第93話「ほぼ史実」
観応二年(正平六年)、七月。
ブラコンを拗らせた足利直義が現れた。
直義は高師直(一般人が想定する自分の肖像画を足利尊氏と間違えられて教科書に載せられた人物を指す言葉。なにかと他人扱いされることの多い奴である)よりもずっと戦争に強かったため、第一次観応の擾乱において尊氏・師直軍を見事打ち破り、さらに和平条約を破って師直を謀殺、亡命先のはずの南朝にはつれない態度のままで愛しき兄上が待つ幕府に無事復帰した。だが弟のあまりのヤンデレぶりにドン引きした尊氏は南朝に寝返った佐々木道誉を攻撃すると見せかけて直義に攻め込み、今度は北陸に逃れた直義と尊氏による第二次観応の擾乱が始まった。戦乱の中で尊氏は徐々に直義派の武将を次々に自陣に引き込み、直義軍を弱体化させたが、直義との戦乱は長引く一方だった。
だがいきなり尊氏は去年の和平講話で南朝側から出された条件をすべて丸呑みにすると、とにかくすごい従順な態度をとって今度は尊氏の方が南朝に降伏をした。
兄弟揃って節操のないこと甚だしかった。
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