平凡サラリーマンの異世界漂流記~社長、勝手ながら辞職して冒険者させていただきます。~

なおぴ

第1章プロローグ 「黒狼」

皆んなは、異世界ものって聞いたらどう思う?


死んでそのあとイケメンに生まれ変わって世界を救う?


記憶をそのままに革命を起こす?




そんなの、何回生まれ変わっても凡人には無理なこと


しかも、俺の場合は少し違ったんだ


今この現代社会に生きてる人間が文明力の落ちた場所に行ったとしてなにができる?




「凡人は凡人なりに何処でも生きる事しか出来ないのさ」




ふとそんなことを彼は呟いた








相澤あいざわ 春人はるとは今日で31歳、夜勤終わりにコンビニで小さなケーキを買い


家で1人祝おうと車でトンネルを抜けていた




「はぁ、、誕生日を会社で迎えるとは、、


社畜してるなぁ、、家に帰ったって誰もいないしほんと悲しい人生だよ、、」




その気持ちと呼応するようにエンジンが止まった




「あれ、ガス欠か?こんな時についてないな本当、、ここは圏外だしとりあえずトンネルの外に出るか」




携帯電話を持ちトンネルの外を目指して歩いていった


しばらく歩くと変な音が聞こえた


《ガルルルル》なんの音だ?後ろからだ


それにしても変な音だな、犬の唸り声みたいな、、嫌な予感がした春人はそっと後ろを振り返った








「え?」




そこには自分の身の丈以上の黒色の毛をした狼のようなものがこちらを見ていた




(やばい、、やばいやばいやばい)




そう思ったと同時に体が勝手に走り出していた




「うぁぁぁあ!!!」




無我夢中で走り続けるとトンネルの出口が見え、外を見た瞬間、春人は絶句




「何処なんだここは、、いったい、、」




シダや蔓、木々が茂り


何度か海外のサバイバル番組でみた熱帯雨林のような光景で目を疑う




「そうだ車は!?」




後ろを振り向くとトンネルはもうそこにはなく。祠のようなものが代わりにある


どうやら何かが祀られているようだ




「なんなんだいったい、、ん?」




祠に近づくと小さな狼の像があった


像は苔が生え何年も手入れされていないようだ




「これはさっきの奴か、、?」




あの時の狼を思い出し春人は体を震わせる




「死ぬかと思った、、誰も祝ってくれない誕生日だからってこんなんで死ぬのはごめんだ、、これからどうしたものか、、ケーキ持って来ればよかったなぁ、、」




車に残したケーキを名残惜しく思いながらも現状について考える




ジャングルの知識はせいぜいディ◯カバリーチャンネルを見た時の物だけだ


ただ一つわかるのはこのまま夜になるのだけは避けなければならないという事である




「まだ、朝方とはいえこのまま何もせず夜になるのはまずいよな、、闇雲に歩いても遭難するだけ、、どうしたものか」




ふと、祠に目を向け閃いた




「あ、古くても祠があったって事は近くに人がいたということか!」




予想は当たり、祠の近くに劣化はしていたものの、人工的に作られた道のようなものがある




「よし!よかったぁ、これで助けを求められるかもしれない」




希望を胸に秘めその道を進んだ。




それにしても、見たことない植物だらけだ植物に関しての知識が薄いにしても、あからさまにおかしい植物が沢山ある




「ま、まぁ、何が食えるかも分からないし手を出すのはやめておこう、、」




こんな所で腹を壊した日には本当に死んでしまう。




―― 数時間後 ――




「はぁ、、はぁ、、近くに人里があると思いきや、、こんなに歩く事になるとは、、、流石、ディ◯カバリーチャンネル!!」




彼らはプロ、社畜のサラリーマンとは違う




「だが、、乗り切ったぞ!大きな道道に出た!!あっ、、でも、、もう無理、、」




と思ったのもつかの間、春人の意識はそこで途切れた


それもそのはず彼の所持品はスーツと携帯、名刺入れ、ボールペンだけだ。飲み物もあるわけもなく、頼みのケーキも車に置き去りだだったーーーー




ガタン   ガタン    ガタン    ガタン




ん?揺れてる? たしか道を抜けて、、




「んん、、ここは、、」




「お、起きたかあんちゃん!道で倒れてるから何事かと思ったぜ」




春人は馬車の荷台に乗っていた




「た、助けていただいてありがとうございます」




「おう!あんちゃん名前は?」




「相澤 春人です!」




「あいざ、?なんだって??まぁいい!あんちゃんって呼ぶわ!ハッハッハッ!!俺はゲイルってんだ行商人をしてる」




「とりあえずこれでも腹に入れておきな!」




と、赤いリンゴの様な果実を渡された。




「リンガだ!」




あ、絶対リンゴだこれ。訛ってるのかな?




陽気なおっさんは、どうやら外国人?らしい


それにしても行商人?しかも馬車、、ここって日本じゃないのか?


でも、日本語話してるよなぁ、、、疑問は膨らむばかりだ、、




「なんだってあの黒狼の森なんて場所にいたんだい?」




「黒狼の森?」




「あんちゃんが倒れてた場所さ、商人達はその脇の道を通らないと商売ができないから仕方なく使うが、普段なら誰も近寄らない場所なんだよ」




ゲイルのおっさんはペラペラと喋り始め最後に声を低くして言った




「なんたって、黒狼の邪神がでるって噂だからな」




「え、、、?邪神、、?」




「そうだ、邪神ってのは例えなんだが、噂ではこの馬車よりも大きい黒い狼らしい、、」




数時間前の出来事を思い出し確信した、あれが邪神と呼ばれる狼だと


おっさんはこうも付け加えた




「なんでも、その狼に捕まると異次元に飛ばされて帰ってこれなくなるという噂だ、、


まぁ、、本当に飛ばされて帰ってこれないなら噂も流れないはずだから誰も信じてないがな!ハッハッハッ!」




血の気が引いた、異次元?さっきの話が本当ならジャングルにいた説明もつく、、、




「あ、あの!」




「ん?なんだいそんなに焦って」




恐る恐る尋ねた




「ここは、、日本じゃないんですか?


この国の名前を教えてください、、」




恐れていたことが起きた




「何馬鹿な事言ってんだいあんちゃん、おっ、ちょうど見えてきた、見ろ、あれが、」




はぁ、、、ききたくない、、、なんなんだ!




「王都アーデンシアだ!」




こうして俺の異世界生活?が始まったのであった。




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