僕(あお)と仔竜(しろ)の彷徨記
まはぷる
ちょっとステータスが視えるだけの普通の中学生ですけど
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レベル12
体力 155
魔力 0
筋力 61 敏捷 54
知性 68 器用 49
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これが僕の
僕の名前は、
これといった特技もないけれど、僕にはちょっとした秘密がある。それがこの、能力値を視覚化して視ることだ。目の前に透明なウィンドウでもあるように、視界の景色と重なって、こういったステータスが視えるわけ。
まあ、秘密といっても、僕個人にとっては日常で、特筆すべきことでもなかったんだけど。
なにせ、生まれたときから――かはさすがに覚えていないが、少なくとも物心ついたときには視えていたと思う。
幼い頃、親に聞いてみたことはあったのだが、困ったように微笑んで、頭を撫でられたことは覚えている。友達に聞いたときは、なぜだか嘘吐き呼ばわりされて、喧嘩になった。
どうやら、他の人には視えていないらしい――そのことに、ようやく気づいたのが小学校に上がった頃。その頃になると、懸命に訴える僕を見かねてか、両親にも本気で心配されて、病院にも連れて行かれた。
病院の先生は、多感な年代やゲーム世代における妄想癖――ま、早めの中二病として処理されて、笑って帰された。
両親に心配をかけた以上に、両親が恥をかかされたことに僕はショックを受け、それ以降、この話題を口にすることは避けている。
だけど、本当に視えてしまうものは仕方ない。
今もまた、学校からの帰宅途中、僕はステータスを見ていた。
ただし、今度は自分のではなく、他人のものだ。僕は他人のステータスも視えてしまうから。
帰宅路の路肩で、ふたりの高校生くらいの男の人が、言い争いをしている。片や私服のガラが悪そうな人で、片や部活帰りの大人しそうな人。
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レベル17
体力 203
魔力 0
筋力 92 敏捷 80
知性 51 器用 40
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レベル16
体力 280
魔力 0
筋力 114 敏捷 99
知性 83 器用 55
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うん。やっぱり身体能力としてはスポーツマンが高いね。そりゃあ、毎日、汗水流して鍛えている人と、そうでない人とでは、差は出るよね。
でも、威勢で押されている感は否めない。他の人たちも、僕のようにステータスが視れたらいいのに。
まあ、中学校生になったばかりの頃は、本格的に中二病を発病してしまい、「これぞ選ばれし者の能力か!」なんて痛いことを思い始め、自分のステータスを伸ばすためにいろいろやったんだけど。
寝る前の腕立て腹筋、難しい歴史書を読破、なんてことを3ヶ月も続けてみて、上がった数値は筋力がわずか1、知性が2だけに留まったので、心が折れた。
数値のアップは、レベルアップが一番手っ取り早いみたい。このレベルアップ。どんな仕組みか、いまだによくわからない。
経験値なのは確かだと思うのだけれど、もちろん敵を倒したりなんてしていない。
レベルアップはいつも唐突で、気づいたときには上がっている感じ。ナレーションがあったりファンファーレでも鳴ってくれるとわかりやすいけど、そんな便利機能はなかった。
一度、ちょうどレベルアップした場面に出くわしたのだけれど、そのときは洗面所で顔を洗っているときだった。なんの経験値やねん、と思わず鏡に映る自分に突っ込んだものだ。
ちなみに、これまで視た傾向から、年齢が高いとレベルも高いみたい。ただ、レベルも能力値も下がることもあるようだから、一概には言えないけど。
そして、能力値はレベルに依存しないようで、必ずしも高レベルだから能力が高いわけでもない。さっきのふたりみたいにね。レベルごとの成長値みたいなものもあるのかな。
だいたい、僕の場合は、レベルが1上がると、数値的には5ぐらい上がる感じ。体感的には、あんまり変わりない。
ちょっと体の調子がいいかなー程度かな。
口に出したら呆れられるし、日常生活でたいした役に立つわけでもない。病の熱も冷めたことだし、今は他人と違うという、ささやかな優越感のみを抱いて、普通に生活している。
そういえば、今日学校では、来年に控える受験、高校進学へ向けての軽い面談があった。将来の仕事としては、この能力は役立つかもしれない。たとえばそう、医療関係とか。
でも、実家の跡を継いで医者を目指す、学年1の秀才の斉藤くんの知性は98もあった。僕の1.5倍。
実力テスト中の中の僕では、医療関係はとても無理そう。
なんだか未来が現実味を帯びて、憂鬱になってきた。それでなくとも、来年には受験とか、ため息が出そう。
「ああ、学校とか就職とかしがらみのない、自由な世界に行きたいよ」
僕は呟いていた。
「……なんてね。さっさと帰ろ」
そのとき、僕が何気なく視た、自分のステータス――
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レベル13
体力 163
魔力 1
筋力 65 敏捷 58
知性 73 器用 52
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どのタイミングかはわからないけれど、レベルアップしていた。
そんなことは今までもあったから、別に気にするまでもないけど……
ただ一点、気になったのは、魔力の項目。0ではなく、1ある。
これまで、多くの人のステータスを視てきたけど、魔力に数値のある人は誰もいなかった。
僕の見ている前で、その1の数字が、0に変わった。
数値が変化したというよりは、減少――消費されたかのような。
「あれ?」
直後、僕の視界が光で真っ白に塗り潰された。
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