第三章 23歳青年編
第24話 どうしてこうなった
遂に主人公が王城にやってくる年が訪れた。
オレはこの年までデッドエンドフラグを立てない為にあらゆる策を講じて根回しをしてきた。そしていよいよこの年から誰にでもできる影から助ける恋のキューピッド編が始まる。その筈だったのだが……
「お兄様、はいあーん」
「待て待て、弟に食べさせてもらうなどマルセルも恥ずかしいだろう。ここは幼馴染である僕のスプーンから食べたまえマルセル」
「マルセル、ついこの間良い茶葉を取り寄せたんだ。今日はそれを飲まないか」
「おや、マルセル様にはこの私めがいつも最高級の茶葉を御用意しております。失礼ながらエルヴェシウス様の持参して下さった茶葉は本日は不要かと存じます」
「ほう、試してみるかね? 貴公の紅茶と私の紅茶、どちらがマルセルに気に入られるか」
ど う し て こ う な っ た ?
何というかみんな、その……異様にオレへの関心が高くないか?
まるで誕生日パーティの主役がオレであるかのような状態が毎日続いてるんだが?
特に主人公とルイの恋のキューピッドと、ジェラルドとクリスをくっつけるのとが同時進行になったらきついから、あらかじめジェラルドとクリスは仲良くさせておこうとしていた。なのに……
「よろしいですよ。それではポットをもう一つ御用意いたしますので、互いに紅茶を淹れるところから始めましょうか」
「なっ、私に自分で紅茶を淹れろというのか!?」
「おや、私の紅茶と貴方の紅茶を比べるのでしょう? 貴方は想いを伝える恋文を他人に書かせるお方なのですか?」
「くっ、望むところだ……っ!」
どう見ても仲がいいとは思えない。
彼らの仲を取り持つ為にたびたびジェラルドとオレとクリスの三人でお茶会をしたりしていたのに、何故かその度に彼らの仲はギスギスしていくようだった。
何故だ、何故こうなった。
オレが一体何を間違えたっていうんだ。
この18年間、デッドエンドフラグを避ける為に全力で努力してきたというのに。
もし追放刑に処された時の為に剣術を磨きありとあらゆる知識を吸収する傍ら、僅かでも時間の隙間があればラファエルやルイ、ジェラルド、クリスらと会って少しでも親しくなっておこうとしたのに……ッ! 何が間違いだったというんだ!?
オレは迫りくるスプーンや紅茶の注がれたカップから現実逃避して、その場で頭を抱えたのだった。
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