第13話「老人は過去しか持たない」


平成三十一年、東京。

孤独な老人がティッシュを受け取りに現れた。

老人は若者のサンプリングスタッフ(ティッシュ配りのスタッフを指す言葉。一見すると楽な仕事に見えるが何時間も立ちっぱなしで喉が枯れるまで世間の無関心に晒され続ける地獄の苦行。東京のティッシュ配りは非常に縄張り意識が強く少しでも他店に近づけば邪魔をしたと因縁をつけられる。作者の実体験ではない)に新商品について訊ねたが、老人の話は次第に若い頃の話を語るようになっていった。老人は友人がおらず話し相手がいないため、こうして毎日長話を続けるのだが、むろん若者の業務内容には老人の昔話を聞くことなど含まれておらず、いい迷惑でしかなかった。

だがいきなり長いレールガンを持った女子高生がやってきて、とにかくすごい攻撃で老人の人生から一切の過去を歴史改変した。

過去しか持たない老人は、それを失えば死ぬしかなかった。

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