に篭ってるような奴だからヴィランズコーストのメンバーしか知らない筈だ…なのに何でお前が知ってんだ…?」


ジャックの言葉を聞いたマーガレットはパトリシアの事を見るとガクガクと手を震わせ、焦っていた。


「…はい…そうです…私はヴィランズコーストのメンバーです…でも…私はあそこから抜けたいんです…」


「…じゃあ今のヴィランズコーストの拠点場所を教えてくれ。お前をあそこから抜け出すのを手伝ってやる」


マーガレットはパトリシアにそう言うと顔を上げ驚いた表情をしていた。ジャックはやれやれと呆れていた。


「マーガレット…お前なぁ…まあいいけど…」


「それで、場所は……」


パトリシアはヴィランズコーストの拠点場所を言おうとしたが突然パトリシアの近くの窓ガラスに勢いよく亀裂が入り割れた。突然の事に驚いたマーガレットとジャックは席を立ち警戒し、マーガレットはパトリシアの事を心配した。


「パトリシア!大丈夫か!?」


「逃げてください…お願いです…」


パトリシアは頭を抱えながら怯え震えた声で言うと、突然パトリシアの体が浮き上がり割れたガラスから外に放り出され隣の建物に体を打ち付けられた。


「パトリシアッ!!おい大丈…!?」


マーガレットとジャックは割れた窓から喫茶店を出て微かに意識のあるパトリシアのもとへ駆け寄ろうとするがパトリシアの隣に身長が高く、髪の長い黒い服装の女性が立っていた。


「ったく…クソメガネに買い物から戻るのおせぇから探してこいって言われて見つけたらこういう事か。おい、妄想女こんぐらいでくたばってねぇよな?」


高身長の女性はそう言うとパトリシアの腹を思いっきり蹴飛ばす。がはっと吐き、意識を取り戻したパトリシアの首元を右手で掴み自分の顔の高さまで持ち上げた。


「キアラ…さん…ごめん…なさい…」


「あ?なんだお前仲間を裏切っといて謝罪か?クソ野郎が」


マーガレットはキアラに向け銃を出そうとするが背後に騒動を聞きつけた保安官複数人がキアラに銃を向けた。


「人質を解放しろ!」


保安官の呼びかけにキアラははぁ…とため息をつくと空いている左手の人差し指を伸ばしくいっと保安官達の方へ向けた。すると凄まじい勢いでキアラの足元から黒い影が移動し、保安官達の近くに来ると影から数匹のドーベルマンが保安官達に飛びつき襲い始めた。ドーベルマンはどれも非常に凶暴で保安官達の体をバラバラに食い荒らし、腕を噛み切り、引き摺り回したり、血が飛び交い、犠牲になっている保安官達の悲鳴が響き渡りまるで惨劇だった。


「っち…今の保安官どもはこんなにも弱くなったのか…まあいい、そこのお二人さんにいいもの見してやるよ」


キアラはマーガレットとジャックの事を見て笑いながら言うとパトリシアの首元を思いっきり絞め上げグシャっとトマトを握りつぶすように潰した。大量の血飛沫が出るとパトリシアの体と頭は地面に落ち唾を吐き捨てられた。


「…っ!」


マーガレットはキアラに銃を向け発砲しようとしたが向けたと同時にキアラはマーガレットの目の前に立っており、左手でマーガレットの銃を持つ右手首を掴んだ。あまりの痛さにマーガレットは表情を歪ませる。


「さっさと銃を向けないからこうなるんだぞ?もしここが戦場だったらもう死んでるな」


「いっ…て…はな…せ…」


「隣にいる手品師もただ呆然と突っ立ってるだけか…まあ、そんな兵士たくさん見てきたから慣れてるが…」


「くっ…そがぁ!」


マーガレットはキアラの腹目掛け蹴りをいれようとしたが瞬間移動し3m程距離を置かれてしまい不発に終わった。

キアラはクスッと笑った。


「ふっ…そんなものか…なら私が相手するまででもないな…こいつと相手してな」


キアラが指をパチンと鳴らすとマーガレット達の前に黒い影が現れ、そこから黒い塊が現れると水風船のように割れ中から倒れて意識のないモーガンが現れた。ジャックはモーガンを抱き抱え呼びかけるが反応がない。


「モーガン!おいしっかりしろ!」


ジャックはモーガンを揺すってみると目がゆっくりと開き目を覚ました、だがジャックの顔を見た途端目を思いっきり開きマーガレット達から離れるとマーガレット達に向け犬のように威嚇した。キアラはそれを見てクスリと笑った。


「それじゃあお二人さん…存分に楽しませてくれよ…?」


キアラはそう言うと高笑いしながら姿を消した。


「ヴヴゥ…ガルウウゥ…」


「…っち…ジャック…覚悟決めるしかねぇな…」


「…ああ…こんな形でモーガンを殺すとは思わなかったけど…普通の時より多少気が楽だな…」


マーガレットとジャックは覚悟を決め、犬のように威嚇しマーガレット達を敵のように見ているモーガンを殺す事にした。

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