二人の距離

杏璃

第1話 二人の時間

 「疲れ様でした!また、お願いします!」

 「おう!夢希斗ゆきと、今日は良かったよ!始めてとは思えなかった!」

 「本当ですか?あーざいます!でも、俊哉さんが引っ張ってくれたから」

 「そーか?」

 「そーっすよ!」

 「まぁ、夢希斗がかんばってくれたからな!俺も頑張ったて感じだわ!俺、次もあるからもー行くわ。お疲れさん!」

 「は、はい!お疲れ様でした。次も頑張って下さい!」

 「お~う!今度飲みに行こうな!」

 「はい!」

 

 俺、今村夢希斗いまむらゆきとの職業は声優だ。声優になってそれなりになるが最近になってやっと、名前がある役を出来るようになった。最初の頃はオーディションを受けても受けても受からない日々に挫折しそうになったが今考えればその時に辞めなくて良かったと思う。

 尊敬できる先輩や仕事を共に頑張れる仲間に出会えた。

 それに、今もマイク前に立つと緊張はするがそれが楽しくて仕方ない。

 

 

 「ゆーめ?」

 「おー!なり!」

 

 こいつは天瀬成翔あまがせなりと。現場が一回一緒になったときにこいつからメシに誘われてたのが仲良くなったきっかけてやつだ。

 こいつが俺のことを「ゆめ」と呼ぶのは・・・

 

 「はじめまして!きみさー名前何て言うの?」

 

 うゎ~、あ、天瀬成翔だ・・・。確か、デビュー俺と同じくらいだよなぁー?なのに、めっちゃ売れっ子。な、なんか同期なのに話すの緊張する。


 「えっとー、はじめまして!今村ゆきとっていいます。」

 「ゆきとくん~。」

 「は、はい?」

 「漢字はどう書くの?」

 「えっとー、『夢』に希望の『希』そして、『斗』で、夢希斗です!」

 「じゃー、僕は『夢』って呼ぶね?いいでしょ!」

 「う、は、はい・・・」

 「あっ、僕の自己紹介がまだだったね!僕の名前はあま・・・」

 「天瀬成翔さんですよね?」

 「知ってくれてるの~?」

 「もちろんですよ!デビュー僕と同じなのに主役やったりと売れっ子ですもん!」

 「えっ!?まじ!?デビュー僕とおなじなの?」

 「後輩かと思ってた。敬語使ってるし・・・歳は?」

 

 気付いてるかと思ってた・・・

 

 「25です!」

 「歳も同じだ。ちょ、今日飲みに行かない?」

 

 な、何言われるの?めっちゃ落ち込んでるし、めっちゃ怖い・・・でも断れる雰囲気でもない。こ、ここは

 

 「いいですよ・・・」

 「やったー!じゃー、決まりで!あと少しだからがんばろー!」

 

 切り替えはっや!

 

 「は、はい」

 

 

 

 って感じで夢と呼ばれるようになった

 

 

 「夢、これからなんかある?」

 「なんもねぇーよ。今日はこれで終わり。」

 「まじか!?じゃー、メシいかねぇ?」

 「いいけど、お前次は?」

 「今日はもー終わった!」

 「はぇーじゃん!」

 「おう!」

 「じゃー、行くか!いつものところでいい?」

 

 俺たちは時間が合えばお互いの家に行き来したり食べに行ったりと一緒にいる時間が多い。

 

 「ご注文お伺いいたします」

 「えっとー、とりあえず生それと」

 「夢、なんか食う?」

 「来たの食うからなりが食いたいの頼めよ」

 「りょーかい!じゃー、これとこれください。」

 「以上でよろしいでしょうか?」

 「はい!以上で!」

 

 俺たちがよく来る店は完全個室になっていて落ち着いて食事が出来るので俺もなりも気に入っている。

 

 「なり?どーした。元気ないけど」

 「今日、先輩に怒られちゃって・・・」

 「そっかー、でもお前が叱られるなんて珍しいな」

 「そーか?よく叱られるよ!『うるさい』って。だけど、切り替えすぐ出来るからさ~、でも、今日はちょっとな」

 「あ?なんだよ」

 「僕、好きな人が出来たって言ってたじゃん」

 「おぉ」

 「そいつ、男で・・・先輩だったの。わりぃー、今まで言わなくて」

 

 それはいいけどここであっさりゲイだって聞いてしまってどう返せばいいんだ?

 

 「別にそれくらいいいよ!それで?」

 「あぁ、それで、今日4時にはオフになる予定だったから」

 「うん」

 「その先輩メシ誘ったのそしたら・・・」

 

 なりが泣き出してしまった。

 えっ・・・なんでこいつ泣いてんの?

 どーしょう。

 

 「お、おい!なり!泣くなよ。辛いなら無理して話さなくてもいいから?なぁ?」

 「あぁ、夢。僕どーしたら良かったの?」

 

 俺はなりを見ていると俺まで悲しくなってきた。俺はそっと席を立ちなりの向のイスから隣にイスに座りそっと抱き締めた。

 別に好きとかそういう感情は別にない。だけど・・・。

 

 「夢・・・」

 「お前そんな辛かったのかよ・・・」

 「フラれることはなれてるから、そこまででもなかった。でも・・・」

 「でも?なんだよ」

 「ゲイがキモいってさ。」

 「えっ?誰だよそれ言ったの?」

 「でも、それはまだ耐えれた。よく言われるから。」

 「は?他なんか言われたの?」

 「僕がもう、夢とヤったんだろだって。」

 「は?何でだよ!」

 「僕、後輩と飲んだとき珍しくめっちゃ酔っちゃってさ、先輩のこと話しちゃったみたいで・・・その子が僕のことキモいと思ったらしくてその先輩にあることないことチクってさー」

 「は?マジで後輩ってだれ?俺が殺ってやるよ!ついでにその先輩もさ」

 「いいよ・・・別に・・・」

 「で、でも、」

 「ありがとう、夢」

 「う、うん。」

 「でも、夢、その先輩にあったらなんか言われるかも・・・まじごめん!」

 「いいよ、そんなこと気にすんな!」

 「あぁ。ごめん!重い話して!そんなことより飲もうぜ!明日はオフだし!ゆめもオフでしょ」

 「まぁ、オフだけどさ・・・」

 「なんだよー!なんか予定あんのかよ!」

 「ねぇーよ、だって、オフの日に予定入れるとお前怒るだろ!」

 

 そー、こいつは俺がオフの日を把握しているのだ。それに、こいつは売れているから数少ない休みを俺との時間にあてている。バカなのだ。

 

 「てゆか、なんでお前は俺の休み知ってんだよ!事務所も違うのに!」

 「あぁ、社長が俊也さんで良かったー!持つべき社長は俊也さんだねぇー」

 「は、は、犯人は俊也さん・・・それに、うちの社長かよ!」

 「そーだよー!」

 

 俊也さん社長パワーをなりなんかに使うんじゃねぇよ!

 

 俊也さんは自分で事務所を持っていてそこに所属しているのがなりだ。

 

 

 「よし!飲む!飲んでこんなこと忘れてやる!」

 「夢ちゃんはあんまり飲めないでしょが!あぁ、ビールイッキ飲みしちゃって」

 「なり!注文!」

 「はい、はい!夢希斗様のおおせのままに」

 「注文お願い致します。生ひとつ。」

 

 なりが言われたことにもイライラするし、オフの日をなりに教えていた事務所にも腹が立つ!

 

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