04:Appassionato

Appassionato——Prima Capitolo

「何度も言わせんな!ストーンズは80年代で終わってんだよ!」

「んだと!終わってんのはお前の頭だろうが!」

「やんのかゴラァ!」

「おう、表出ろや!」


 オッサン2人が居酒屋で言い合いを始めた。

 歳は50代後半と言ったところか。

 年甲斐もなくヒートアップしている様だ。

 今日は土曜の夜で、他の客も多い。

 店内の視線を集めるには十分すぎる声量だった。


「また始まった……、店員さんゴメンね!お勘定お願い!」


 その2人の近くに座っていたオッサンが手を挙げて店員を呼び、金を払い始めた。


「はい、ありがとうございます!」

「おら、二人とも!帰るぞ!」


 金を払ってるオッサンとは別のオッサンが、言い合いを始めたオッサン2人を無理矢理店の外に連れていく。


「おい待て!話はまだ!」

「いいから帰るぞー」

「放せ!おい!」


 連れ立って退店した4人のオッサン。

 それぞれがギグバッグなどを背負っている。


「聞いてんのか、ゴルァ!」


 未だに互いに掴み掛ろうとする二人を何とか引き離して歩いていた。


「この2人、いつまでこの喧嘩続けるんだろうな」

「ストーンズについて殴り合いはそろそろ勘弁して欲しいよ」


 4人は大学以来の友達だ。

 出会ったのは軽音サークル。

 知り合った直後、ストーンズのファンだと分かったこの2人は一気に仲良くなった。

 が、次の日には大喧嘩をしていた。

 簡単に言えば、コアなファンのちょっとした思いの違いで起きる戦争だ。

 普段は仲がいいのだが、ストーンズの話になると殺し合いの様相になる。

 20年くらい前までは、いつまでも変わらないと笑えたが、流石にもうやめて欲しいものだ。


「お前もストーンズを馬鹿にすんのか?」

「馬鹿にしてないだろ」

「おぉ!ちょっとツラ貸せや、ゴルァ」

「こいつら、なんでこんな面倒なんだよ……」

「飲みはなしにしよう。うん、それがいい」

「酒が残るようなってきたしな……」

「お前も?俺もそうなんだよ……」

「歳は取りたくないな」

「今更言う事でもないがな」


 この4人のオッサン達は、界隈でもちょっと有名なオッサンバンドだ。

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