第51話 超高空からの攻撃
危うく難を逃れた軍用ホバークラフト。
その会議室内で「反省会」が行われようとしていた。
「早速だが、撮った写真を見せてもらいたい。」
フィラデルフィア・フォトグラファーズの撮影担当3名の提出した写真を
スクリーンで見る、タスマニア・シーデビルス代表のフック船長。
「使えそうな写真は・・・無しだ。」
意気消沈するカメラクルーの3人。
インタビュー役のポール・ハンター代表は当初から落ち込んでいる。
「だが、我々はリベンジするつもりだ。君らも同じ気持ちだろう?」
と、フック船長。
レイザービルがいた部分だけでなく、メガフロートの半分以上が先ほどの爆発で
消滅していた。
海底に積み上げられてしまっている、メガフロートの残骸。
そこから発生し始めた気泡。 急激にその量が増えていく。
火山の噴煙のような大量の気泡が瓦礫を押し退けた。
さらに、銀色のハンマーが瓦礫を払い除ける。
そして、何事もなかったかのように海底の瓦礫の上に立つレイザービル。
「・・・今の、何だったんだ?」
・じんこうえいせいからのみさいる・
・しゅるいはとくていできた・
・こんどきたらうちおとす・
「どうやって?」
・いま かんがえちゅう・
「・・・・・・」
『海面に多数の気泡を確認しました。メガフロートのあった海域からして、R・B
が発生源でほぼ間違いないと思われます。』
対潜哨戒機からの報告だった。
「やはりそうか。ま、あの程度の攻撃でやられるはずは無い、と思っていたがな。」
「提督、あのインタビューを試みようとしたチームに・・・あんなオプションの攻撃
許可申請なんて、あったんですか?」
「いや、無かった。あれだと該当するチームはルールを無視した違反行為となる。」
北太平洋第七艦隊総司令ソロモンと、新兵器開発の側面も見せる大企業WO-PARTSのCEO、オブライエンとの会話は、ある閣議決定の内容を前提としたものだった。
それは・・・
《 新国連TEAM運営組織に加盟している全てのチームは、〝レイザービル〟の調査
及び討伐を無断で行ってはならない。 必ず、TEAM運営組織の企画したミッションに参加希望の応募、審査に合格したチームだけが活動が許可されるという形式のみ認められる。(中略) いわゆる〝秘密兵器〟の類は認められず、全ての武装及び攻撃方法は事前に告知が義務付けられている。 》
「そうなると、先ほどのチームは処罰の対象になってしまうんでしょうか?」
「今回の場合だが・・・どうやらお咎めは無いらしい。」
「それはまた、どうしてなんでしょうか?」
「なんでも、〝真犯人〟の目星が付いたんだそうだ。」
真っ暗な室内にテレビ画面だけが光っている。
海外版ニュース映像は、高空から海を映し出しているようだが、段々と
海面へズームアップしていくと・・・
波を切って進む、黒い二等辺三角形の物体。
その両脇に、透明でありながら漆黒の球の割合が多いドームの物体。
そして、画面右上に点滅する文字。 〝LIVE〟
「今さ、ニュース見てんだけどさぁ、フツーに泳いでいるよ?アイツ。
ひょっとして・・・失敗したんじゃない?」
『それでしたら、我々のドローンが撮影した証拠映像をご覧ください。』
だだっ広いメガフロートの上にポツンと、船が陸に乗りあがってしまっているような
軍用ホバークラフトの姿。 (最後まで音声無し)
↓
まるで、プールから上がってくる人のようにメガフロート上に立つレイザービル。
↓
数分間何も起きなかったように見えたが… 突然スカート部分が膨らみ、その場から離脱していく軍用ホバークラフト。
↓
その場に立っているレイザービル。 毛(ウニのトゲ)が逆立ってきている。
↓
画面上部にミサイルの噴出の光が見えた瞬間、眩い閃光。 そして、大爆発。
↓
火山の噴煙の真っ只中のような映像が数秒間続き、終了。
「・・・あのさぁ、ホバークラフト、慌てて逃げたふうに見えたんだけど・・・
まさか、事前に情報漏れていた・・・なんて事ないよね?」
『あり得ません。ミッションの内容はどのような通信手段も使わずに、直接口頭で
お伝えしたはずです。 衛星の件も当初からプログラムA Iですし・・・』
「ちょっと気になったんだけど・・・ ミサイル、ちゃんとヤツに命中した?
何か、当たる直前に爆発したような・・・そんな感じに見えたよ?」
『それに関しては、現在映像を解析中です。 いずれにせよ、レイザービルは遠距離射程の武装は存在していないのが判明していますし、まだチャンスはあります。
しかも、今度のミサイルは種類こそ対戦車用ですが、弾頭にファイアービーンズを四つ仕込んであり、さらに威力が増大しています。ですので、成功の暁には速やかなる
回収を・・・ひとつ、よろしくお願いいたします。 くれぐれも、艦隊に先を越されないようように・・・との事です。』
「とのことです・・・って、まさか?」
『はい、副主席の強いご意向です。』
「・・・了解した。」
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