ペンの重さをまだ知らない

ユラカモマ

ペンの重さをまだ知らない

 友人の追試のために勉強を見ている間の雑談だった。友人は赤い回答用紙から顔をあげて片手でくるくるとペンを回しながらあの人、ノーベル平和賞に選ばれたって、と顔を歪めた。あぁ、そうだね、私は彼女の表情の理由がなんとなく分かったので適当に相づちを打った。諦めた様子の教師、部屋に散らばる教科書、彼女の努力を否定するだけのペン。彼女の世界は勉強に支配されている。

「あ。」

 くるくると回っていたペンがするりと手から床に滑り落ちる。カチンと床に落ちたペンは先が折れて書けなくなってしまった。

「あーあ、新しいの出さなきゃ。」

 膨らんだ筆箱から新たに現れたペンは先ほど折れたものと同じ形をしていた。

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ペンの重さをまだ知らない ユラカモマ @yura8812

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