第44話「鼻血とストレス」

 今日の私、春野深月は一味違った。


「やばい。マジやばいんですけどどうしよう。パないヤバイどうしよう」

「おいおい、ヤンキーからギャルにジョブチェンジか?」

「ンだよ、騒々しいな」


 二人は血まみれの私を見て硬直した。


「鼻血が止まりません」

「「マジでやべェな」」


 秋だから?乾燥のせい?

 分からない。ただただ鼻血が止まらない。


「ちょっとこっち来い。座れ」


 久瀬先輩の指示通り床に座ると、鼻にティッシュを詰められた。


「上向いで、首トントンずるんですよで?」

「お前その知識昭和だぞ」

「え゛」

「俯いて鼻の頭押さえるんだ。こう」

「というかココ来てねェで保健室行けよ」


 正しい処方を教えてくれる久瀬先輩の傍らで、黒峰先輩がまともなことを言ってくる。もっともだ。というか行ったし。


「ほげんのぜんぜい、じょくいんかいぎで、ほげんぢつしばってばぢだ」

「いいから喋るな。ガントゥー呼ぶぞ」

「だれがスティッチだ!」

「おい久瀬。しょーもねェツッコみさせんな」

「(しょうもないツッコミ……。鼻血止まったかな?)」


スポ……たらぁ


「(全然止まってなかった)」

「いやお前それ取るんじゃねェよ!幼児か!?」

「あ、やばい戻んないです」

「間抜け!新しいの作るから待ってろ!!」

「あ゛ーー!早く早く!たれる!たれます!」

「春野、お前発情期なんじゃねぇか?」

「ぢょっど!女子になんでごと言うんでずか!」

「勢いよく振り返るな。飛沫が飛んでくるだろ」


 私の鼻に詰めるティッシュを作ってくれた黒峰先輩が、そういえばと口を開いた。


「ストレスため込み過ぎると鼻血出るらしいぜ」

「え゛、でも私ストレスなんて……………あ。」


 私と黒峰先輩の視線を一身に受けた久瀬先輩が、心外だとばかりに立ち上がる。


「何だお前ら。俺の春野への度重なるセクハラや数打ちゃ当たると言わんばかりの量産型低品質のボケ。キャパをたやすく上回るスパルタ勉強法が春野の鼻血の原因とでも言わんばかりじゃねぇか!春野!ごめんな!」

「素直に謝る程度には自覚アリじゃねェか」


 後日我が家に久瀬先輩からレバーが届いた。余談である。

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