第68話「アンタの奥さん、いいゴリラじゃん」

人類史の果て、時空管理局の捕虜独房の中。

檻の中で愛する妻・ゴリーナの写真をじっと見つめるゴリハルト一二三世が現れた。

柳生十兵衛はゴリラ族(一般人が想定する気高く優しい万物の霊長を指す言葉。ゴリラ族のメスには美ゴリラが多い)よりもずっと人間の女性の方が可愛いと思っていたが、親友のゴリハルトが並行宇宙に残された妻子をいかに愛しているかは痛いほど知っていた。十兵衛は看守から渡された煙草に火をつけ、ゴリハルトと初めて会った日のことを思い出す。あの日自分を檻から救い出してくれたゴリハルトが、今は自分と一緒に檻の中に閉じ込められているとは、なんとも皮肉な巡り合わせだった

こんな時、またあの長いレールガンをもった女子高生がやってきて、とにかくすごい攻撃で自分たちを救い出してくれないものだろうかと、十兵衛は戯れに考える。

だが気紛れな神は姿を見せず、ただ煙草の紫煙だけが独房の中を充満していった。

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