これってバッドステータス!?
怪我の功名とでも言うべきか。
断崖絶壁からのスカイダイビング中、樹海の向こうに、かすかに集落らしき人工物が見えた。
徒歩ではまだまだありそうな距離だけど、明確な目的があると、モチベーションが違うね。
しろも帰ってきてくれたので、またいつものふたり旅。
しろが居てくれるだけでも心強い。
頭に載っかるしろの重量が、なんだかとても心地いい。
もう、安易な移動手段はやめることにした。
あのいかだがいい例だ。結局、余計に時間も危険も増し増しになってしまった。
しろとはぐれることもなかった。
ここは地道に徒歩で。
文字通り、地に足を着けて進むことにしよう。
なんというか、嬉しくはないけれど、初日に比べてサバイバル生活にも慣れてきた。
人間は、環境に適合する生き物なんだと実感する。
危険な獣の気配も事前に察して、無駄な
まあ、気配を察しているのは主にしろだけどね。
そうですね。すみません、格好つけました。
食事からなにから、僕は相変わらずしろ頼みです。はい。
それを依存というのなら、僕はしろに依存していることを甘んじて認めよう!
……妙なテンションになってしまった。
そんな感じではあったけど、実際のところ、それから数日の行程は、順調すぎるほど順調だった。
だからこそ――ちょっと油断したのかもしれない。
しろが道端の赤い実を美味しそうに食べていたものだから、僕もそれを摘み食いしてみた。
野苺みたいな外見だったけれど、率直な感想としては不味かった。
甘くも酸っぱくもなく、嫌な渋味が口いっぱいに広がった。すぐに吐き出したが、口に残った後味も最悪だった。
「しろはよく平気で食べてるね、これ」
「キュイ?」
人間と竜っぽい生き物とでは、味覚も違うのかな。
その割りには、しろが採ってきてくれる果実や木の実などの食料は、普通に美味しいけど。
そういったやり取りがあった数分後から、なにか僕は気だるさを感じるようになってきた。
なにか熱っぽいというか、風邪の引き始めで節々が痛くなるような、そんな感じ。
最初は気のせいくらいにしか考えてなかったけど、30分も経つと、身体がふらつくようになってきた。
休憩しようと、木陰で横になっていたけど、症状は悪化するばかり。
1時間が経過した今では、身を起こすのも億劫なほど、だるさが耐え難くなっている。
こっちに来てからは初の出来事。なにせ、ほぼ無限の体力。これまでそんなことはなかったのに。
念のために、ステータスを確認してみる。
―――――――――――――――
レベル13
体力 80519
魔力 0
筋力 41 敏捷 38
知性 64 器用 45
異常 猛毒
―――――――――――――――
げ! なにこれ!?
毒だよ、毒! しかも”猛”まで付いてる、猛毒だよ!?
ってか、僕の視るこのステータスって、状態異常まで表示されるんだ! 初めて知ったよ!?
だってさ、日常生活で毒に犯されることなんてなかったし!
全能力、特に肉体系の能力の低下が著しいけど、最大の問題は体力だ。体力の数値の減りが尋常じゃない。
既に1時間で半分を切ってる。しかも、目下減少中。
自然回復も効果ないのか、減少率のほうが上回っているのか判断つかないけど、回復はとても見込めそうもない。
この分なら、単純計算で後1時間で体力が尽きちゃうんだけど!
もしかしなくても、さっきの赤い実のせい?
「しろは大丈夫!?」
しろのほうは、特に変化なさそう。
僕のことを心配してか、おろおろしてるくらいだ。
ということは、人間にとっては毒だったってことか。自然相手に油断した。
病院なんて近くにはない。救急車も呼べない。
応急処置として、喉に指を突っ込んで、胃の中の物を必死に吐き出してみたけども、ステータス表示に変化はない。
やばいやばいやばい!
なんだか、意識も朦朧としてきた。
こうなったら、奇跡を願って手近の草でも食べてみるしかない。
運よく薬草とか解毒になるものもあるかもしれない。
懸命に這いずり、草むらで見た目が薬草っぽいものを勘で選んで手当たり次第に口に放り込んで咀嚼する。
なんともいえない青臭さと苦味が広がるが、我慢我慢!
(どうだっ!?)
ステータスを視る。
―――――――――――――――
レベル13
体力 65820
魔力 0
筋力 36 敏捷 31
知性 60 器用 42
異常 猛毒+ 麻痺
―――――――――――――――
バッド増えたー!
思いっきし逆効果! 猛毒が+になってるよ、そんなんまであんの!?
麻痺まで拾ってるし、もはやどうしろと!
体力の減り具合も加速した。既に10桁以下の減り方が速すぎて見えない。
麻痺効果で、身体も動かなくなってきた。
意識が遠退いていく。
も、ダメ……
僕が覚えているのは、そこまでだった。
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