第8話
腕には黒く浮き上がった線が出ているのは感情の発露か。
心なしか怒り狂っている様に俺の腕を這っている様に感じる、俺はここまで怒っていたのだろうか?
まぁそれはともかく目の前の裏切り者を処罰せよと振り抜いた後に残ったのはふらふらとしているクソ野郎の姿。
「ぐおおぉ、何しやがるボケェ!」
「それはこっちの台詞だ!どんな手を使いやがった!!なろうか!なろう(動詞)したんだな!この俺を置いて!俺以外の奴と!!」
「何を言ってるんだお前!?」
「あはは、仲良いんだね?」
体から力が抜けてるんだけど、ちょっとなにこれ?お前どんだけ力込めたの?という声が聞こえるがガン無視で取り敢えず置いてけぼりにしてしまったロリ巨乳さんに話しかける。
「初めまして、東 颯です。よろしく」
「会うのは初めてだね、
「さくら?・・・会うのは・・・?・・・あ!アンタもしや――」
「おっと!ってアイタタ・・・そこから先は俺が改めて説明しよう!」
「・・・お前、俺のノート勝手に貸してたろ!それもこの前のテスト期間の時に!!どーりで名前を聞いた事は・・・っつーか見た事はあると!」
どおりで帰って来たノートの端っこにありがと!by桜&夢!って書いてあった訳だ!春樹がテストで追い詰められすぎて頭おかしくなったと思って速攻で消したけど。
妙に丸文字だったからやけに手が込んでてきっしょって思ってたわ。
「俺が説明するっていったのに・・・勘が鋭いな、流石!いやー悪い悪い!彼女、大学も休みがちらしくてさ、お前のノート教室に忘れた時に見られちまって是非貸して欲しいって・・・ノートのコピーまでだから許せよ」
「一言ぐらい言っとけアホ」
「だーからわりぃーって」
「ほんとーっに助かったよ!私と後・・・」
「ちょっと!桜!まってって!」
「あ!夢ちゃん!!」
人ごみをかき分けてきた比較的身長が低い市川さんと違い、俺ら男子集には劣るもののそこそこに背はあるせいで遅れて来た女性は緩くカールをかけたポニーテールではない茶髪の髪を腰まで下げた長髪の麗人と言えばいいのだろうか。
可愛らしさよりの市川さんと綺麗系の夢ちゃんさんなる人らしくすっきりとした目鼻立ちに凛とした佇まいの大和撫子の様な印象を受ける美人さんがいた。
成程、奇跡。
俺はうん、と頷くとこれまた豊かな山の恵みを二つ程視界にいれ、またうんと頷いた。
成程、奇跡。
「紹介するね!私の友達で相棒の皆原 夢ちゃんだよ!今日はね、テストのお礼を言いに来たんだ!!」
「ふぅ・・・紹介も何も貴方は今日東君とはあったばかりでしょうに・・・さて初めまして皆原 夢です。よろしくね?」
「あーっと!邪魔になるとアレだし、丁度昼だし飯食いながら話さないか?テスト後の授業だからあんま今日授業ないし」
「はいはーい!さんせー!!」
「そうゆう事なら、喜んで」
「そだな、どっか適当なとこ行くか」
そういう訳で俺達は周りの視線を浴びながら学校近くの比較的手ごろなファミレスに移動し、飯を食いながら今回の事について改めて話をする事になった。
「んじゃあ、まずはテストお疲れ様でした!あーん、ど!赤点なしおめでとーー!!助かったよー!!」
「ええ、対策問題って書いてあった殆どが出るなんてちょっと吃驚したわ、私」
「そーそー!!やっぱ勘がいいよな!お前!」
「ええ!?あんなの勘じゃないよー!!東君のノート凄い見やすいし分かりやすいし見た時はわたし、てんさいかー!って思ったもん」
「いやいや、いちかわさん。そりゃない、だってこいつバカだもん」
「・・・ちょっと、幾らなんでもそれは嫉妬が見苦しいわよ?篠原君」
「・・・今回に限り誠に癪だが
そういうと二人は揃って疑問の言葉を口にした。
既にファミレスでドリンクバーを頼んだ後、思い思いの飲み物を手元に持ってきた状態で始まったこの集まり、どうやら俺のノートで辛いテストを乗り切った祝いの場みたいだが、話の流れで俺が天才の扱いを受けるのはどうにも納得がいかなかったので声をあげた。
というか天才だったならこんな大学には来ていない、もっといい大学に行っている。
「え!?で、でもあんなに・・・」
「そ、そうよ!幾ら勘って言ってもあんなに全部の教科で問題が当たる訳ないわ!」
「あーー・・・なんつーっかなー。分かってるんじゃなくて授業を受けると知ってたって感覚になる時があって・・・それで、こういう問題もテストででるなって思った所がでるんだ、ま。勘であってると思う。つーかそーじゃなきゃ俺も分からんし・・・ノートの纏めについては俺自身が出来が良くないからな、俺にも分かる様にまとめると自然とそうなるだけだ」
「わーいつ聞いても俺は天才です発言にしか聞こえないわーこういうとこバカだよなー」
「お前ここの会計奢りな」
ひっでぇ!という声を無視して店員に昼飯としてビーフシチューオムライスを注文する。
勿論その後伝票は春樹の近くにワザと置く。
言い訳は聞かん、ノートの罰だとでも思え、後自分で自分をバカというのはいいが他人に言われるとムカつく。
「それでも!助かったのは事実だし、お礼を言わせて!ありがと!こういっちゃなんだけど篠原君がノートを忘れてくれてかなり助かったよ!・・・あ!店員さーん私この季節限定パスタ!」
「あ、私もおな・・・や、やっぱりビーフシチューオムライスでおねがいしまひゅ・・・っううん!・・・私からもお礼を。今回はちょっと事情があってあの眼鏡のテスト、落としたら不味かったから」
あ、噛んだ、かわいい。
「へぇ~けど、二人共そんなにヤバいの?いっつも赤点で補修とか?そんな噂聞いたこと無いしお二人と一緒なら、クラスの馬鹿どもが揃って全教科赤点にして補修を受けにいく筈だから違うと思うんだけど・・・?」
「な、なんなのその推測は・・・?」
「えーとね、私達・・・冒険者やってるんだ」
「え?」
「は?」
俺と春樹は二人して顔を見合わせそして・・・
「「えええぇぇぇ」」
そんな間の抜けた声をだした。
何故そんな声を出したか、答えは単純で俺は冒険者、それもレベルが上がらないハードモード。
必然的に俺が愚痴る冒険者の話は聞いててスカッとしないドロドロとした苦労話ばかりである。
ソレを聞かされているのが春樹であり、要するに・・・
((に、似合わねぇ・・・))
と、そんなのが俺達の感想であった。
するとそんな俺達の微妙なリアクションを、話を信じていないものだと思った市川さんが、頬を膨らませながら鞄を漁り、ある雑誌を取り出した。
「むっー!信じてないでしょ!二人共!一応期待の新人として雑誌にも載ったんだからね!ホラ!」
雑誌
「おお!すっげぇ!」
「すごい・・・が、これいつも持ち歩いているのか?」
「えへへ、自慢したくって。友達にしか見せてないけど・・・」
「きゃあああああ!ちょっと!サク!アンタまだそれ持ち歩いてたの!いい加減よしなさいってば!コラ!」
「あ、ちょ、俺まだ見てなかったのに!」
春樹が雑誌を手に取り読んでいる最中に奪われたので俺が拝見する事は叶わず。
皆原さんが取り上げてしまったその雑誌にちらりと見えたその写真は、何処かで見たような眼が隠れる程前髪を伸ばした女の子が見えたが、何せ一瞬の事だったので良く分からなかった、それに皆原さんが手で押さえていたのがそのページだったので、良く見せてもらおうと頼むと・・・顔を真っ赤にしながらダメと言われてしまった。(かわいい)(これでポニーテールならば)
「ごほん!これでまぁ私達が冒険者だと信じた所で!」
「おれまだみてn・・・」
「し!ん!じ!た!ところで!」
「・・・はい」
「冒険者で活動してて中々テスト対策が出来なくて・・・でもでもすっごくノートのお陰で助かったのでお礼やお疲れ様会や友達になれた記念や諸々含めて!
・・・ダンジョンに!みんなで!お花見に!行きませんか!!」
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