21話 仲直り?


ーーおかしい

 アキトは召喚されたスケルトンの所に戻ると、二十体のスケルトンに加え、一体新品のマグリがいた。


 アキトは殻が破壊されたのでてっきり回復するまで待つのかと思いきやもう治っていた、それだけじゃなく図体がさらに一回り大きくなっていた。

 あのダメージをこの短期間で回復したマグリを不思議に思いつつ、アキトはどうやって回復したのか考えていた。


「どれもハズレだ……私は本体ではない、百体の分裂体の一体にすぎん。本体は未だ睡眠中だ」


 マグリの声は女性の声質に変わっていた。


 なるほど、だからこんなにあっさり倒せたのか……

 アキトは自分の中で結論づけるが、嫌な予感がアキトの脳内を通り過ぎる。


「これから百体、どんどん強く、殻は硬く、そして大きくなっていくからな。まぁ、せいぜい頑張れ」


 アキトは一日でマグリの殻を壊せた喜びが消え失せる。


「はぁ……行きますかな」


 アキトはスキルをいつでも発動できるよう準備し、構える。

 十五体のスケルトンは今まで通りだが、追加された五体は人型ではなかった。

 スケルトンワイバーン、竜種のスケルトン五体、今度は上空からの攻撃が矢だけではなくなる。


 集中力をまた一つ削る因子が出てくるが、もうアキトは慣れてしまい逆に少し物足りなさを感じるほどだった。


**


 あれからもう一戦して今は夜ご飯を食べるため焚き火の用意と、ご飯の準備をしていた。

 アキトは、あのハマグリを焼いて食べたい所だが、これは心の奥底にしまっておくことにした。


 シロネが料理、アキトが焚き火の火の管理をしている。

 こう言った淡々とした作業もアキトは好きで、ぼーっと火を見ている。

 さっきまでいたマグリは砂の中に戻って今はいない。


「ご飯出来たのじゃー」


 アキトは火にかけてあった鍋を持ち、シロネの方に向かう。

 簡易的に作った机の上には色々な食べ物、この辺りでしか生えていない’グリューワイ’という楕円形深緑であまり食欲はわかない色をしている。


 アキトが持っている鍋にはリ・ストランテから持ってきてある食材を使ったスープが入っている。砂漠の夜は寒いのでアキトはホルドに感謝しかなかった。

 火を囲いシロネと一緒にご飯を食べる。

 だが、いつもならシロネの方から色々喋りかけてくることが多いのだが今日は黙々とご飯を食べている。


 アキトは何か怒らせるようなことしたかなぁと思いつつご飯をゆったり時間をかけ食べていた。

 すると、先にご飯を食べ終わったシロネがこちらをじっと見つめてくる。

 アキトはそれを見て少したじろぐ。

 照れ隠しのためスープをすすって誤魔化しなんとか平静を保とうとするがアキトは下手くそなのでシロネにはバレていた。


「えーっと……欲しいならあげるけど……」


 アキトはそっとスープを差し出す。

 するとシロネは慌てて訂正する。


「ち、違うのじゃーーそうではないもうお腹いっぱいだから大丈夫じゃ」


 シロネは両手の人差し指を合わせうつむきながらもじもじしていた。


「昨日はすまんかったわしのせいでアキトにあんな怪我を」


 シロネはアキトを二度見しさらにもう一度見て言う。

 意外と気にしていたということに少しほっこりするアキトだったが、別に終わった事だし、落ち度はシロネにもあるとは思うがアキトは基本何でも許す方なので特に何とも思っていなかった。


「まぁ、失敗なんていくらでもあるし、俺も気にして無いから大丈夫だぞ」


 何とか励ましの言葉を自分の頭に入っている辞書から導き出すが、変な間が流れアキトは気まずくなる。


「こほん。ともかくだ、俺は気にしていないし、いい特訓になった、ありがとう……それだけは伝えておく」

「ありがとう………そうじゃなこれからもよろしくお願いしますじゃ!!」


 そう言ってシロネはこれまでにない笑顔を浮かべる。

 ようやく壁を取っ払えてアキトは何か心が軽くなる。


 アキトは友達との壁について空気清浄機のフィルターだと考えている。

 壁が多い=フィルターが分厚いので空気は綺麗になる……それと同じで友達とのつき合いが綺麗だという事になる。個性を殺し人に気に入られようとしされる関係だ、そしてフィルターが少ない場合これは空気は洗浄出来ないからそりゃ汚く、色々なものが見える……だが、アキトはこっちの方が本当の友達に近いと思っている。


 この考えはあくまでアキト一人で思っているだけで、そして今アキトがそのフィルターを介さない相手の二人目が出来たってわけだ。


 過去の事は切り替えて、反省するところは反省し、今後に繋げるという事で、今日は床に就く。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る