第12話

「でゅぇえぇ!?れ、れーかさん!?」


「な、え!?い、いや!勿論覚えていますよ!霊歌さん!私たち、これからこの前誘ってくれたお花見の宴に混ざらせて貰おうと思って・・・確かこの時期に色んな人達を誘ってるんでしたよね?」


「・・・良かったわ、覚えてもらえていて。いえこう言っては何だけれど覚えてもらえてない方が良かったかもしれないわね?ウチの管理にも問題があったから起こった件だったのだし・・・貴方達にとっては嫌な記憶しかないだろうから」


「いえいえそんな!悪いのはトレインしてきたあっちの冒険者がわっるいんですよぅ!れーかさんはわるくないです!!」


「そうです!【トラミエル】側は悪くありませんし冒険者である以上多少の危険は承知の内です!転移用の護符もなかったこっちだって悪いんですから!」


「・・・そう?それなら・・・よかったわ」


「・・・あ、あのーところで、何か用があったんすよね・・・?あ、自分この二人の友達の篠原 春樹っす、今回の花見に誘われまして恐れ多くもお邪魔させて貰おうと思っています」



・・・何だか話に入りづらかったが、なんとか会話をしようと自己紹介と用事があったのではないかと思い内心ちょっと気まずかったとはいえ話を急ぎすぎたかな?と思うものの話を促すと新崎さんこくりと頷くと。



「ええ、遅刻してしまったの」


「「「・・・え?」」」


「・・・?だから、遅刻してしまったのよ」


「・・・あ、そういえば、お花見の時間って正午じゃ・・・・・・」


「・・・今からじゃギリギリの時間帯になっちゃうね・・・・・・」


「えぇ、幹事としてもっと早くに行って準備しなければならなかったのだけれど・・・私、朝起きるのが苦手なのよね、完璧な私の唯一の欠点なのよ」


「今は昼なんですが・・・?」



さては、この人残念な人か!!何気に自分の事完璧な美人って言ってるし!何気にコーヒー頼んで優雅に飲んでるし!この人遅刻してんじゃないのか!?



「このコーヒーはこのお店のモーニングのセットよ、パンも美味いから好きなのよね」


「だからまだ朝だとでも!?」


「モーニングの意味はご存じ?」


「そんな、勝ち誇った顔で言われても・・・」


「れーかさん、こんな感じの人だったんだ・・・でも朝起きるのは辛いよね・・・私も今日夢ちゃんが電話で起こしてくれなかったら危なかったもん」


「い、イメージが・・・」


「私は私よ?」



っく・・・微妙に俺の性癖に突き刺さってるのがまた悔しい・・・美人だし・・・そして市川さんは何時も可愛いな・・・あれ?っていうか・・・それなら・・・



「で、それと俺たちに何の関係が・・・?」



ちょっと雑な言い方になってしまったが遅刻したのと俺たちに何の関係があるんだろうか?正直、なんも・・・って、まさかこの人・・・・・・



「ええ、貴方達と一緒に行けば案内をしてたとか何かと誤魔化して遅刻した件を有耶無耶にできるのではないかと思ったのよ」


「やっぱりだ・・・」



っていうかこの人、俺たちが入る前からこの店に居たんじゃないのか!?頑張ればまだ間に合ったんじゃないのか!それにまたしても名案でしょう?みたいな得意げな顔をしないで欲しい!こっちは招待されてる側だしそもそも誘われたのは市川さんと夢さんだから俺はなんも言えないけど凄い自信だ!主催者側の立場だから断られないだろうって顔してるけどそれにしたって凄い面の皮だ!!



「汗を掻くのが嫌なのよ」


「ナチュラルに心読まんで下さい・・・」


「声に出てたわよ貴方」


「そ、そんな全然構わないですよ!」


「そうですよー!それとそんな事しなくても許してくれますって!私も一緒にごめんなさいしますから!!」


「もう遅刻はするなって何回怒られたことか・・・もう諦めてここでご飯を食べてて良かったわ、これも神の加護というやつね、流石私」


「すまん遅刻した!いやー朝は如何にも弱くってな・・・まぁこれが俺のチャームポイントだとでも思ってくれ!あのそれと、ほら!目覚ましのアプリが消し飛んでて、これも神の呪いというやつなんだ許してくれ・・・・・・って、あれ?」


「チャームポイント・・・・・・成程。凄く素敵な言葉よね、わかるわ」


「ああ・・・ここにも遅刻した奴がいたんだった・・・」



バタン!と騒々しく喫茶店に転がり込んで俺達に言い訳をする颯の姿とそれに何故かしきりに首を頷かせる新崎さんを目にしながらそう俺は力なく呟くのだった。







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