スタースピリッツ

水谷哲哉

プロローグ

プロローグ

 何もない、真っ白な空間。それが少女の周囲の全てだった。

 

 ただ音もなく、時折その真っ白な背景に虹色の光の筋が一瞬走るだけで、その空間は全てが停止しているようだった。

 

 そんな中、少女は静かに瞳を閉じ、膝を抱え、宙に浮いていた。洋風人形のような白い肌はこの少女が生きた人間なのか疑問を抱くほどであり、深海を思わせる深い蒼の髪は風がないにもかかわらずその何もない空間を漂っている。

 

 時間を感じない、永久に続く静寂な空間。


 しかしその静寂は前触れなく、破られる。


 少女が目を見開く。瞳の色もまた髪と同様深い海を連想するような蒼だ。


 少女は何もない空間を自在に動く。するとさっきまでいた場所を蒼い一筋の光が通り過ぎる。


 だがそれで終わらなかった。蒼い光は少女のいる場所に次々に降り注ぐ。まるで少女に対して敵意があるかのように。


 少女は空間を自由自在に動いて避ける。その様は魚がヒレを動かして海を泳ぐのと、あるいは鳥が翼で羽ばたいて空を飛ぶのと同じぐらい自然だった。少女は自分を襲う光を時に躱し、時に手を前に出して同じく蒼い光の壁を作って防ぐ。


(一体誰が……)


 少女は考える。こんな場所に現れる存在など全く想像できなかった。ここは自分だけの世界であり、自分しか存在してはいけない世界だったからだ。


 しかしその一瞬の逡巡が決定的なものとなった。少女が蒼い光を光の壁で防いだ直後だった。彼女の目の前に一人の少年が現れる。その少年の手には白い拳銃のようなものが――


(あなたは……!)


 少女はその少年を知っていた。しかしその名前を口にすることはできない。


 少年は銃口を少女の頭に突きつけ、躊躇うことなく引き金を引いた。


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