第72話「末法の世からはるばると」

昭和四十五年正月、勉強部屋の机の引き出しの中。

何をやっても冴えない眼鏡の少年の元に平安時代末期から護摩ごまえもんが現れた。

護摩えもんはその正体である文覚上人(一般人が想定する源頼朝公に父親・源実朝の遺骨を見せて平家への挙兵を促した人物を指す言葉。「文覚上人。この髑髏されこうべだが、父上のものにしては些か小さくないか?」「へい、それはお父上の幼少のみぎりの髑髏でして」)よりずっと猫型ロボットになりすました姿だったが、平安時代に不思議な護摩祈祷ひみつどうぐを使うことで頼朝公の政敵を次々に倒してきた実績をもっていた。何をやっても冴えない眼鏡の少年はちょうどその日ガキ大将にいじめられたばかりであり、少年は護摩えもんに是非仕返しをしてくれと頼み込んだ。

したがって護摩えもんはいきなり三角の護摩壇を取り出して、とにかくすごい調伏法で少年をいじめたガキ大将を呪殺した。

嬉しくない。これからずぅっと護摩えもんと一緒に暮らさないっ!

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