第4話
サポセンの管轄は政府関係ではない、どちらかというと宗教の位置づけだ。
日本でいうと神社、外国でいうならば教会といった感じが一番近いだろうか、冒険者にとっては、【ジョブ】の為必ず利用すると言ってもよいだろう。
正式名称は忘れたがサポートセンターを略してサポセンって殆どの人は呼んでる・・・と思う。
まぁ、冒険者にとってはほぼ【ジョブ】や【レベルアップ更新】なんかの神秘関係の役所で、一般の人からすれば神様関係の駆け込み寺、といった所だろう。
サポートセンターなんて呼ばれてるのも特定の神様を贔屓にする訳にはいかないからだろうか?そんな事を考える。
けどあそこ金取るんだよなぁ・・・お布施て、いや、分かるけどさ。
だがしかし、それでも俺は利用しなくてはならない、レベルが上がらないというデメリットを抱えている俺が唯一普通に強くなれるしお金稼ぎにも繋がる道だからだ。
レベルが上がらないから強くなれないし、稼いでいる訳でもない。冒険者どころかくずれとも言えるド三流。所謂なんちゃって冒険者である自分は、冒険をせず探索のみの毎日。
それ故に対モンスター経験も余りなく、あっても殆どがアイテム頼り、それも才能の関係上常に紛失する可能性がある。
武器なんぞはその最たるもので、使いつぶしもいい所。
そんな訳で戦士系統である【ファイター】や【サムライ】や【モンク】も無理。
されど魔導士系統である【ウィザード】適正なるものは自分には存在せず、魔法の力を使おうものなら発動まで10分は掛かる、そんな代物がダンジョンで役に立つはずもなく、漏れなく選んだものは盗賊系統のジョブである【シーフ】これはダンジョン内での索敵や罠の解除、パーティーに必須な人材、また、素早い身のこなしであるシーフ自身の能力もパーティーの力を借りてこそ発揮する訳である。
だが悲しいかな俺は呪いの関係上ダンジョンでのモンスターのドロップ品を壊す事がある為、パーティには入れない、やっぱりドロップ壊す奴は論外であろう。
は?素手?お前それダンジョンでモンスター相手に同じこと言えんの?
魔法を纏わせたりできないか?って?それ、ウィザードやモンク系の派生ジョブなんですよ。
今の自分を変える、変質や変容——自分にプラスになる事やマイナスになる事がなかった。
どんな補助魔法でもステータスは変化しないし、レベルも上がらない、唯一できるのは技術を伴う【ジョブ】の力だけ。
【ジョブ】も色々なジョブがあるが生産系のジョブを除き、戦闘関係では初期のジョブは誰しもが同じだろう四つから選ぶ。
なにせ最初は【ファイター】【ウィザード】【シーフ】【モンク】の中から選ばれる、武器を持つ奴は大体ファイターで魔法使う奴はウィザードで補助出来る奴がシーフで回復や素手だったりする奴がモンク、そんな感じで自分にあったジョブ系統を選びそっから派生させていく。
そして大抵何個も【ジョブ】を持ち続ける事は出来ない。これは才能限界みたいなもんだって説が出ているがこれも詳しい事はさだかではないけど。
一つの系統を伸ばして派生させていくのが普通だし無難だろう。
・・・俺は厳密に言えば呪いで【ジョブ】も弾く筈だと思っていたのだがどうも自らにある可能性を引き出す力、また方向性を指し示す力でもある為、弾かれなかったんじゃあないかなって思ってる。
まぁ、そのお陰でサブ職業なら6つ程取得しているが、驚くべき事に才能限界に達した事が無い為、サポセンの資格試験に受かり次第サブ職業を取得している、通常なら1つ2つ程で埋まる・・・ので俺の唯一と言っていい誇れる所であるのがこのサブの多さである。
その分メイン以外が中々育たないんだが、まぁ出来る事が増えるのはいいことだ。
神使さんのお墨付きで、数だけで言えば二桁は取れるのでは?といわれたと思えば凄さが分かるだろうか、レベル?知らんな。
その中で今回受けに来たのは——っと。
思考を引き戻すのは漸く辿り着いたサポセン、その敷居である。
何処となく厳かな場所であるのを本能的に感じ取る、種としての絶対的上位者への感覚。
・・・神様に対して馬鹿な事を働く奴はいない、そう何時も神様のいる場所にくると思う。
今日は、ウィザード系統のジョブ試験はない、か、じゃあ―――。
「受講は【錬金術】レベル15、【シーフ】レベル10で宜しいでしょうか?」
「はい」
「こちら【錬金術】レベル3飛ばしでの受講になりますので、お気をつけて………では合計で、五万円の寄付になりまーす♪」
「・・・はい」
ホンッとこれさえなければなーーー。
いや、分かる、分かるよ、無料じゃやれないけどってのは分かるよ!
けど、神様、いや、うん、これ以上は何も言うまい、ましてや俺の生命線ともいえるこのサポセンでの【ジョブ】これがあるから辛うじて冒険者くずれでいれる俺はただ黙々と祈るのみである。
祈りは勿論、合格祈願で。
「・・・この場では一切の不正を行う事は禁じられておりますので、努々お忘れなきようお願いします、カンニング行為なんてもっての外!・・・別に貴方がたがそうだって言っているわけではありませんので勘違いしないで下さいね?何かと低レベルの内は、そう言った神秘への理解が薄いので、警告を行わせてもらうのです」
「・・・それでは、錬金術科のレベル15用筆記試験、始め!」
~テスト中~筆記は簡単だったし、前回とほぼ同じだったな・・・
「・・・はい、それでは筆記試験を終わります」
「続いて実技の試験です」
「・・・う、す」
ち、ちかれた~
「・・・休憩後、実技へとうつりますので20分後、多目的錬金術科の工房へと移動して下さいね、では・・・・・・・・」
あの神使さん、いっつも俺は試験の時みかけるけど、錬金術科の人って、足りてねぇのかなぁ、等という事を試験後の薄ぼんやりとした頭で考えてみる。
・・・が、次の実技の試験の事ですぐに頭の中を埋め尽くされる、熱心な奴なんかは手先を今から温めている奴もいる。
・・・俺も、一度落ちてしまったし、気を付けなくてはならないな、試験内容が同じなら儲けだが、これは試験の度に変わる事もあるから前回の経験が生かされるかどうかも分からんのがなぁ・・・
「それでは今回は、マリシュ草の再生成分のみの摘出とゴームレット鳥の分解による鉄の含有量の80%越えを試験とさせていただきます」
「試験時間は50分、それでは、始め!」
「・・・うげぇ・・・・・・・・・」
よ、よりにもよって前回クリアしたマイマイリート虫の粘液の再生成分の抽出の部分がマリシュ草に変わっててゴームレットがそのままかよぉ・・・と露骨に顔が歪んでしまう。もしかすると試験中なのに声がでていたかもしれない、でてたわ。
とはいえ、嘆いても何も変わらんし、さっさと始めるか。
先ずは、道具の選別と資料作成、それから手順の確認書とそれぞれの量の計算を始めなくては・・・
「・・・うっし、やっぱこの虫の方の粘液も大体はマリシュ草の手順と同じか、反応する薬品も同じだし、後は虫の粘液の粘度を無くすように手間を加えるのが無くなった分楽だな、良し、こっちは煮ればいいから簡単だな、おし、後はゴームレットだが、どうっすか・・・前回は解体しながらそれぞれを区分けして丁寧にやってたから時間もなくなって焦ってああなったけど・・・あ、そっか、別にゴームレットに鉄と反応する金属とかないし、単純に魔力炉にくべずとも・・・」
「・・・終わりました」
「え、早っ」
思わず、呟いてしまった。
そこにいたのは、まるでクリームみたいに真っ白な髪を腰まで伸ばした真っ赤な眼をした女の子。
アルビノ?というのが頭に浮かぶが、この現代に至っては、全く頼りにならない。
単にそういう容姿なのだろうが、どうしてだろうか、やはり雰囲気もあるのだろう、ウサギの様だな、と思った。
「はい、合格ですね、道具類はあちらにかたずけて置いて下さい、後で係りのものが洗いますので」
「・・・ん」
(・・・あぁ、天才ってやつか)
・・・そう思うのは仕方ないだろう。何せこの時間に終わらせたという事は、多分、感覚で調合や彫金を行えてしまう奴だ、考えずとも自ずと手が動いて自然と最適解が分かるようなそんな傑物。
その証拠に、不目のカーテンの魔術が、試験監督により解かれると、その辺りには紙らしきものどころか秤すら存在しない。
関わりは持つことはないだろうと思って、試験に集中する。
「うわぁ~どろっどろ」
結局ゴームレットそのものを溶かし込む事にしたが、そこから余計なものを取り除く為に取り敢えず鉄だけ取り出そうとしてみたり試行錯誤してどうにか作った今回のシロモノ。
魔力素が鉄なだけあって加工するのが大変だった・・・
「ん~83%、はい、合格ですね」
「うっし!ありがとうございました!」
「因みに固形化の場合は75%で液状は80%でしたのでギリギリですね、これからも頑張ってください」
「うっ!・・・ふぁい・・・・・・・・・」
少し気落ちしながら自分の場所へと戻る。
そうするとまだ工房には何名か残っているのだろう、未だにカーテンがかかっているので、音を抑えて道具を片付ける。
にしても無事に受かれて良かった、後は神様に報告して祝福を受けて更新して、錬金術の方は終了かな。
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