第2話
風呂に入ってさっぱりとした後、冷蔵庫からジュースを取り出し火照った体を冷やす。
炭酸が喉を通る際の特有の弾ける感覚がとても気持ち良く半分以上ペットボトルを空にしてソファにどっかりと腰を下ろす。
ダンジョンで体を動かした後の風呂と一杯は親父臭い感覚になるがとても良いものだと思う。
少しそのまま余韻に浸りながら座っているとやはり次は腹がすいたとばかりに腹がなる、だが疲れたので正直今日は飯を作りたくない。
なのでギルドで売っているダンジョンのモンスターの肉等を加工したりして簡単な冒険者用の弁当をかってあったと思い冷蔵庫を開きポグバードと呼ばれる低級の階層、草原のダンジョン等に良く出没するモンスターのから揚げ弁当を食べ始める。
食べると一度電子レンジに入れたにも関わらずジューシーな肉味が広がる。
出来立てには敵わないが、空腹が一番のスパイスとはよく言ったもので瞬く間に完食すると、明日の予定について思考する。
「んー・・・明日は大学もねぇし、ギルドの方に寄んねぇといけねぇし、ダンジョンで採ったもん、換金したり、クエストの納品しねぇと・・・」
「そんためにゃ・・・」
空間倉庫バッグ…なんて言う倉庫と繋がったバッグでアイテム整理…!なんていかないのが辛い所、ドロップものは10億越えは安い方、人造品は二千万から、なんていうブルジョワジーな代物はもっている訳もなく。
全く持って普通の緑色の所々薄汚れてくたびれたバッグを背中から下し、中の鉱石を仕分け、宝石等は綺麗に磨いたり、加工したり、魔力を込めてマジックアイテム化したり、クエスト納品依頼書をスマホでページを表示させながら期限とどれが達成できるかを見ながらギルドへ行く時用の準備を始める。
ただ採って来たものをそのままギルドに持っていくよりは、付加価値を付けた方がいいだろうという思いから魔石や鉱石は加工しやすい形に磨いたり、削ったりする。
この魔石や鉱石の削った後の粉末も、錬金術で使う有効な素材になるので捨てずに小瓶に分けて取っておく、貧乏性というなかれ日々の積み重ねこそが大事なのである。
魔石と呼ばれる神秘の力が集まった結晶、モンスターからも取れる事があるソレは概念を込めれるエネルギーの器、とでも言えばいいのだろうか。
まぁ概念を込める、という作業がこれまた難しいモノで例えるならプログラムを作るという作業が概念を込める作業で本体のメモリが魔石、パソコンが魔方陣みたいなものだろうか。
良くSNSなどで足元見られたとかフリーの魔導士さんが愚痴ってるのを見かける。
そうしてジョブ——【錬金術】の効果である成功率上昇(微)を使いつつ錬金術セット(定価二万)で今回の洞窟で採れた薬草を煮ている隙に道具の整備も行う、特に準備はバッグに穴が空いてないか確認する。
魔物避けのお香が、もうないのと——あ、香草、明日、直売所に出てるか見ないとなんて声に出して気付く、メモに記した後、再び、確認、小爆発の魔石、三つ、オーケー、閃光魔石、二つ——だからストックは―――あ、あったあった。
えーと、あと、っと?わいたっぽいので薬草を取り除き、原液をそれぞれ前に作り置きしておいた調合液に加えて――—―――――・・・・・・・・
そうして錬金作業をしている際にふと時計を見るともう二時間が過ぎているのに気づく。
「・・・あーもうこんなんかー時間かかったなー、【錬金術】レベルがまだ試験で12しかいってないしなー。」
「筆記はなんとかなんだけど、やっぱり実技で落ちるからなー。」
ジョブレベルに関しては、月に1度は神様が経営している冒険者の総合サポートセンターの、良く初心者はギルドで行われていると勘違いするが、こっちは仮にも神様経営。
ジョブという自分の適性を顕し発現し、自覚させる祝福を授ける場であるらしく、冒険者サポートセンター通称、サポセンは神社寄りつまりは宗教側に位置するらしく、ここでの利益————寄付は神様の為に使われるらしい。
ギルドが政府側の冒険者互助組合連合(公式)とかいうくっそめんどい名前だった気がする、うん、皆ギルドってよんでるし、ギルドっぽいし、それでいいと思うし、気にしない。
まぁ、ようするに神様の祝福を受ける事でジョブという自分の才能を引き出す事が出来るらしい、そして無償というわけにはいかないようで試験費(試験費()はレベルごとに違いだんだん上がっていく)は支払う、基本的に月に一度神様がいる日ではないと試験が受けられない事もあり、中々難しい事もある。
その代わり、レベルが上がるとそれに応じて出来る事も増えていける様になる、現に今俺がつかっている【錬金術】の付与魔法も、ジョブレベルを上げると使える様になった。
「明日はギルドかー、後久しぶりにサポセンに向かってみるかな?【錬金術】の方はペーパー不安だからまだ不安だが、【盗賊】と【曲芸師】の方は実技だけのテストだったはずだし、うん、むかってみっかなー。」
・・・薬草の見分け方とかは兎も角、調合の配分の為のパーセント計算とか、んなもん調合書とか見ればいいからペーパーテストはいらねぇよ…って考えだから受からんのか、そうですか。
・・・【盗賊】と【曲芸師】は、受付の日だったら、やる事にしよう。
――――――――――・・・そうして今度は足りない道具の錬金や付与魔法による使用回数が減っていた道具への再度かけ直しや足りないジョブ試験用の勉強をしていると気が付けば、辺りには薄く蒼い光が広がってきていた、部屋の閉め忘れていた窓からは、もはや、寝るにしても遅い時間だという事を知らせてくる。
やや、頭がハイになっているのか、それとも集中力が流石に切れてしまっていたのか、ダンジョン帰りでその後一夜漬け、というのはどうにも憚られる時間、そんな中途半端な時間になって、ようやっとギルドとサポセン用の準備が整い、ダンジョンの器具の整備も終わった。
メモには納品する物品の名称や、足りない道具や欠けた素材の名称が記されている。
それらを横目に目覚ましのアプリを起動し、恐らく自分は昼まで起きないだろうしどうせサポセンは昼からでも十分間に合うと時間を正午に設定し、乱雑にベッドへと疲れ切った体を投げ出すと、体中から染み渡る様な快感、抗いがたい睡魔に身を任せ心地よい眠りに付く。
日々の疲れがこれで全て抜け落ちてしまうようだと思うのは、余りにも単純だろうか?
そんな勿体もない事を考えるとそのまま目を閉じ、意識を深く沈めていった。
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