実録!ベースキャンプ


 フレンズのみなさん、こんにちは。私の名前は、外口円香そとぐちまどかと言います。この、ベースキャンプと呼ばれる、パークのあちこちにある管理施設のうちの一つで、私は、相談員というお仕事をしています。

私のお仕事についてのお話はひとまず置いておいて、今日はこれから、このベースキャンプという場所がどんな場所なのか、フレンズの皆さんにご紹介します。



 さて、入り口から中に入るとまずこのように、カウンターと待合用の椅子があります。ここは相談窓口です。フレンズの皆さんが、私達に、何か自分の生活について困ったことや、聞きたいことがあった時に来てもらう場所です。私は普段ここで、フレンズの皆さんのお話を聞くお仕事をしています。

窓口の横にある、関係者用のドアを開けると、オフィスがあります。ここは、特育課オフィス、つまり、フレンズの皆さんのお世話をする職員さん達のお部屋です。職員さん達は、ここに来た後、フレンズの皆さんの元へ向かいます。え?その割にはちらほら人がいるじゃないかって?

実は私達のお仕事は、皆さんのお世話をしたりお勉強を教えたりするだけじゃありません。皆さんが暮らしている、保護区と言う場所の安全を守る為の見回りや調査を、交代でしていて、その結果を、こうしてここでまとめています。お世話をするフレンズがいない期間の人も、同じようにしています。もし、保護区の中に職員さんがいるのを見かけたら、是非、声をかけてみてください。私達も、フレンズの皆さんの事をもっと知るために、色々なお話が出来るのを楽しみにしています。それでもし、私達のことをもっと知りたくなったら、是非、ベースキャンプに来てみてくださいね。

そうだ、せっかくだから誰かに話を聞いてみましょうか。あ、磯原さん。


「あら円香ちゃん、どうしたのビデオカメラなんか回して」


今度、保護区内で、ベースキャンプに行ってみたいけど、どんな場所がよくわからないっていうフレンズの皆さんに、説明会をしてくれないかって。小嶋さんが前に担当してた子が、私に相談に来たんですよ。それで、その為の紹介用のビデオを撮ってるんです。良かったら何かお話聞かせてもらってもいいですか?


「話?いくらでもあるわよ。カゲロウくんったらこの間の旅行であんな騒ぎ起こしてきたなんて聞いた時はもう呆れてモノが言えなかったわねぇ。まだ若いとはいえそろそろ良い歳なんだからもう少し大人らしくなってもらいたいもんだわ。辰巳くんが先生だった影響もあるでしょうけどねぇ。まぁ何にせよ和ちゃんが一緒でよかったわよね、あの子はしっかりしてるし頭も良いし。いいお嫁さんになると思うわ」


あ、あの、磯原さん。その、私達の内輪の話をされても、フレンズの皆さんさっぱりだと思うのでもう少しこう、別の話題を……


「え?ちょっと、私に話聞かせてって言ったのは円香ちゃんじゃないの」


そ、それは確かにそうなんですけど。もうちょっとこう、私達の仕事とか、この場所とかについて、フレンズの皆さんに紹介する感じでお願いしたいなー、と……


「その紹介の為のビデオを撮ってるんでしょ?だったら円香ちゃんが自分で話せばいいじゃないの。私ねぇ、あんまりそう言うの得意じゃないのよ、喋るのは好きだけどね」


そ、そうですね、失礼しました。

あ、ご紹介しておきます。この人はうちのベースでもベテランの磯原さんです。フレンズの皆さんにも、色んな面白いお話をそれはもう本当に沢山してくれると思いますよ。


「お、外口くん。例の撮影かね」


あ、室長。そうなんですよ、是非室長にもお話いただけませんか?


「勿論だよ。フレンズの為に出来ることをするのが、我々の仕事だからね」


ありがとうございます。あ、こちらの方は、私達のオフィスの室長でいらっしゃいます、権田原ごんだわらさんです。フレンズの皆さんにもわかりやすく説明しますと、このオフィスにいる職員さん達を一つの群れとした場合、室長はその群れの長、リーダー、ボスと言ったところですね。


「大袈裟だよ。さて、何を話したらいいのかな」


うーん、そうですね。室長にとって、このベースキャンプという場所はどんな場所ですか?


「ここかね?うーん、そうだね。いつも活気に溢れていて、笑顔が絶えない。みんな、自然と動物と、フレンズと触れ合うことを、心から楽しんでいて、それを分かち合っている。だから、とっても暖かくて、居心地の良い場所だね。毎日、来るのが楽しみだよ」


それも、室長がいてこそですよ。


「いや、私はただ自分のやりたいようにしているだけだよ。それについて来てくれる君達がいるおかげで、このベースは作られているようなものだよ」


ありがとうございます。


「次は何処を撮るのかな?」


あ、はい。次は医務室に行こうかと思います。


「そうか。そう言えば和くんが、これから診察の予定があると言っていたな。彼女だけでなく、その患者のフレンズにも話が聞けるかもしれないよ」


いいですね。そうします。では、失礼します。



 ……というわけで、権田原室長と磯原さんのお話でした。さぁ、次は二階に上がりましょう。二階に上がってすぐのところには……


「やめろ!離せ!この程度、私ならば気合で治せる!施しを受けねばならんというのは弱い証拠だ!!」

「強くたって病気になる時はなるし、病気にならないための予防を怠ったらそうなるんだっての!」

「今はもう治療するしかないんですから大人しくしててください!」

「怖がらなくても大丈夫だから」

「私のことを誰だと思っている!怖がってなどいない!」

「はいはい、じゃあ大人しくしててね」

「グオアアアアア!!!!???」


な、なんか、丁度診察中のようですけど、何が起きてるんでしょうか。行ってみましょう。……失礼しまーす。


「あが、アガァァァッ!」

「ぬおおおお……!!小嶋さん……!もっとがっちり抑えててくださいよ……!!」

「これでも精一杯抑えてますよ……!彼女のパワーが尋常じゃないんですっ……!!」

「……はい、終わり。ほら、痛くなかったでしょ?」

「ぁ、お……?ふ、ふん!当然だ!この程度で音を上げるようではオオカミの名折れだ!」


あれ、小嶋さんと辰巳たつみさんじゃないですか。何してるんですか?


「あら、円香ちゃん」

「何って、コイツを抑えてたんだよ……」


コイツ……?って、誰かと思ったら、ダイアウルフさんじゃないですか。


「おお、マドカじゃないか。何をしているんだ?」


ああ、その、取材の途中でここに寄ったんですけど。

あの、和さん、室長が言ってましたけど、今日診察の予定だったフレンズさんってもしかして……


「そう、この子」


一体何があったんですか?凄い騒ぎでしたけど……


「別に大した事じゃないよ。ただの虫歯」

「何と戦うつもりなのか知らんけど、修行やら鍛錬やらに明け暮れて、気が済んだらジャパリまん大量に食って、そのまま次の日に備えて寝るってのを何日も繰り返してたんだとよ。歯も磨かずにな」


ああ……なるほど。歯医者さんって怖いですよね、私にもよく分かりますよ。


「怖がってなどいない!」

「だから怖くないなら大人しくしててくださいよ。あなたの事抑えるの、大変なんですから」

「お前達も私の担当ならばいい加減もっと鍛えたらどうだ?」

「んなことしてるうちにあんた卒検受けられずに終わっちまうよ!」


……えー、っと。何やら賑やかですが、ご紹介しますね。こちらのダイアウルフさんと一緒にいるのは、一係の飼育員さんの辰巳さんと、それから、三係の飼育員さんの小嶋さんです。今は二人で、このダイアウルフさんのお世話を担当しています。それと、奥にいるのが、医務員の千石和さんです。


「あれっ、外口さん、もしかして今撮ってるそれ、この前、僕の担当した子から話があったっていう……」


あ、はい。そうです。


「参ったなぁ……どうせ紹介されるならもう少しいい所を見せたかったですね……」


はは……、フレンズの皆さんにここを紹介するなら、わかりやすくシンプルに、ありのままを伝えた方がいいかなー、と思ったので……なんかすみません。


「いや、外口さんは悪くないから……」

「おいマドカ、今お前が撮っているのは、他の奴らにこの場所について紹介するためのものなのか?」


あ、はい。そうです。良かったらダイアウルフさんからも何かお話聞かせてもらってもいいですか?


「任せろ!おい、このベース近辺に暮らすフレンズ達よ!強く生きる為には、日々の修行と鍛錬が必要不可欠だ!だが!力に自信のない者もいる事だろう!それでも心配は無用だ!何かあったら、ここにいるこのナゴミという医者がすぐに診て治してくれる!安心して暮らすといい!」

「でも、怪我や病気は、ないのが一番です。もし何か自分の体の事で何か変だなとか、気になることがあったら、酷くなる前に、私のところへ来てくださいね」

「だそうだ!」


ありがとうございます。凄い。私が説明しなくても医務室のことが全部わかっちゃいましたね。というわけで皆さん、もしも自分の身体のことで変に感じることがあったら、ここに来てみてください。と言うわけで、お邪魔しました。


「ああ、あの、外口さん、そのビデオ、編集は……」


さてと、次はこちら。面談室です。私のような相談員や、飼育員さんとじっくりお話をしたいときに使うお部屋です。今は……あら、使用中ですね。誰かいるのかな?ちょっとだけお邪魔してみましょう。……失礼しまーす。


「はい、どうぞー。……お、円香ちゃん。どうしたの」


あ、橋本さん。お疲れ様です。そちらにいるのは……


「あ、ど、どうも、マドカさん」


アードウルフさんじゃないですか。


「丁度いいや。円香ちゃんもちょっと知恵貸してくれない?」


あー……、すみません、後でもいいですか?このビデオ撮り終わった後で。


「ああ、全然、その後でいいよ」


すみません、入って来たのはこっちなのに。


「いいよいいよ。相談室で相談してる光景撮ってそれ見せちゃうのはまずいもんな。とりあえずぐるっとこの部屋の中映しちゃってさ」


あ、はい。……えー、っと、そう言う訳で、ここが相談室です。机と椅子があって、本棚に、相談内容に応じて参考にするための色んな資料とか置いてあります。内緒で私たちにしたい相談話がある時とかは、このお部屋を使ってくださいね。では、お邪魔しました。

さて、この相談室は同時に複数使えるように、この階の廊下には相談室が何個か並んでいます。で、この奥に行くと……図書室があります。

……ちょっと静かな声でお話しましょう。ここではフレンズの皆さんが勉強をしたりするための参考書など、いろんな本が置いてあります。でも、本を読むためには文字が読めなくちゃいけません。なので、もし、皆さんがここにある本を読んでみたいと思ったら、職員さんや文字を読める他のフレンズさんにお願いして、文字の読み方を教えて貰ってくださいね。

あ、丁度今、文字の勉強をしているフレンズさんがいますね。


「……うんうん、よし。二人とも全問正解だ。よくやったな」

「ゼンモンセイカイ」

「ワレワレ、エラい?」

「ああ、偉いぞ」


あ、アレはカゲロウさんと、カタカケフウチョウさんとカンザシフウチョウさんですね。


「コレで、ワレワレもイッパイ、ホンをヨめるのか?」

「いーや、おめーらに教えた漢字はまだほんの一部の簡単なやつだからな。漢字は平仮名とか片仮名とは比べ物にならねえくらい一杯あるんだ」

「もっとオシえてホしい」

「うん、もっとシりたい」

「おいおい、もう二時間はぶっ通しで漢字の勉強してるぞ。そろそろ一回、頭休めねーか?甘いモンでも食って頭サッパリさせようぜ」

「それよりアイスコーヒー」

「サトウいり」

「マシマシ」

「甘いのには変わりねえじゃねえか」


お疲れ様です、カゲロウさん。


「おう、びっくりした。円香ちゃんいつからそこに」


ついさっきです。あ、すみません。事後報告になっちゃうんですけど、今の光景、撮らせてもらっちゃいました。


「マジ?まぁ、俺とコイツらのやりとりで良けりゃ全然いいけどさ。でもそんなん撮ってどうすんだ?」


ベースキャンプに来たことがないフレンズさん達に、ベースキャンプがどんな所かを紹介して欲しいってお願いをされて。そのための撮影です。


「なるほどね。おめーらもいいか?」

「つまりどうイうコトだ?」


えっとね、カタカケさんと、カンザシさんが、いつもカゲロウさんとどんな事をしてるのかって言う様子を、他のフレンズさん達に見せたいんだけど、いいかな?


「ミせたらどうなるんだ?」


うーん、そうする事で、私達ももっと色んなフレンズさん達とお友達になれるかもしれないし、二人にもお友達が増えるかもしれない、かな。


「そりゃいいな。そうだ、おめーらもっとフレンズの友達作ろうぜ」

「ゴンちゃんがいるぞ」

「そりゃあそうだけどさ。もっと色んな友達作って一緒に遊んだりできたら、今よりもっと楽しいと思うぞ。面白い奴が一杯いるんだ」


さっき丁度、相談室はアードウルフさんがいましたし、医務室にはダイアウルフさんがいましたよ。食事に行くんでしたら、あの二人も一緒に誘ってみたらいかがですか?


「マジか。じゃあそうするか。よし、行くぞおめーら」

「マドカもイッショにイこう」


えっ?私も?


「そうだな。せっかくだしそうするか」


あ、じゃあそれでしたらアードウルフさんと一緒にいた橋本さんと、ダイアウルフさんと一緒にいた小嶋さんと辰巳さん、和さんも一緒に。


「おいおい、随分と大所帯だな」


人数は多い方が、きっと楽しいし、美味しいですよ。


「それもそうだな。よし、行こう」


あ、じゃあ先行っててください。すぐ追いかけますので。

……と、言う訳で。こんな感じで、フレンズさんも職員さんも、みんな仲良く一緒にお話したり、お勉強したり、色んなことができる場所がベースキャンプです。これを見て、もしちょっとでも興味が沸いたら、是非一度、遊びに来てみてくださいね。それでは!












  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る