第14話 強制的に再生される記憶

紙パック飲料の「いちごミルク」を飲み干して、一息付いている秀太。

その視線の先に、か細く光る緑色の小さな点。

( 出口・・・? )

いつの間にか開いていた、穴のような出入り口(?)。

だが、その先も暗黒。 そんな感じに見えた。

( とにかく、こんな所から出ないと。 )

犬小屋型PC端末の足置き場から、自分の足を引っこ抜くのに苦労した

秀太だったが、まずは・・・

せっかく開いてくれている出入り口(?)。

そこに入ってみようと、心に決めたようだった。

やれやれと思いつつ、再び匍匐前進の体勢を取ろうとした時・・・


『 秀くんはね、バチが当たったんだよ。 あぶない事が大好きなのは、

自分が良くても周りに迷惑! 』


『 いくらメールで話ができるからって、手話の授業はサボっちゃダメ! 』


『 イングリッド先生の授業、すごく楽しいよ!いっしょに受けようねっ!』


( 何でこんな事・・・ 今、思い出すんだ? )


退院後、車椅子生活が始まり、特殊学級への編入が決まったものの、ふてくされて

学校をサボっていた頃。

そんな時、大原ルミがしきりに自分の所に送ってきたメール。

その内容だった。       さらに・・・


『 “ 果報は寝て待て ”・・・と言うコトワザ、ありますよネ?  これって、

“ 仁慈を尽くして天命を待つ ” と言うコトワザが前提、と言っていいでしょー。

ただ何もしないで、なんかいい事、おもしろい事が起きないかな・・・

なんて、期待する・・・。 これ、間違いです。

人は、行動を起こしてこそ人間なんです。    行動という動力が働かないと、

人は、運命という坂道を下ってしまいます。

落ちて、行き着く先には・・・

たいてい悪い事が待っていたりするものです。 』


( 変に日本語が流暢なイングリッド先生の授業は、確かに人気だったけど・・・俺からして見れば、ちょっと鼻につくっていうか。  そう言えば・・・  教科書であくびを隠したつもりだったのが、後で見透かされたように注意されたっけ。)


( でも・・・ 何で、こんなに次々と鮮明に思い出してしまうんだ? )


『 好奇心が俺の原動力。 ためらうって事は やっぱ、俺らしくないんだよ。』


『 あのー、メールだけど、何言ってんのー?だよ。    躊躇と慎重って全然違うから。 そこんとこ分からないようじゃ、マダマダだねっ。

でも、秀くんらしいのは認めよー。 』


( ここにいると、気が滅入りそうだ・・・。 )


論破された感じがして凹もうが、ため息をつこうが、暗黒な出口は開いたまま。

意を決し、秀太は潜り込むようにそこへ身を投じた。 




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