133話 開会式と訪問者
開会式が始まった……
学園ごとに綺麗に整列され、ちょうど一番前に帝国国王のバルゼイン・クロ二クスが開会宣言を行っているところだ。
見た目では六十代くらいで、年老いているのに全く隙を見せない立ち振る舞い、周りに最高レベルの兵士がいるのにその存在が小さく見えるような感覚に生徒は皆陥っていた。
さっきまで大歓声だったのに皆静まり返り、今では唾を飲んだ音すらも響くほど静まり返っている。
アキトは目線を国王からレイ・クラウド学園の列に移す。
ちょうど開会式が始まる直前に並び、皆からは好奇な眼差しで見られていたが、その並んでいる人数に誰もが苛立ちをあらわにしていた。
学園内の一年から三年までの黒聖クラスから白聖クラスまで最大人数フル活用して約百二十人近くいるのに対し、レイ・クラウド学園は、全員で十人という人数の少なさ。
ここまでくると舐めていると捉えられてもおかしくは無い。
アキトは、特に他の学園にあまり興味がないのでそれからはぼーっと空を見上げながら時間が過ぎるのを待っていた。
そして、バルゼインの話が終わりに差し掛かり、最後の言葉を口にし話を終了し、拍手喝采を受ける。
その間、バルゼインはじっっと生徒の方を凝視し、拍手がなりやむまで動こうとしない。
本来、拍手を受けながら去っていくものなのだが……
拍手が終え再び静寂が訪れると、国王は一言添えるーー
「さっきは皆頑張れと言ったが訂正させてほしい……今回も前年通りレイ・クラウド学園が勝つような事がないよう死ぬ気でやりあえよ。諸君……私を楽しませてみろ」
そうはっきりと皆が聞こえるように言うと、バルゼイン笑いながらゆっくりと壇上をおりていく。
この一言で、皆の意識がレイ・クラウド学園への怒りからヘイトが少しずれる。そによってこれまであった皆の怒りが誘導されたのだ。
アキトは色々考え事をしていると後ろにいるバルトから背中をツンツン指先で刺される。
ちょうど、開会式が終わり、控え室に退場するときだったので変な声が出てしまったが何とかバレずに済んだ。
「なんだよバルト」
「さっきよー国王?が言ってたことってどう言うことなんだ?」
「あの言葉はバカは対象外だから大丈夫よ」
バルトの後ろからユイがしっかりサポートを入れてくれる。
本当に答えるのが面倒だったのでかなり助かった。
「俺はバカじゃねぇんだよ!!ユイ!」
再び始まった二人の喧嘩は、控え室に帰るまでずっとやり続けていた。
**
「ほんじゃまあ、一年黒聖クラスは全員揃ったなー」
だるそうにしているウタゲにアキト達の人数を数えたシェルが耳元で教えていた。
この控え室には、十二人の出場選手がおり、あんまりクラスと変わらないので始まる前の実感がわかない。
緊張している者や、平然としている者、緊張を装う者、平然を保とうとする者など多種多様だった。
「そんじゃ、これから動き確認するぞー」
ウタゲはホワイトボードにこれからの動き方を書いていく。
最初の一行目に、今から一時間後までに集まる場所が書いてある。
「えーっと、まずこの部屋を出ると地下に続く通路がある。その入り口の上にルイン学園という札が貼られてるからそれが目印だ。その入り口を抜けるとまた待機部屋が用意されてるからそこにおってくれ」
またすらすらと文字を走らせ、二行目を書き出す。
試合開始の手順ーー
「んで、集まった部屋から一斉に今帝国が管理するフィールドにワープするようになっている。そうなるのが十五分前だ」
「で、後はそっから適当にチーム分けるなりやり方は知らんが、時間が来たらスタートになる」
「では、選んだアイテムなどはどうなりますの?」
トレイン・トンと一緒にいた、セア・レインが手を上げ質問する。
久しぶりに見たが、最初見た時より丸く(体型ではない)なったなーとアキトは思う。今では殆ど絡んでこなくなり、あのツンケンしたお嬢様から可愛いお嬢様に印象が変わっていた。
「ああ、その戦闘を行うフィールドには自分のアイテムボックスを持ち込めないように設定してあるからな。事前に決めたアイテムが入っているようになっているから安心しろ」
「分かりましたわ、ありがとうございます」
「俺も質問!!」
「却下!では、私達は審判としてフィールドのどこかにいるからまあ……そういうことだ以上!ーーっうぐ!」
すると横から見えない速さでシェルがウタゲに何かをしたのだろうなぜか顔が赤くなっている。
「シェルめ……まあ、頑張れよ」
若干涙目になりながらそう言うとそそくさと部屋を出て行ってしまう。
質問をしたバルトは案の定憤慨していて、それをユイとエーフ、エルやトルス達が止めていた。
あんな却下の仕方をされれば誰でも不快感はあるが、バルトはこのクラスの一致でスルーされたのだ。
そう言うやつなのである。
すると、この部屋の扉がノックされる。
皆一斉に扉を見たが、ウタゲ達が戻って来たのならノックなんてしないし誰だろうという疑問だけが交錯し、目線で誰か開けろという訴えをし合っていた。
そして、最終的にアキトが指名されたことによってアキトは、貧乏くじを引いてしまった気分を味わう羽目になってしまった。
ゆっくり扉を開くーー
すると黒い大きな影がアキトにまとわり付く。
「久しぶりねぇんアキトちゃん!!」
「ぐぇっーー!!!」
アキトは危うく窒息しそうになる。
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