第110話「神々との闘い編」

 昭和四十四年、日本。

 石森章太郎は神とは何かについて考えていた。

 石森章太郎は前に書いた最終回(一般人の想定する地下帝国ヨミ編の最終回「地上ここより永遠とわに」を指す言葉。ここで終わっていたら良かったのにと思うファンは多い)よりもずっと強い敵を登場させて漫画を完結させたいと考えていたが、人間の悪意ブラックゴーストさえも超える最強の敵となればそれは「神」以外にありえなかった。

 神とは何か。文明とは。生命とは。歴史とは――そうした作者の苦悩が現れたのか、作品世界は徐々に難解で哲学的な色彩を帯びていき、石森章太郎は旧来のファンからの激しい抗議を受ける。

 だが、いきなりあの日にトキワ荘の上空に現れた謎のUFOが頭に蘇って、とにかくすごいなにかに取り憑かれたような顔で「神々との闘い編」の最終回に大量のUFOを出現させた。

 サイボーグ009は永遠に完結できなくなった。


 ○石ノ森章太郎


 日本を代表する漫画家。昭和三十年にトキワ荘で結成された新漫画党のメンバーの一人。ヒーローを描いた漫画作品で知られ、「仮面ライダー」「人造人間キカイダー」「マンガ日本経済入門」「マンガ日本の歴史」など数々の名作を残した。

 ライフワークであった「サイボーグ009」はついに完結することなくこの世を去り、のちに膨大な構想ノートを元に実の息子によって完結編「GOD'S WAR」が書かれた。

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