第30話 反撃 (1)

「あれ・・・?」

失意したかのように床へ突っ伏している少女を目視で確認できた。

つまり、部屋が明るくなっていたのだった。

秀太は、とっさに少女を起こす行動を取る。

目を開けた少女はガバっと飛び起きると、目をひん剥いて周りを見渡した。

そして、PC端末の画面に目が行くと、そこには・・・

「???」 秀太にはそれが何を意味しているか全く理解できない。

だが、少女はそれを見て・・・

息を呑んだかのように口を手で覆い、涙目になった。

画面いっぱいに表示され、横スクロールしてゆく三桁の数字の羅列。

「もう、何が何だか・・・」の秀太だったが、とにかく重大な事が起きている。

そう思うほか無かった。


一向に埒が明かない状況に、とうとう削岩機の出番となった。

道路工事や砕石現場でよく聞かれる爆音。

ハッチがこじ開けられようとした、その時・・・

バン!!と、急に開き、ダムの放水のような水の噴出。

時々、何か重いものが落ちたような水しぶきの音もしていた。

「沈没してしまう・・・」

そう判断したアル・カリの科学調査班主任は乗組員に緊急避難指示を出し、

自らは調査班メンバーと共に待機していたヘリに乗り込み、難を逃れた。



秀太は〝VRの部屋〟に進んで入ってゆく。

体の沈みこむ感覚が治まると、目の前に8文字のひらがな。


      ・ちょっと まってて・


しばらくすると、船の格納庫の略図とカラスの怪物が仰向けになっている簡略化

されたCG画像が映し出された。

横一杯に波線。その下全部のエリアが透明なブルー一色で被われようとしている。

その図解映像で、おおよその状況は理解できた秀太だったが、気がかりな事が。

「ここ、どこなんだい?」      すると・・・


      ・てろりすと の ふね の なか・ 


 「なんてこった・・・」

また、映像が変わった。  

これも簡略化されたCGのようだが、秀太には見覚えがあった。

どう見ても、ナックルボールが触手を出している形にしか見えない。

そこへ、ひらがな7文字が被さる。


        ・にがしてあげて・


「・・・・・・」

真っ暗の中に、所々消えかけの線香花火のような光の点の数々。

目の前の映像は、そこから暗視映像に切り替わった。

発せられた弱々しい光を増幅させる映像のため、その光源はそこそこ眩しく映る。

だが、それは紛れも無くナックルボールの触手の先から発せられた光と分かった。

格納庫内の浸水。その原因であろう箇所も確認できたが・・・

外からか内側からかは不明だが、船底近くの横に開けられた数箇所の穴。

だが、その口径では小さすぎて、ナックルボールは通り抜けられないようだった。

上の方で削岩機らしい爆音に変わると・・・ハッチを覆い隠すように張り付いていたナックルボールは一斉にその場を離れた。   そして・・・

バン!!と、こじ開けられたハッチ。

海水諸とも、その付近にいたナックルボールを吸い込んでいったのだった。


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