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 僕は家を出て地元に向けて出発したのだが、家の前にいつもはいる彼女はその場にいなかった。徒歩で駅まで歩いて特急列車に乗ってゆらりゆらりと揺られて約二時間、地元の駅に着いた。そこは普段生活している駅よりも電車の入り得る線路の数が少なく、改札も少ない。しかも無人の駅で何かあっても自己解決をする他なかった。改札を通って駅を出てまず向かうのは同窓会が行われる公民館である。これと言って集まる人が多くはないのでどこかを予約するということはなく誰しもが立ち入り可能な公民館を会場として選んだのだ。僕が着いた時には既にフットサルに招待してくれた友人はおり、五六人程度はもう集まっていた。彼曰く、あと他に男女それぞれ一人ずつ来るらしい。僕が来てから一分と経たないうちに男一人が来た。僕はそれほど仲良くしてはいなかったのだが懐かしみに触れていたので軽く話をしていた。男が来てから十分も待たされただろうか、公民館の入り口の扉がゆっくりとゆっくりと開いていった。そこから現れたのは僕の知っている女性だった。そう、それはいつもいつも僕を追ってくる彼女だった。僕は口が開いたまま閉じなかった。彼女とまだ職業を探しているときに交友があったが、同い年であることもしかも同級生であることも知らなかったのだ。彼女はそれを見越していたようでニヤリと僕の方を向いて笑った。

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