第6話:龍の咆哮

気合いの咆哮が共鳴し双子の周囲が震える。


「フゥ…知っとるか?タマナシ共よ。」


先程の怒鳴り声から一転、涼やかな鈴の音と間違う程の声が不思議とその場に響く。


「良く…人の間で言うじゃろ?逆鱗に触れる…と。」


声の主に周囲の全てが視線を向ける。


「薄汚ない龍が!!鱗が何だっ!!直ぐに一枚残らず剥がしてヤるよ!!」


急に雰囲気が変わった龍にミカエルが吼える。


「ははっ飼い犬は肝っ玉が小さいのぉ~。儂等には…逆さの鱗なぞ、無い。じゃが、サカサウロコとはのぉ、怒りのツボじゃよ。」


鈴の音が少しずつ変化する。

彼女の髪が、ゆっくりと、重力に反して昇っていく。

涼やかな眼が吊り上がり、口元は不敵な笑みが浮かぶ。


「貴様等は、触れたぞ?鷲掴みヨ、あの子等ヲ…コロシタナぁ~?サァ…喰らいアオウカぁ!!!!!」


翼の無い、飛べない者だと決めつけていた愚かな天の使い。

彼の左右の目は、視点が少しずつ上下にズレてゆく。


「ミカエルっ!!」


ウリエルが叫んだ。


物言わぬ塊に変えられた【ミカエルだったモノ】が半分ずつに別れて堕ちていく。


「貴様ぁぁぁぁぁ!!!」


ウリエルの怒りに任せた一撃が猛る龍を捉える。


「ぐっ、がぁっ!!」


最高位の天使が全力で放った力を、回避も防御も出来ず吹き飛ぶシャイナ。


「御師匠様!!」

「かあちゃん!!」


双子の叫び声が響く。

怒り狂う天使が更に追撃を仕掛けようと踏み込んだ。

一瞬、彼の視界が歪み、衝撃と共に地面に口付けをする。


「やはり、貴様達があの村人達を殺したな?」


天使の一人ラファエルが、地面に這いつくばったウリエルに蔑んだ瞳を向け吐き捨てる。


「龍よ、感謝する。討つべき仇が見つかった。」


口元の血を拭いながら体勢を整えるシャイナ。

その隣に自らの護るべき、慈しむべき者を奪われた復讐の天使が並ぶ。


「貴様なんぞの感謝等要らんわいっ!!感謝は!!形で示せっ!!酒じゃあああああ!!」


【白髪の龍】と【堕ちた天使】、そして置いてきぼりの双子が、無数の敵を前に笑う。

仕事は大体片付いた。


「主よ、時は稼ぐ。クソッタレの主神に終わりをくれてやれっ!!」


【白髪の龍】が叫んだ。


届くはずの無い叫びを最期に、無数の敵が龍達を呑み込んだ。

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