極✳︎楽?飼育員 -KEMONO FRIENDS-

Kishi

極✳︎楽?飼育員

#1 指令


 「君にしか頼めない仕事があるんだが、やってみる気はないか?」


新年度早々、上司からそう言葉をかけられたのは、ジャパリパークで飼育員として勤務して今年で4年目の、中堅の飼育員だ。名前は、白毛しらけカゲロウ。「シラケ」と言う苗字に反して、所属部署内でもムードメーカーとして人気のある、陽気な性格で、フレンズ達からも人気のある男だった。

フレンズと言うのは、このジャパリパークに生息している、特殊な生物の事だ。サンドスターと呼ばれる不思議な物質の力によって、人間の女の子のような姿を持つようになり、人間と同じ言葉を話すようになった動物の事を言う。彼女らは、総じて人間に対して友好的であるため、人類とは異なる種族ではあるものの、人類の新たな友達である、と言う意味も込めて、パークの中でも外でも、「フレンズ」と呼ばれることが定着したのだった。

ジャパリパークは動物園だ。フレンズの他に、当然、普通の動物たちもいて、動物たちの世話をする飼育員もいる。カゲロウを初めとする、フレンズ担当の飼育員の仕事は主に、フレンズ達に、ヒトの世界での生活や、ヒトとの接し方について教えることだ。基本的に、飼育員一人につき一人から二人までのフレンズの世話をする。飼育員とは言っても、ジャパリパークは動物園なので、わかりやすいようにそう呼んでいるだけで、実態は家庭教師や、ホストファミリーに近いものだった。


「俺にしか頼めない仕事?まーた、大げさな事言っちゃって」


彼の所属部署は、人間関係も極めて良好で、とても和やかな空気が漂っている。みんな、年齢差も、勤務歴の差もあまり気にせず、飼育員同士、共に働き支え合う仲間として働く。上司相手でも、気さくに接する。と言うのも、フレンズにとって親しみやすい飼育員を育てるためにと、こうしたやり方を推し進めているのが他ならぬこの上司であり、カゲロウもそれに従い、相手が上司である事を忘れないようにしつつも、軽いノリで接していた。


「いやいや、冗談じゃなく本当だよ。君はとてもよくやっている。これまで沢山のフレンズ達の面倒を見てもらってきたが、みんな、君に感謝をしているし、君の事を大切な友達として好いているようだ。それもひとえに、君の面倒見が良いのは勿論、君の持つ独特の雰囲気が、フレンズ達にとって親しみやすく、印象に残っているおかげだろう」

「やだなぁ褒め過ぎっすよォ。でもそこまで評価していただいたら、やらないわけにはいかないっすね。お話聞かせて貰っていいです?」


だが、彼は知らなかった。この時この仕事を引き受けたことが、後々とんでもない事態を引き起こすと言う事に。








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