ストーカーに追われた男

キザなRye

1

 「私、ずっと見ていたの。」

僕は彼女にそう告げられた。彼女が何のことを言っているのか分からず、僕は状況の整理に頭を最大まで回転させていた。その僕の様子を見ていた彼女は微笑して

「単刀直入に言うとストーカーしてるの、あなたが今の会社に入社する一週間くらい前から。」

と言った。まるで僕が一生懸命考えていることに対して笑っているように見えた。しかも彼女は自分がしたストーカーという犯罪行為を恥じたり反省したりする様子はなく、どちらかと言えばストーカーを誇らしく思っているように思えた。そこで僕はふと思ったのである、今の会社に入社する一週間くらい前というのは五年近くもストーカーされていたということになる。まず彼女には本人が言っているストーカーを始めたという半年ほど前にハローワークで仕事を探している仲間として出会い、僕がその後早く仕事を見つけたため彼女とは連絡すら取らず関わりがなかったはずだ。しかし、彼女の方は僕がハローワークに通わなくなった後もずっと僕のことを追っていたということになる。なぜ彼女はこんなことをしたのか。これといって僕のことを追っても得られる良いことはないはずだ。僕は色々気になったことを直接彼女に聞いてみることにした。

「まず何で僕のこと五年もの間ストーカーしてたんだ、何か得なことでもあるのか。」

「得なことか…そんなものはないかな。理由なんてないよ。」

理由がないのに僕のことを五年もの間ストーカーしてきたことに驚きしか感じられなかった。

「逆に何で連絡して僕に会おうとしなかったんですか、そういう手もあったのに…」

「自分が秘密を持っていること自体がいい気分何です。その秘密があなたを追うことだったんですよ。」

別に僕をストーカーするのは偶然であったということになる。どんな理由であろうともストーカーされる身としてはいい気はしない。

「どんな理由であろうともストーカーは良くないことです。今後、やらないというのなら警察に通報することなく見逃してあげますが、この後再び続けるのであれば警察に通報させていただきます。私が言うことは以上です。」

言わなければならないと僕が思ったことを彼女に全て伝え終えると何もなかったかのように僕は帰った。この後も続くストーカーの彼女との戦いについては何も知らずに…。

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