第79話「そして彼は王となった」

平成三十一年、高校の歴史の授業中。

授業に集中せず退屈そうに鼻をほじる宮本武蔵女子高生が現れた。

宮本武蔵女子高生は歴史教師(独特の催眠効果がある声質の教師を指す言葉。樽古たるふるという名字であることからタルコフスキーとあだ名される)よりもずっと江戸時代の歴史に詳しかったが、自分の死後の歴史には多少興味があった。教科書の先のページによると昭和二〇年に「敵」に敗北した日本は「敵」の総司令官の「王」によって統治されているが、戦後一般人の前にその「王」が姿を見せたことは一度もないらしい。「王」は今もこの国の中枢にいるのかは誰も知らず「敵」の軍事基地はこの国の至る所に存在するが、誰も兵士を見たことさえない。

だがいきなり歴史教師が宮本伊織の名前を指し、とにかくすごい眠くなる声で教科書の次のページを読んでみろと言った。

隣に座っていた佐々木燕がページを教えてくれたので宮本武蔵女子高生は難を逃れた。

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