223話 決着の時
超太古級重力属性魔法<超重力落穴/ブラックホール>は、相当量のMPを使うので、例え、超古代聖物・廻で使えるようになったからと言って、アキトはまだレベル七十五なので、考えて使わなければ自分を追い込む事になってしまうものだった。
徐々にフィールドは崩壊を初め、超古代聖物・廻も時間が来て元の姿に戻る。次使う場合は一日時間を空けないといけない。
その瞬間ーー
蓄積された疲労が一斉にアキトへ押し寄せる。
OOPARTSオンラインでは、レベルが百よりも低く超古代聖物・廻状態中に超太古級属性を使用すると使用後に様々なペナルティとしてデバフ効果がつく。本来、レベル百になるか、オーパーツアイテムの効果でしか、超太古級属性は使用出来ないのでそれをレベル五十から使えるのでこれでも足りないくらいだ。
だが、レベル百になれば時間制限や空白時間、デバフペナルティなど様々なものがかき消される。
「大丈夫ですかマスター!」
「ああ……大丈夫っ!」
アキトは、今すぐにでも倒れたい気持ちでいっぱいだったが、フィールドはすでに崩壊が始まっている。
今でも、ハイドゲンの悲鳴は聞こえるがそれも徐々に遠のいていく。
同時に、ハイドゲンの周囲から徐々に広がるようにフィールドを飲み込んでいき、超太古級重力属性魔法<超重力落穴/ブラックホール>が大きくなっていく。
「早く逃げないと……」
足を動かそうとするがアキトの疲労度は自分が思っているよりもさらにひどく、体は全く動こうとしない。
このままでは自分の魔法のダメージを受けて死んでしまう。
例え、自分の魔法で属性効果は軽減されるからと言っても、超太古級属性なので今の状態なら簡単に死んでしまう。
「私がお連れします」
「おいっ!!ちょっと待てっ!!」
そう言ってミシロは、アキトを無理やり持ち上げようとするが、それは流石に恥ずかしすぎるのでアキトも何とか動く手を使って抵抗するが軽々といなされ、持ち上げられる。
「待てっ!一つ提案があるっ!!」
「何でしょう!マスター」
「俺がこの世界へ来てから新しくあの女神にもらった……いや、どうでもいいか。一つ新しいエクストラパッシブスキルというものがあってだな。それを使えばいける」
「ほうっ!それは興味深いですねっ!」
「ああ、『和衷協同』って言うんだが、ミシロが追加されてレベルが二に上がった。そのお陰で、このフィールドから外に出られる」
和衷協同……ミシロが新しく入ったことで、レベルが二に上がり、一つ能力が追加された。それは、和衷協同に入っている人の間であればどこへでもワープすることが出来るというものだった。
この場合、アキトとミシロはこのフィールドにいるが、外へ出たはずのシロネの元へワープすることができ、この状況を解決される。
「なるほどっ!これが和衷協同、私もマスターと意識的に話が出来て何か変だなと思っていたんですよ。あと……このシロネという方誰でしょうか?」
前者はミシロからしたら新しい情報としか認識せず、特に何かあるわけではないが、後者のシロネという人物の名前にはとてつもない圧をミシロはアキトへかける。
誰なんだと、脅威になるのか、最悪の場合殺すかとミシロの中では様々な思いがぐるぐると螺旋階段のように巡るが答えは出なかった。その考えている間のミシロの表情はとてつもなく怖く、冗談が一切通じないような感じだった。
それが、アキトからしたら圧にしかならなかった。
「今から、飛ぶんだ実際自分の目でみろ。あと、殺すのは禁止……これからの仲間だ。あと他の人も殺すの禁止だからな」
「わ、分かりました……マスター」
ミシロが手を出してから言っては基本手遅れになるので、アキトは先に釘を刺しておく。
「あぁあがががががああぁあああああああ!!!!!!!!!!!!」
突如、遠くの方からハイドゲンの悲鳴がこのフィールド全体に届くほどの大きさで響き渡るが、それがハイドゲン最後の断末魔だった。
黒い影が一瞬見えたが、その後ろからはとてつもない量の真っ黒な腕がハイドゲンを飲み込み、さらにその奥には果てしない黒が広がっていた。
「行くか……」
「はい、マスター」
シロネが何処にいるか分からないので、一応警戒しながらアキトは和衷協同の新たな能力を発動する。
その瞬間、アキトとミシロは真っ白に光り輝き、光に全身を包まれると、そのままこのフィールドから脱出する。
**
それと同時刻ーー
ダンジョンの最深部、ムルド達がいる場所とは違う部屋ではクロムとバーンは戦っていた。
クロムとバーンの二人は外れの道を引いており一つの大きな部屋に閉じ込められており、どうやっても脱出出来ず、さらに、お互い暇だったのでせっかくなら戦おうとなったのだ。
「全く面白い能力だなクロムよっ!!!」
「お前もバカかてぇなっ!!」
互いに全力を出し切りながら戦っており、もう二時間以上も果てしない攻防を繰り返し、いつ倒れてもおかしくない状況下にあった。
力のバーンとテクニックのクロム、互いの実力は均衡しており、さらにどちらも戦闘好きと言うことも合間ってとてつもなく長い時間になっている。
そのせいで二人のいる部屋は壁はとてつもなく綺麗なのに中はもう原型がなかった。
クロムが目にも留まらぬ速さでバーンの元へ走り出すと、バーンは捉えられないクロムを点でではなく線で、さらには面を覆うほどの大きな攻撃で行動の予測を行なっていた。
バーンは、地面に思いっきり腕を突っ込むと、それだけでバーンを中心に放射状に広がり山を作るようにうねり、クロムが近づけなくなる。
一瞬、クロムの動きが止まった所へバーンは地面に手を突っ込んだ時に掴んだ石をほぼ無動作で弾くように飛ばす。
たった、それだけでも熱を持ち、弾丸のようになるので一発で致命傷レベルのものだった。
それを、クロムは暗黒属性で消しとばし、再びバーンへ接近を試みる。
そこへ、バーンも合わせて飛び込み拳を振りかざす。
「「はぁああああああああっ!!!!!!!」」
クロムも最後の全力を出し切り、バーンの拳へ自分の拳を合わせるーー
それだけでとてつもない衝撃が部屋を伝い、行き場の無くした衝撃が二人を襲い、遂に意識を吹き飛ばす。
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