165話 なかなかやりおる
ルイン魔導学園転送地 第二層南ーー
「たっく!もう一層目崩れたの!!」
「ルナ、また集中力が切れ始めてますわよ!」
ルナは次から次へと追撃が来て朝から一回も休めていないのまた集中が切れて来た。
セアに言われ、気づき、再び集中力を入れなおす。
昨日途中から合流した、セナとトレインを再び追加し四人で対応してるからまだ良いが、四人でもこんだけきついとなると二人と考えた時ぞっとする。
「ガッハッハ!いいねぇ!素晴らしい!!」
戦闘馬鹿のトレインが最前線で猪突猛進、まるでバルトのような戦い方をするので、ヘイトがトレインに行ってやりやすさはあるが、このままだとトレインの体力が問題になってくる。
「はぁああ!!」
「お姉ちゃん後ろ」
「分かってるって!」
「ーーっ!!」
ルナは体を浮かし、後ろから迫っていた攻撃を剣でスライドさせ、攻撃を往なし、相手を蹴り飛ばす。
ここまで残っている人達は流石に硬く、そう簡単には落ちてくれない。
その蹴り飛ばした相手もうまくクッションを使い、ルナの攻撃を緩和し、一旦下がり体勢を立て直す。
そして、間髪入れずに入れ替わるように次の敵が魔法やスキルを併用し、攻撃を再開する。
さっきからこのローテーションにうんざりしていて、ルナのイライラゲージやら集中力の無さが再び現れ始めている。
周りは恐らく、十人以上の生徒達に囲まれていて、これでも五人倒していてこの数だ。
「カルイン学園も厄介の多いわね、昨日のあいつといい」
「はぁあ!!」
「なめるな!!」
ルナの腕と太もも、肩辺りを狙った三本の矢が飛んで来る。
それを剣振り払った次の瞬間には魔法やスキルが飛んで来るので最小限の動きで小刻みにかわし、上から拳を振りかざし、一人の男子生徒が殴りかかってくる。
ルナは直ぐに剣を地面に刺し、右手のひらを相手の拳に合わせ、そのまま下に押し込み、左手をそいつの体に添え肩を抜いて後ろに受け流す。
「ガッハッハ!ルナ!もう一人そっち行ったぞ!!」
「分かってる!」
「全くルイン学園のしかも一年の四人程度に苦戦しやがって情けない……」
「あなたもその情けない一人に入れてあげるわよ」
「笑止」
その男は手を叩き、攻撃をしていた他の生徒達を一旦己の元へ集合させる。
「俺は、カルイン学園三年白聖クラス、カッパ・ルーお前ら四人は俺一人で相手させてもらう」
カッパと名乗る男は他の同じ学園のチームメイトを他の場所に行かせ、一人になる。
「いいのかしら?さっきまでその人数で私達と対等ですのに一人になんかなってしまって……」
「対等ふっ!……はははは!!!」
「何がおかしいのかしら?」
「いや……気にしないでくれ何でもない、思い出し笑いだ」
セアは固有属性白銀騎士を発現させる。
「そう……なら!」
「ガッハッハ!!セア!いつまで喋ってる、我慢の限界だぁああ!!!」
トレインは待ちきれずにカッパの方へ突進する。
突進といってもとんでもない速度で、しかも威力は女性陣二人のものとは桁違い。
「流石、四人の中で二番目に警戒するべき人だ……面白い」
「なっ!!」
突進したトレインはカッパの前で静止する。
その速度からは考えられないほどの緩急をつけその止まった際に逃げようとした力を拳に流し、トレインはルナ達の位置からでも風圧を感じるほどの拳を振り抜く。
だが、その威力の拳をカッパは片手の平で軽々と止める。
一瞬、時間が停止したような感じがするほどに綺麗な静止の仕方で、カッパの手には水の塊を付与していて、その水の塊がカッパへの衝撃全てを喰っているようだった。
「ガッハッハ!!やるなぁあ!!」
「だが、残念だ……」
カッパは一瞬で、トレインとの間合いをゼロにしトレインが反応する遥か前に、腹に三つの水の塊を押し付ける。
「渦潮属性魔法<三点式渦/ウィルプール>」
「っぐ!!」
その水の塊は一つずつ大きさが違い、三つの中の一番大きな水の塊と一番小さな塊の二つが最後の一つの水の塊を変化させ、巨大な渦を作る。
トレインはそのまま後方へ吹き飛び、私たちの元へ戻ってくる……
「大丈夫?トレイン」
「ガッハッハ!こりゃ強いぞ!!」
ユニフォームの腹の部分が破け、ナイフで切り刻まれたような傷が入っており、血だらけになっていた。
トレインはポーションも使わず、軽々と立ち上がる。
「四人一斉に来ないと、難しいと思うが」
「トレイン、わたくしたちも参戦しますわ」
カッパに言われずとも今の攻撃で察したのか、セアはトレインの腹にポーションを振りかける。
「ガッハッハ!俺達が四人こいつに釘付けにされては他がもたなくなる。お前達三人は他へ行け」
「なぜわたくしたちなのですか!」
少し焦るようにセアは言うがそれには私も同感だ。
「トレイン、私もそれは認められない、四人で早く倒した方がいいと思う」
「ガッハッハ!俺は一人の方がやりやすい。お前らも巻き込んじまうしな」
確かに、トレインの超攻撃的な固有属性を考えると私達は引いた方がいいのかもしれないけど……
「馬鹿言わないで欲しいですわ!!」
「ガッハッハ!イテェぞ」
セアは思いっきりトレインの頭を引っ叩く。
あの腹の傷には全く気づいていなかった癖にセアの攻撃には弱いらしい。
「わたくし達に気を使うくらいだったらトレイン一人で、他に行きなさい」
「ガッハッハ!分かった分かった!!」
トレインはセアの背中を強く二度三度叩く。
「痛いじゃない!!」
「ルナ、あなたも!!」
ルナは叩いてはいないが、セアの頭をぽんぽん撫でていた。
「それで、四人ここでやられるか、後でやられるかどうされるのですか?」
「ガッハッハ!四人でやるらしいぞ!」
「そうですね……そうじゃないと面白くない!!」
カッパの方も肩まである長い髪を水の紐で結び、整った顔が露わになる。
清々しい青い瞳でこちらを強い眼力で見る。
「ガッハッハ!行くぞ!!」
トレインは一歩踏み出すと、その地面が沈み亀裂が入る。その一歩目を力一杯蹴り飛ばし、カッパの元へ一瞬でたどり着く。
セアとルナもトレインほどの速度は出ないが後を追うーー
「ほら、行くよセナ」
ルナは振り返り、眠そうにしているセナの背中を押す。
「ぐぇはっ!!」
「え?」
振り返っていた刹那ーー
いきなりトレインが再びこちらへ吹っ飛んで来て近くの木に体をぶつけ落下する。
「トレイン!」
ルナは、カッパの方へ視線を向けるが、セアも視線をトレインの方に向けており、カッパは特に何もすることなく立っているしで一体何があったのか混乱する。
「ガッハッハ!まさか、持続型とはな!」
「あなたね……」
トレインは笑っているが、不意打ちで二回もダメージを受けているので流石のトレインも相当来ているものがあるに違いない。
よく見ると、トレインの肩にはさっき腹に受けたような傷があり、それを見てルナは何となく察する。
「トレインと言ったね……君はもう僕に攻撃することは不可能だ」
「まさか……」
「もう君達全員感づいているから言うが、俺の攻撃を直接受けると俺に攻撃は出来ない。俺の渦は体に張り付き、俺に危害を加えようとした時に再度同じ魔法が発動する」
「なるほどね、そしてその防御不可能の渦の攻撃をくらったらまた渦が張り付く」
「そう!それの繰り返しだ!」
攻撃したらという制限が付いているからいいがこれがカッパの意思次第だったらと思うと、相当今の状況が相当厳しいことに気づく。
トレインは四人の中で一番の攻撃役だ、そのトレインが封じ込められるとなると、例え三人でも時間がかかるし、終わりが見えなくなる。
「だから、選択させてあげたんですよ」
「わたくしが言ったことの方がまさか合ってるとは……ですわね」
「ガッハッハ!俺はサポートしか出来ねえなこれじゃ」
本当にその通りだ、トレインにはサポートに回ってもらうしか方法がない。
「セア、セナ。三人で行くわよ」
「でも、あの人の固有属性を受けたらどんどん攻撃できる人が減りますわよ」
「でもやるしかないでしょこうなった以上!」
セア、ルナ、セナの三人は横に並ぶ。
「さぁ、次は誰かな……少しは楽しませろよお前ら!!」
カッパは初めて自分から攻撃を仕掛ける。
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